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整形外科 外科
リハビリテーション科

立方骨症候群(Cuboid Syndrome)の臨床的検討

1. 概念と病態生理

立方骨症候群は、踵立方関節(Calcaneocuboid Joint: CCJ)における微細なアライメント異常、あるいは適合性不全に伴う足部外側痛の総称です。

医学的な正式病名としては確立の途上にありますが、臨床的には**「Locked Cuboid(立方骨のロック状態)」**として、足部バイオメカニクスの破綻に起因する重要な症候群と認識されています。

長腓骨筋腱は立方骨底側の骨溝を滑車として走行し、第1中足骨基部・内側楔状骨に停止します。この走行特性により、長腓骨筋の収縮は立方骨を底側・内側方向へ回旋・変位させるベクトルとして働きます。

CCJの支持組織(二分靭帯や底側踵立方靭帯など)に弛緩や損傷がある場合、この力学負荷が立方骨の軽度亜脱臼(Subluxation)を誘発し、関節包や周囲軟部組織へのインピンジメントを引き起こします。

症状

 足の外側(立方骨周囲)の局所痛
 歩行時・踏み返し時の痛み
 つま先立ちや片脚立位で痛み増強
 押すとピンポイントに痛む(圧痛)
 「砂利を踏んでいる感じ」と表現されることも

※腫脹や内出血は目立たないことが多い

2. 受傷起点と背景因子

  • 内反捻挫に伴う続発: 足関節内反捻挫の際、二分靭帯の牽引あるいは踵骨による立方骨の圧迫が生じ、受傷後も残存する外側痛の原因となります。ランナー、ジャンプ競技、サッカー、バスケットボールなど 足関節捻挫後(特に内反捻挫後) 。扁平足、回内足

  • 過回内(Over-pronation): 立脚中期において足部が過回内すると、横足根関節のロックが外れ、立方骨への剪断力が過大となります。

  • 反復性ストレス: バレエ(ポワント姿勢)や長距離走行など、前足部への強い踏み込みを要する動作。

3. 診断戦略(Physical Examination)

画像診断(X-p/MRI)では明確な異常を呈さないことが多く、除外診断と徒手検査による臨床診断が中心となります。

  1. Midtarsal Supination Test: 前足部を内反・内転(底屈を伴う回後)させた際に、CCJに局在する疼痛が誘発されるかを確認します。

  2. Midtarsal Adduction Test: 踵骨を固定し、前足部を内転させた際の誘発痛を確認します。

  3. Cuboid Pressure Test: 立方骨を底側から背側へ、または背側から底側へ圧迫した際の圧痛および可動性の亢進・消失を確認します。

4. 治療的アプローチ

本症候群の最大の特徴は、解剖学的構造の破綻ではなく「機能的ブロック」であるため、力学的再アライメントが劇的な効果を示す点にあります。

  • Manipulation (Cuboid Whip / Squeeze): 立方骨を瞬発的に背側へ押し上げる手技です。整復時にクリック音(Pop音)を伴うことがあり、即時的な可動域改善と疼痛緩和が期待できます。

  • Taping / Orthotics: 立方骨の底側を支持する「Cuboid Pad」の貼付や、過回内を制御するインソール処方を行い、再発を防止します。

  • 運動療法: 後脛骨筋の機能改善や、足部内在筋の強化によるアーチ保持能力の向上を図ります。

保存療法が基本

  1. 徒手整復(cuboid manipulation)
    即時的に痛みが改善する例が多い

  2. テーピング
    立方骨サポート、アーチ保持

  3. インソール
    外側アーチ・回内抑制

  4. 運動療法
    腓骨筋ストレッチ
    足部内在筋・後脛骨筋強化

  5. 安静・運動量調整

薬物療法

NSAIDsは補助的(主治療ではない)

予後

適切な治療で数日〜数週間で改善
放置すると慢性化しやすい
再発予防には足部アライメント修正が重要

5. 鑑別診断(Differential Diagnosis)

  • 第5中足骨基部骨折(Jones骨折・偽Avulsion骨折)

  • Os peroneum(長腓骨筋種子骨)障害

  • 短腓骨筋腱付着部炎(Enthesopathy)

  • 足根洞症候群

評価項目 Os peroneum(長腓骨筋種子骨)障害 立方骨症候群(Cuboid Syndrome) 短腓骨筋腱付着部炎
主な病態 長腓骨筋腱内の種子骨周囲の炎症・骨折 踵立方関節(CCJ)の微細な亜脱臼・機能不全 短腓骨筋腱付着部(第5中足骨基部)の変性・炎症
痛みの局在 立方骨外側縁(Cuboid tunnel付近) 踵立方関節(CCJ)直上および底側 第5中足骨基部粗面(外側の骨の突出部)
疼痛誘発動作 足関節の内反・底屈強制 立脚中期〜蹴り出し時(荷重負荷) 抵抗下での足関節外反(Resisted Eversion)
身体所見の特徴 種子骨直上の限局した圧痛 立方骨底側の溝に沿った深い圧痛 第5中足骨基部への指一本での明らかな圧痛
画像診断のキー X線斜位像での種子骨の変位・骨折、MRIでの骨髄浮腫 通常の画像では陰性(機能的診断) X線での牽引性骨棘(Spur)、USでの腱肥厚・血流増大
特異的テスト なし(触診と画像が主) Midtarsal Supination Test(陽性) Single-leg Heel Raise時の外側痛
主な治療アプローチ 安静、インソール(外側支持)、重症時は摘出術 安静、インソール(外側支持、)、マニピレーション 物理療法(超音波・ESWT)、ストレッチ、インソール