鵞足炎 pes anserinus tendonitis
鵞足はハムストリングスを構成する縫工筋、薄筋、半腱様筋の付着部のことで、膝のやや下方の脛骨内側にあります。膝を屈曲、内旋させる機能があります。一般的にスポーツなどで繰り返して過剰な牽引負荷がかかると慢性の腱炎となり痛みが出ます。深層にある滑液包炎を合併することも多いです。Squtting testのtoe outで症状が出ます。骨性の圧痛がある場合は、脛骨高原骨折や脛骨近位の疲労骨折を除外診断します。
また変形性膝関節症(膝OA)のある方は鵞足炎も合併していることがよくあります。膝OAの症状はそれほどでは無く鵞足炎の症状が強いこともあります。
ハムストリングスがタイトであると症状が出やすいです。診断が付いたら体の柔軟性をチェックします。多くの場合、体が硬く、くにハムストリングが硬くなって曲げにくくなります。このような状況が続くと周辺の筋腱も拘縮し可動域が低下します。
スポーツ障害の場合は痛みが無くなるまで局所の安静が重要で運動の内容を調整しストレッチ(大腿後面と内側)を指導します。痛みが無くなってくればレッグカールを行い筋力強化をはかります。膝OAに合併する場合は両方の治療を行います。回内足ではアーチサポート。外骨腫が原因の場合は手術を考慮します。
鵞足炎(Pes Anserinus Tendonitis)診療ポイントまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解剖 | 脛骨内側下部に縫工筋・薄筋・半腱様筋が集合。膝の屈曲・内旋を担う。 |
| 病因 | 繰り返す牽引負荷(特にスポーツ)による腱の微小損傷や滑液包の炎症。 |
| 臨床所見 | 脛骨内側下部の限局性圧痛 Toe-outでのスクワットで誘発痛 深部の滑液包炎の合併 骨性圧痛があれば骨折の除外必要 |
| 鑑別診断 | 脛骨高原骨折 脛骨近位の疲労骨折 変形性膝関節症 |
| 関与因子 | ハムストリングのタイトネス 回内足、外骨腫 |
| 治療戦略 | 局所安静(スポーツ活動の調整) 理学療法の実施(温熱治療や超音波治療) ハムストリングと内転筋のストレッチ 痛み消失後の筋力強化(レッグカールなど) 回内足にはアーチサポート 外骨腫が原因なら手術を検討 |
| 併存症への対応 | 膝OA合併例では双方に対するアプローチ(炎症抑制+可動域改善+荷重制限)が必要 |
鵞足炎におけるMRI所見の整理
|
評価対象 |
所見のポイント |
|---|---|
|
深層滑液包(Pes Anserine Bursa) |
滑液包の腫脹・高信号(T2強調像)→滑液貯留や滑膜炎の可能性 |
|
筋腱付着部(Enthesis) |
縫工筋・薄筋・半腱様筋腱の脛骨内側付着部における高信号(T2)または腱肥厚→腱炎や部分断裂 |
|
腱周囲の浮腫性変化 |
STIR像や脂肪抑制T2で明瞭。炎症または牽引負荷に伴う微細損傷の兆候 |
|
関節周囲の併発所見 |
膝OAの合併所見(関節軟骨の菲薄化、骨棘、滑膜炎) |
|
外骨腫の評価 |
骨膜下の突出を三次元的に確認し、腱との関係性を把握 |
MRIは特に慢性化した症例や難治性の鵞足部痛、あるいは膝OAとの鑑別が難しいケースで診断精度を大幅に高めます。