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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

過去ログ 2015.4 2015.5 2015.6
 
平成27年7月1日(水) ばね指

 あっという間に7月に突入です。これから暑い夏がやってきます。夏ばてにならないよう注意しましょう。

 さてばね指ですが、これは指を曲げるときに引っかかるような感じがして曲げると伸びにくくなり、力を入れて伸ばそうとするとあたかもバネがついているが如くパコンと伸びます。これは腱と腱鞘が肥厚して通りにくくなっているために起こります。初期の場合は消炎鎮痛剤やステロイドの注射で改善します。それでも引っかかりが改善しない場合は手術を考慮します。今は鏡視下で行われることが多いです。手術の合併症としては神経障害や血管損傷などがあります。
 
 
 2015/07/02 水泳時頭痛

 痛みに関する翻訳本を読んでいるのですが、なんと「水泳時頭痛」という項目がありました。てっきり泳いだら痛くなるのかと思ったらさにあらず。ゴーグルが眼窩上神経を圧迫して起こる頭痛なのだそうだ。そういや水泳時につけるゴーグルは結構締まって装着しますよね。それが目の上に出る神経を圧迫して痛みを出すとのこと。治療は対症療法でゴーグルを緩めるとか水泳を休むとかすれば治るようです。世の中変わった病気があるものです。
 
 
平成27年7月2日(木) 腱板断裂の手術適応


 保存的に治療しても痛みや可動域が改善しない場合、手術を考慮します。かつて手術適応は50歳までのアクティブな活動をされる人となっていましたが、関節鏡による鏡視下手術が発達して、いまは元気な方の場合、年齢制限は無くなりつつあるようです。施設によっては85歳、93歳の超高齢者でも手術を行っています。高年齢ほどリスクは高くなりがちですが、健康でお元気な方であれば年齢はあまり関係なくなっています。
 
 
平成27年7月4日(土) 胸部痛と自然気胸

 テニスでスマッシュをしたら肩が痛くなったと来院したA君。調べたら自然気胸でした。若くてほっそりした男性は自然気胸を起こしやすいので注意が必要です。気胸でも交通外傷などで起こる緊張性気胸は肺から空気が漏れて元に戻らないので緊急に対応しないと命取りになります。

通常の自然気胸で肺の縮小率もそれほどではなく呼吸状態に問題がなければ自宅安静ということになりますが、当院で発見した場合は、念のため緊急時に対応可能な病院の呼吸器内科を紹介しています。

 
平成27年7月5日(日)
 
平成27年7月6日(月) 擦過傷と擦過創

 昔はすりむいた傷は擦過傷と言ってましたが今は擦過創と言います。「創にきずあり、傷にきずなし」とか。浅いものを擦過傷、深いものを擦過創と区別しますが、医療用語(国際疾病分類第十版 ICD10)としてはいずれも擦過創となり、擦過傷という病名は使えないようになっています。病名はICD10に準拠しておこないますので擦過創も擦過傷もみな擦過創になります。整形疾患では日本整形外科学会による整形 外科用語集に基づいて病名をつけますが、ICD10には収載されていないものも多く、保険請求(電子請求)ではカタカナ病名となっています。

 実際の治療では、擦過創でも擦過傷でも同じです。ただ浅いものは傷跡が残りにくいですし深いものは残ります。
 
 
平成27年7月7日(火) 運動とエネルギー消費

 人間の身体はブドウ糖をエネルギー源として活動しています。ブドウ糖は身体に蓄積されたグリコーゲンを分解して供給されます。グリコーゲンは肝臓に100g(400kcal)と筋肉に300g(1,200kcal)しかなく、これらを使い切ると脂肪や筋肉を分解してブドウ糖を合成するすることになります。激しい運動を長時間行う場合はブドウ糖(炭水化物)を補給する必要があります。

 20代の男性(体重50kg)が時速12キロでマラソンをすると一時間あたりのエネルギー消費は600kcalとなります。エネルギーを補給しないと二時間ほどで枯渇してしまいます。マラソンでは30キロを超えたあたりでハンガーノックを起こすというのはよく聞きます。ちょうど二時間を越えたあたりです。それまでにエネルギーとなる炭水化物を補給しておかないと急に足が止まります。
 
 
平成27年7月8日(水) 骨折の治り方

 骨が折れるとギブスやシーネなどの外固定、または金属プレートや鋼線による内固定が行われます。これは骨折部位の安定を図るのが目的です。骨折は安定していないとちゃんとつかずにグラグラしてつかなくなります。これを偽関節といいます。この状態になるとなかなか治らないので、手術を行って骨折部位をきれいにして別の部位から取ってきた骨を移植して適切な固定を行います。

 こういった偽関節を避けるためにも骨折部位の安定が重要と言えます。関節近くの骨折は関節も一緒に固定することが多く、関節の障害が起こることがあります。これも骨が治るまで固定するか、治りつつあるところで関節の可動域を確保するか、そこのさじ加減が難しいこともよくあります。一般的に骨が治ってくるのに4週間以上かかりますし、関節は3週間以上固定すると固まってくることがあります。

 特に指などの場合、関節が拘縮するとやっかいですから固定は長くとも3週間程度にし出来るだけ早期に可動域訓練を開始します。
 
 
平成27年7月9日(木) 創傷の治り方

 擦り傷や切り傷は出血してそこに含まれる物質により治癒が促進されます。それ故に血行が悪い場所は傷が出来ても治らなかったり治りにくかったりします。血液は裏方さんですがとても大切な役割をしています。血が出るとびっくりしますし人によっては見ただけで卒倒することもあります。あの赤い色は本能的に恐怖を覚えるようです。

 擦りむいたり切ったりした傷はまずはよく水道水で洗ってください。消毒液を使うより水道水でしっかり洗い流した方が効果的です。(消毒薬は細胞毒性があるので使用は推奨しません。)もちろん動脈性に吹き出るような場合はまず圧迫止血を優先してください。大抵の出血は軽く圧迫すると止まります。

 圧迫してすぐに止まっているか見たくなるのは気持ちとしてはよく分かりますが、最低でも10分間圧迫を続けましょう。すぐにめくって見ちゃうといつまでも出血が止まらない状況になってしまいます。とりあえず、落ち着いて傷を心臓より高い位置にして10分ほど圧迫止血しましょう。指のケガなどで根元を括ってくる人がありますが、これは阻血により指が壊死を起こすこともあるのでお勧めしません。
 
 
平成27年7月10日(金) 爪の変形

 爪はいろんな病気で変形しますが、本来、爪は足や手にかかる力を支えるために少し内側に湾曲した形になっており力が加わらないと更に丸くなろうとします。よく歩く人や手に重いものを持ったりする作業を行う人は爪が扁平になりますが、使わない人は丸くなりがちです。

 現代人はあまり歩かなくなりましたし、また手作業もソフトなものが多く、爪にとっては物足りなくなっているのかも知れません。この状態が続くと人によっては巻き爪や嵌入爪となります。

 当院では超硬ワイヤーによる治療を10年来行っています。ワイヤー矯正で通常はかなり改善します。中には爪が硬くて手こずるケースもありますが多くの方に喜ばれています。
 
  
平成27年7月11日(土) 骨折後の腫れ

 骨折後の腫れはあなどれません。原因は骨折からの出血や腫れであったりそれにより静脈の還流が悪化して末梢が腫れることになります。あまりに腫れると表皮に水疱が出来たり循環障害が起こります。

 一番怖いのはコンパートメント症候群です。これは筋肉内の循環障害が起こり内圧が上がって筋肉が壊死を起こします。ただちに除圧目的で手術を行う必要があります。

 骨折部位で神経障害や動脈の損傷が起こることがあります。神経障害は経過を見るケースもありますが、動脈損傷はただちに血管造影を行い、修復する必要があります。特に側副路がない動脈の場合、末端が壊死を起こしますのでただちに対応します。
 
 
平成27年7月12日(日)
 
平成27年7月13日(月) 子供の訴え

 小さい子供さんほど症状の訴えはあいまいになりがちです。さらに医療の専門家ではない親御さんが介在することによってより分かりにくくなる傾向があります。これまでの経験例では、親御さん曰く「肘が抜けた」と来院された子供さん、実際は鎖骨骨折でした。そういうことはいくらでもあります。医師としては先入観を持たずに診察することに尽きますね。膝が痛いと来られたら腰から下は少なくともすべて診察すべきです。上肢の痛みは上半身すべてを診るつもりで行わないと失敗の原因となります。

 膝が痛いから膝だけ診たらよいと言うことではありません。入室時の歩き方からそのときの顔色などすべてを観察して診療に当たることが肝要と言えます。
 
 
平成27年7月14日(火) 判断の難しい症例

 このところ判断の難しい症例が2件ありました。やはりひとつの疾患ではなく複数の疾患が重なっている場合は症状も典型的ではなくちょうど合わさったようなものになります。それを頭の中で分離してどの程度その疾患が関与しているのか判断する必要があります。迷宮入りの謎を解くような難しさですがその分やり甲斐もあります。
 
 
平成27年7月15日(水) 痛みと治癒との関係

 以前にも書きましたが、痛みというのは外傷後の回復の目安としてはとても重要です。痛みが無くなれば治って来たと考えても問題はないでしょう。ただ運動負荷や加重に耐えられるかというとそうではありません。

 痛みが無くなってから部位やケースによって異なりますが、負荷に耐えられるようになるにはしばらくかかります。下肢はとくに体重がかかりますから上肢より時間がかかる傾向にあります。

 もちろん体操競技など上肢に大きな力がかかる場合は下肢並みに時間が必要です。
 
 
平成27年7月16日(木) 熱中症とドライボディ

 ドライボディとは恒常的に身体の中の水分量が減っていることを言います。平たく言うと身体の水分を保持する筋肉が減少しているとドライボディになります。筋肉は水分をためる場所でもあり、暑いところへ行くと汗がたくさん出ますがその汗の元である水分は筋肉から血液へ供給されます。従って筋肉量が少ないと汗が十分出ずに熱中症になりやすい身体、すなわちドライボディとなってしまいます。

 ドライボディの改善には下半身の筋肉を鍛えるのが効果的です。スクワットや早歩きがよいとされています。膝の悪い方が深いスクワットをすると痛めることがありますので半分ぐらい曲げるハーフスクワットもしくは相撲の蹲踞(そんきょ)を行うようにします。
 
 
平成27年7月17日(金) 運動は何がよいか?

 生活習慣病があり医師から運動を勧められている人は多いと思います。どんな運動がよいのでしょうか。一般的には有酸素運動が推奨されています。有酸素運動とは持続して運動できる程度の負荷をかけることであり、通常、脈拍は毎分120−130回程度であり息が少し弾むぐらいがよいとされています。

 運動能力には個人差がありますから、歩くにしても走るにしてもこの範囲内で行うことが肝要です。どういった種類の運動がよいのかというと自分が好きなことであることが一番大切だと思います。好きだからこそ続けられます。単純に歩くだけだとつまらなく感じる人は街の風景が変わるところやウインドウショッピングが出来るとよいですね。また同じ志をもつ仲間を見つけられると更に続くでしょう。
 
 
平成27年7月18日(土) 筋トレが先か有酸素運動が先か?

 有酸素運動の前に筋トレをすると成長ホルモンの分泌が促進されて筋肉の増量が見込めますが、その逆に有酸素運動をしたあとに筋トレをしても成長ホルモンの分泌は上がらず筋トレの効果があまりでないと言われています。 

 従って筋トレは有酸素運動前に行うようにしましょう。
 
平成27年7月19日(日)
平成27年7月20日(月)
 
平成27年7月21日(火) ロコモティブ症候群と歩行障害

 最近、ロコモ、ロコモとマスコミ等を通じてよく聞かれるようになってきました。この病気は高齢になると運動器の衰えにより筋力やバランスが低下することにより運動機能に支障がでます。一番の問題は歩行障害で日常生活が送りにくくなります。

 早期であれば、筋力強化訓練とバランス力を強化すれば、かなり改善します。やはりいくつになっても元気でいたいものですね。ちょっとした努力で予防、改善することができます。
 
 
平成27年7月22日(水) 画像診断

 画像検査には一般的にレントゲン、超音波断層、CT、MRIになります。前二者は当院で、CT,MRIは近接医療機関での検査となります。レントゲンはデジタルですので画像の濃淡を変えられる利点があります。これにより隠れている骨折などの描出が行いやすくなります。超音波断層はお手軽なのですが、読影する検者によってレベルの差が大きく、熟練していないと何を見ているのかさえも分からないことになります。

 いまや肋骨骨折の診断率はレントゲンで65%、超音波断層で85%程度と言われており、レントゲンでは見えない骨折が超音波断層で見つかることもよくあります。もちろんCTの診断率は97%と高いのですが、被ばく線量も多く、またコストもかかりますので、多発骨折や血気胸など重傷の方を対象と考えています。
 
 
平成27年7月23日(木) 痛風

 痛風はご存じのように関節内や関節周辺に尿酸が析出してそれが炎症を起こして痛みと腫れが起こります。有名なのは足の親指の付け根(MTP関節)ですが、膝関節、アキレス腱、肘などでも起こります。母趾が70%でそれ以外の場所が30%とされています。尿酸は水に溶けににくく、また冷えると析出しやすいため、関節の露出部に蓄積しやすいのです。

 痛風を起こした場合はまず消炎鎮痛剤などで対症療法を行います。血中の尿酸値は発作時には低いこともあるので注意が必要です。尿酸を下げる薬を服用していて痛風が起こった場合は薬を継続しますが、飲んでいない場合は発作が起こっても炎症をが収まるまで痛風の薬は服用しません。
 
 
平成27年7月24日(金) 先天性橈骨頭脱臼

 生まれつき橈骨の近位部(肘に近い方)で橈骨頭が脱臼している病態。変形や可動域の減少で気づかれることが多い。成人以降に症状が出て発見されることもあります。

 原因は分かっていません。治療は生活に支障がある場合や変形が強い場合は手術を考慮します。手術は骨頭切除術や場合により再建術が行われます。


 モンテジア骨折(尺骨の骨折+橈骨頭の脱臼)の脱臼見逃し例でも同じように脱臼したままとなりますので、既往歴に注意を要します。
 
 
 
平成27年7月25日(土)  痛風と蜂窩織炎

 痛風と蜂窩織炎の見分け方は実はとても難しい。皮膚を損傷する外傷があってその周辺に皮下の炎症像があれば蜂窩織炎である確率は高い。一方、外傷がなく誘因なく突然痛みと腫れが出てくれば痛風の可能性が高い。痛風と偽痛風との鑑別も必要です。痛風は外傷後にも発症することがあります。経験的には外傷から起こる蜂窩織炎より外傷後に起こる痛風の方が日にちが経ってからの方が多いように感じます。

 血中尿酸値を調べたら分かりそうなものですが発作時に尿酸値が下がる傾向があり正常値を示すこともあり必ずしも決め手とはなりません。また高尿酸血症であっても外傷による蜂窩織炎を起こします。 

 従ってその鑑別の判断は実に微妙でプロでも間違ったり判断に苦慮することがあります。
 
平成27年7月26日(日)
 
平成27年7月27日(月) リスフラン靱帯損傷

 つま先立ちで内側に捻る外傷で起こります。第一楔状骨と第2中足骨基部をつないでいるリスフラン靱帯が損傷します。完全に断裂すると土踏まずの横アーチが保たれなくなり扁平になります。受傷当初であればギプス固定を4週間ほど行い足をつかないようにします。

 その後、アーチサポートを行い徐々に体重をかけるようにします。スポーツへの復帰は2-3ヶ月必要です。
 
 
平成27年7月28日(火) 化膿性関節炎

 関節炎のなかでもなんと言っても化膿性関節炎は生命に関わることがあるだけに怖い病気です。多くはブドウ球菌が起炎菌となり、関節の腫れ、痛みに加えて発熱、悪寒などの全身症状を呈します。

 ただし子供や高齢者ははっきり伝えられなかったりしますので注意が必要です。

 化膿性関節炎の疑いがあれば、関節を穿刺して細菌の検査をします。これは抗生物質の治療前に行うようにします。また痛風や偽痛風といった結晶性関節炎を起こすものとの鑑別のために関節液中の結晶の有無もチェックします。→ただし結晶があるから化膿性関節炎ではないとは言えません。

 化膿性関節炎と診断がつけば、入院の上、抗生剤の点滴(経口ではなく点滴!)と関節のドレナージを行います。
 
 
平成27年7月29日(水) コンパートメント症候群

 コンパートメント症候群は外傷や火傷、感染、四肢の圧迫などにより筋肉や神経を納めたコンパートメント(区画)の内圧が上がって微少な循環障害を起こす結果、筋肉や神経の損傷を引き起こします。阻血による壊死と言えます。症状はいろいろありますが、痛み止めが効かない疼痛が生じます。コンパートメント内の内圧が上昇しますので、経時的に測定し、40mmHgを越えるようですと減圧する必要があります。
 
 
平成27年7月30日(木) カルシウムピロリン酸沈着症(calcium pyrophosphate deposition disease) CPPD 偽痛風

 痛風とよく似た関節の炎症を起こすので偽痛風と呼ばれます。痛風は尿酸結晶の蓄積により炎症が起こりますが、偽痛風はピロリン酸カルシウムの蓄積により引き起こされます。女性に多く、65-75歳に多く見られます。レントゲンで石灰の沈着を見ます。膝関節に多く足関節、股関節、手関節に好発します。発作は数日で解消することが多いです。確定診断は穿刺液中にピロリン酸カルシウムの結晶を認めることです。

 ただし、他の疾患とりわけ化膿性関節炎との鑑別が重要です。
 
 
 
平成27年7月31日(金) リウマチ性筋痛症


 60歳以上の方で誘因なく頚・肩・上腕に激しい痛みが起こる場合はリウマチ性筋痛症を頭に浮かべるようにします。側頭動脈炎による失明が問題となります。

 診断基準(リウマチ性多発筋痛症研究会 1985)
1.赤沈値の亢進(40mm/h以上)
2.両側大腿部筋痛
3.食欲減退、体重減少
4.発熱(37度以上)
5.全身倦怠感
6.朝のこわばり
7.両側上腕部痛

1)60歳以上を条件とする
2)上記7項目中3項目以上を満たすものを確実なリウマチ性筋痛症と診断する。