池田医院
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして
整形外科 外科 リハビリテーション

松葉杖の使い方を間違えると、手がしびれて動かなくなることがある

テレビ番組や街で松葉杖を使っている人を見ると大抵間違っています。テレビ番組は医療監修がきちんと行われていれば、そういうことも起こりにくいのでしょうけど、初回使用時にきちんと調整、指導していない医療機関が多いのではないかと思います。

よく見られるのが、松葉の丈が長すぎる例です。長いので脇の下を圧迫するように使っているのですが、これだと腋窩を通る神経が麻痺することがありますので、長さを貸与時にしっかり調整することが重要です。丈を合わせてもテレビの影響か、そのまま杖の上部に脇の下に体重を乗せてしまう人が多く、これがまた麻痺の原因となってしまってます。

「松葉杖まひ」、どのくらい起こりうるのか

脇の下で体重を支えるように松葉杖を使うと、腋窩を通る神経(橈骨神経など)が圧迫され、しびれや麻痺(いわゆる「松葉杖まひ」)を起こすことがあります。1950年から2018年までに報告された松葉杖に関連する神経・筋骨格・血管系の合併症をまとめた系統的レビューでは、60件の研究・622症例が対象となり、脇で支えるタイプの松葉杖(腋窩杖)は、脇当てにかかる圧迫による神経障害や血管障害が最も多い合併症であったと報告されています(Manocha RHK, et al. PM&R. 2021;13(12):1407-1420)。橈骨神経は腋窩で皮膚のすぐ下を通っているため、圧迫による神経伝導障害(麻痺)を起こしやすいことが知られています。また、脇当てに過度に体重をかけると、脇の下にかかる力が最大で7倍程度まで増加するとの報告もあり、これが神経だけでなく血管(腋窩動脈)の圧迫にもつながるとされています。

正しいフィッティングの目安として、脇当ての上端と脇の下との間に指2〜3本分、約2.5〜5cmほどの隙間を空けること、グリップの位置は肘を15〜30度程度軽く曲げた状態に合わせることが推奨されています(Merck Manual Professional Edition: How To Fit and Walk With Underarm Crutches)。体重は脇ではなく、この肘を曲げた状態の手のひらとグリップで支えるのが正しい使い方です。

脇は体重を乗せるのでは無く、脇の下と松葉杖の間を少し空けて脇を締めて松葉杖を安定させるようにします。体重は、肘を少し曲げて手で支えるようにしてください。

参考文献一覧を見る(全2件)
  1. Manocha RHK, Kirwan L, Ionescu E, Salter K, Serrato P, Chow J, et al. Injuries Associated with Crutch Use: A Narrative Review. PM&R. 2021;13(12):1407-1420.
  2. Merck Manual Professional Edition. How To Fit and Walk With Underarm Crutches.