「肩こりは日本にしかない」というのは本当か
以前は「肩こりという概念自体、日本以外には無い」と言われることがありましたが、最近の研究ではこれは正確ではないことが分かってきています。日本・アメリカ・シンガポールで肩こり(Katakori)による生活への支障を測る指標の国際比較を行った研究では、アメリカで61.8%、シンガポールで75.1%の対象者が肩こりを経験しており、いずれも日本より高い割合でした(Takasaki H. Sci Rep. 2025;15:12087)。つまり、肩や首がこる・張るという感覚自体は世界共通の現象であり、「肩こり」という言葉や、それを気にかけて表現する文化的な習慣の方が、日本で特に発達している、というのが実情に近いようです。
肩こり様の症状を引き起こす重大な病気
肩こり様の症状を引き起こす重大な病気の1つに「肺尖部腫瘍」があります。有名なのは肺の一番上部の肺尖部にがんが生じて起こるもので、パンコースト腫瘍と呼ばれます。これは進行すると肩こり、痛みを発症し、更には腕神経叢に浸潤して上肢のしびれ、麻痺を引き起こします。
整形外科的な症状として見つかりにくい理由
パンコースト腫瘍は、咳や息切れといった呼吸器症状が乏しいまま、肩や腕の痛みだけが先行して現れることが多く、頚椎症・肩関節周囲炎・胸郭出口症候群といった整形外科的な病気とみなされて、診断が遅れやすいことが繰り返し報告されています。2025年に報告された症例では、71歳の喫煙歴のある男性が頚部痛と右腕の脱力を主訴に受診し、画像検査で肺尖部腫瘍が肋骨・椎骨・腕神経叢まで浸潤していたことが判明しました(Gadikota P, et al. Orthop Rev (Pavia). 2025;17:143289)。この報告でも、呼吸器症状を伴わない頚部・上肢の症状が続く場合、パンコースト腫瘍を鑑別に入れる重要性が強調されています。
肩こりだと侮らない
また肩こりだと思っていると肺炎、気胸、胸膜炎などが起こっていることもあります。頚椎の疾患全般で同様に肩こり症状がでることがあります。従って肩こりだと侮らずしっかりとした診断・治療をお勧めします。