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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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平成27年8月1日(土) 運動時の水中毒

 マラソンやトライアスロン、サッカーなどで水やスポーツドリンクを飲み過ぎて水中毒となり命を落とすことがあります。水中毒は文字通り汗を大量にかいて水分を補給すると汗で失われたナトリウムが水分補給で更に薄まってしまい、低ナトリウム血症となってそれがひどくなると頭痛やけいれん、昏睡となって死に至ることがあります。

 最近、この運動時の水中毒に対するガイドラインが改定されました。要約すると「喉が渇いたら水を飲む」ということ。喉が渇かないうちにどんどん水やスポドリを飲むと水中毒となってしまいます。

 これまでスポーツでは水分補給をこまめに行うようにされてきましたが、これだとマラソン大会など多くのランナーが症状は出ないまでも水中毒になっていたという報告もありましたので、今回の改訂のように喉の渇きが出たら飲むのが良さそうです。

 体重の2%までの脱水は通常問題なく耐えられるそうです。したがって運動時は喉の乾きに応じて水を飲んでこの2%以内のなるように調整すると良さそうです。大量に汗をかいた場合はやはり塩分も補給する必要があります。

 いちいち血中濃度を測定して飲水することは出来ませんし、「乾き」という生体のセンサーをうまく利用するのが優れていると言うことのようです。

 ただ高齢者は「乾き」センサーが弱っていることもありますので、今までどおり日常生活においてはこまめに水分補給を行う方が良いのかも知れません。
 
平成27年8月2日(日)
 
平成27年8月3日(月) 運動時の脱水

 運動時に汗をかくと身体の水分がなくなって血液が濃縮されます。脱水症状は運動前の体重がマイナス2%ぐらいまではでずにこれを越え出すと徐々に症状が出るとされています。

 大塚製薬のサイトからの引用ですが脱水率による症状は以下の通りです。

脱水量(初期体重の%)と脱水症状ないし徴候

体重減少率
(初期体重の%)
脱水症状
3% 口渇、唇の乾燥
4% 体温の上昇、皮膚の紅潮、尿量の減少と尿の濃縮
5% 頭痛、体のほてり
6-7% めまい、チアノーゼ、口渇(高度)、口内乾燥、乏尿
8-10% 身体動揺、けいれん
11-14% 皮膚の乾燥、舌の膨化、嚥下困難
15-19% 排尿痛、目のかすみ、難聴、舌の縮小
20%以上 無尿、死亡

出典:森本 武利

 このように脱水による症状は口渇や唇の乾きから症状が出て徐々に重い症状が出てきます。上級アスリートの場合は、汗の出具合で飲水量を調整しています。脱水を恐れて各給水所でがぶ飲みすると水中毒になってしまいますし、かといって飲まなければ脱水となってしまいます。うまく体重あたりマイナス2%までの脱水に押さえるのがコツのようです。

 運動前と運動後に体重を計り、飲水量を記録しておくと汗の量が分かります。こういった地道な努力をしておくことも大切かと思います。

 

 
平成27年8月4日(火) ストレッチは地道に

 身体の硬い人が運動するとあちこち痛みが出て故障しやすいです。関節の可動域や筋肉の柔軟性はとても大事なのですがトップアスリート以外はあまり重要視していないように思います。大学の部活で痛みが出てくるケースでは多くの場合、ストレッチ不足です。ストレッチは確かにやって楽しいとまではいきません。

 むしろ面倒くさいものかも知れません。それでも良いパフォーマンスを出すには継続して練習をすることが大切なのは言うまでもありません。その練習を継続させるためには、故障しないことがとても重要です。故障しないためには各関節の可動域を向上させ、また筋肉の柔軟性を高めておく必要があります。
 ということでストレッチをおざなりにしている人が継続して高パフォーマンスを発揮することは出来ません。 

 
平成27年8月5日(水) 暑い夏と塩分制限

 連日うだるような暑さですね。高血圧症の人は塩分制限を指導されていることがほとんどです。暑い夏を汗びっしょりで乗り切る人は塩分不足になって身体が疲れやすくなります。塩分制限を受けていても適度な塩分は必要です。特に汗をかく人はこまめに塩分と水分を摂るように心がけましょう。
 

 
平成27年8月6日(木) 関節リウマチの診断基準

2009年に新しく出た関節リウマチの診断基準です。病状と所見で点数化して6点以上を関節リウマチと診断します。

 ACR/EULAR新基準(2009年)

【関節病変】

(1) 中・大関節に1つ以上の腫脹または疼痛関節あり 0点
(2) 中・大関節に2〜10個の腫脹または疼痛関節あり
1点
(3) 小関節に1〜3個の腫脹または疼痛関節あり 2点
(4) 小関節に4〜10個の腫脹または疼痛関節あり 3点
(5) 少なくとも1つ以上の小関節領域に10個を超える腫脹または疼痛関節あり 5点

【血清学的因子】

(1) RF、ACPAともに陰性

0点
(2) RF、ACPAの少なくとも1つが陽性で低力価
2点
(3) RF、ACPAの少なくとも1つが陽性で高力価 3点

【滑膜炎持続期間】

(1) <6週

0点
(2) ≧6週
1点

【炎症マーカー】

(1) CRP、ESRともに正常

0点
(2) CRP、ESRのいずれかが異常
1点

この基準は関節炎を新たに発症した患者の分類を目的としている。関節リウマチに伴う典型的な骨びらんを有し、かつて上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する。罹病期間が長い患者(治療の有無を問わず疾患活動性が消失している患者を含む)で、以前のデータで上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する
鑑別診断は患者の症状により多岐にわたるが、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎、痛風などを含む。鑑別診断が困難な場合は専門医に意見を求めるべきである
合計点が5点以下の場合は関節リウマチと分類できないが、将来的に分類可能となる場合もあるため、必要に応じ後日改めて評価する
DIP関節、第1CM関節、第1MTP関節は評価対象外
大関節:肩、肘、股、 膝、 足関節
小関節:MCP、PIP (IP)、MTP (2-5)、 手関節
上に挙げていない関節(顎関節、肩鎖関節、胸鎖関節など)を含んでも良い
RF: リウマチ因子。陰性:正常上限値以下、弱陽性:正常上限3倍未満、強陽性:正常上限の3倍以上。リウマチ因子の定性検査の場合、陽性は弱陽性としてスコア化する
陽性、陰性の判定には各施設の基準を用いる
罹病期間の判定は、評価時点で症状(疼痛、腫脹)を有している関節(治療の有無を問わない)について行い、患者申告による


上記のスコアの合計が6点以上である症例は「RA確定例 (definite RA)」と診断。
 

 
平成27年8月7日(金) 腱鞘炎

 腱にはよく擦れる部分には滑りをよくするために鞘がついています。これを腱鞘と言い、もともと滑液包が長く腱の周りを取り巻いたものです。それでも擦れすぎると炎症を起こして痛みが出て腫れてきます。治療は患部の安静が一番です。そのうえで投薬や注射を希望により行います。痛みが続く場合は、ギプスや装具で固定することもあります。
 
 
平成27年8月8日(土)
 第5中足骨基部骨折とJones骨折

 基部というのは根元のことです。足には5本の中足骨があります。足の指と足関節をつなぐように細長い骨です。下駄やハイヒールなどで足の甲を内側に捻るとこの中足骨が根元で折れることがあります。よくあるのが、第5中足骨の根元です。この骨の最後部には短腓骨腱が付着しており、ねじれるときに大きな力がかかって骨折します。

 これとよく似た部位で起こるのがJones骨折です。第5中足骨基部骨折よりやや遠位(足先の方)で起こります。この二つの骨折はよく似ていますが、経過や治療法が異なり、第5中足骨基部骨折はギブスなどの保存的治療でよく治りますが、Jones骨折はなかなか保存的には治りにくく、最初から手術を選択することが多いです。

 専門書によっては、基部骨折とJones骨折を一緒にして記述されていることもあり注意を要します。
 
 
平成27年8月9日(日)
 
平成27年8月10日(月) 頭痛

 頭痛の85%は後頚部の筋膜炎によると言われています。それより前の部分は脳から直接出ている三叉神経ですので頚から来ていることは原則ありません。ただ頸椎症などで痛みによるストレスが強いと周辺にストレス性の痛みが出る可能性があります。頭痛の原因は多岐にわたり診断はとても難しいという印象があります。

 頭痛が続く場合は、頭痛外来などの専門外来を受診することをお勧めします。
 
 
平成27年8月11日(火) しびれとは?

 しびれは脳や脊髄神経、末梢神経の障害で起こります。また血管が細くなって血流障害を起こしてもしびれることがあります。しびれの鑑別はなかなか難しく、特に脳神経が原因なのかは重要であるだけに更に困難がつきまといます。

 通常、脳神経由来のしびれは単独で起こることは少なく、麻痺を伴うことがほとんどです。特に片側の上下肢の麻痺を伴ったしびれは脳由来のものと考えて問題ありません。

 しかしながら例外というものが必ずあって、麻痺を伴わず上肢のしびれのみの脳神経障害というのも実はあります。こうなると脳由来なのかそれともより末梢からのものかを判断するのはきわめて困難となります。問診と診察を丁寧に行ってその違いを明確にしなければなりません。

 頚椎より末梢の神経障害を思わせる症状や徒手検査所見が明らかにあれば診断は難しくないでしょう。明確なものがなければ脳神経疾患を疑って頭部MRIを行うとよいです。ただし、脳梗塞等が疑われる場合、血栓溶解剤の使用には発症からの時間制限がありますので、無駄に時間をかけるのではなく、治療が可能な病院をただちに受診して頂きます。
 
  
平成27年8月12日(水) 肋骨骨折

 肋骨は胸郭を保護するためにありますが数ミリしか厚さがなくちょっとした外力で折れてしまいます。例えば、風呂桶を洗っていて身体を捻ったとき、物を取ろうと手を伸ばしたとき、こんな何でもない動作でも骨折することがあります。もちろんさらに強い力が加わると複数の骨折を起こすことがあります。

 肋骨骨折で怖いのは、胸腔側に飛び出して肺を傷つけることです。胸腔内に血液がたまる血胸、空気が漏れる気胸などが起こると場合により生命への危険がありますので迅速な診断、対応が必要となります。また肋骨の複数箇所で骨折すると、息がうまく吸えない状態、奇異呼吸を起こすことがあります。この場合も緊急の治療が必要ですので、呼吸困難を覚えるようですとただちに救急搬送してください。
 
 
平成27年8月13日(木) ギブスか副子か?

 骨折や捻挫などで固定を行う場合、ギブスを選択するか、それとも副子をするかは、部位や状況、医師の好み、慣れによって選択されます。腫れが強く予想される場合は、副子の方が安全ですし、ギブスを巻くにしても割をいれて圧力が上がらないようにします。

 それでも想定以上に腫れた場合は、ギブスや副子を外して除圧します。痛みやしびれ、冷感などが改善しない場合は血流障害やコンパートメント症候群を疑います。

 下巻き自体が締まることもありますので、除圧する場合は下巻きも切るなり取り除くようにします。


 ギプスや副子固定後、腫れにくいように心臓より高く上げておきます。ただしコンパートメント症候群が疑われる場合は、心臓と同じ位置にします。
 
平成27年8月14日(金)夏期休暇 
平成27年8月15日(土)夏期休暇
平成27年8月16日(日)夏期休暇
 
平成27年8月17日(月) 関節穿刺と感染

 関節は細菌感染に弱く一度感染するとなかなか治りにくい。膝が痛いときにヒアルロン酸を注射することがありますが、やはり感染を起こすことがあるので十分注意をしておく必要があります。適切な消毒はいうまでもなく、唾液が飛ばないように心がけたり、不潔な操作をしないことが重要です。
 
 
平成27年8月18日(火) ギプス固定

 骨折や捻挫で必要に応じてギプス固定を行います。ギプスは全周性に巻くので内部が腫れてくると圧が逃げられなくなります。きつく締まると循環障害を起こしますので、ある程度腫れを見込んで下巻きを多くしたりして調整します。かなりの腫れが予測される場合は、割面を入れたり、両側にカットを入れて除圧出来るようにします。

 さらに腫れが強く予想される場合は、ギプスを巻かずに一側のみ副子で固定します。受傷5日までに巻いた場合は割面を入れておいた方が安全とされています。割面は一本の線で行うより、5mmの間隔で2本入れたほうが除圧は効果的です。(割面1本で間に割り箸を入れて広げる方法もあります。)
 
 
平成27年8月19日(水) オーバートレーニング症候群

 運動負荷をかけると回復するのに一定の時間がかかります。これを無視して練習を続けると疲労がどんどん蓄積していき、ホルモンや自律神経のバランスが崩れ、ひどくなると慢性の疲労感、不眠、食欲不振、抑うつ状態となります。また免疫力の低下を来すこともあります。

 診断は貧血や肝障害などの疾患がないことを調べます。(除外診断)また抑うつがないかどうか心理テストを行います。

 治療はなんと言っても休息です。無理な運動から離れてしばらくゆっくりすることが肝要です。無理な運動、睡眠不足、過密なスケジュール、過重な精神的ストレスにより引き起こされますので無理は禁物です。
 
 
平成27年8月20日(木) 腰痛体操

 腰痛体操は星の数ほどあって一般の方にとってどれをやれば良いのか分からないのが現状です。腰痛の原因もさまざまで画一的な一つの体操がすべての腰痛に効果があるとも思えません。そのようななか経験的に1956年にオーストラリアの理学療法士であるMackenzieさんが偶然発見したマッケンジー法というのが世界的には主流となっています。

 この方法の基本はきわめて単純でうつぶせに寝て背中を反らすだけで腰痛を改善させるというもの。これは昔、Mackenzieさんが治療中に電話がかかってきて患者を寝てもらうようにスタッフに指示したろころ、その前の患者さんがベッドを大きく反らしていたものですから、それを知らずに次の患者さんが腰痛では通常してはいけないとされていたうつむせの背屈位で待っていたところ、長年の腰痛がずいぶんと楽になったのが発見につながりました。


 当時としては誤った姿勢を取らせたことによって症状が大きく改善したのです。その後、このMackenzie法は世界的に普及しています。先日、腰痛治療の話をNHKでやってましたが、東大の先生がやはり同じように背中を背屈させる運動(立位)を薦めていました。これはMackenzie法が腹臥位で行うのを立位で行っただけでMackenzie変法の範疇に入るものだと考えます。(オリジナルはやはりMackenzieさんでしょう。)

 立位で行うと転倒の危険がありますので補助者が必要かどうか判断しなければなりません。一方で腹臥位で背中を反らすのも骨粗しょう症があり背中の変形が強くなった方には辛いこともあります。

 当院では若い方はMackenzie法のオリジナルである腹臥位での体操を、高齢の方は側臥位で背中を反らすようにしてもらっています。バランス力に問題のない人には立位での体操を行うように指導しています。また身体各所の柔軟度をみて通常3-4個の体操を組み合わせて行ってもらっています。
 
 
平成27年8月21日(金) 腰痛が起こったら安静が良い?

 腰痛が起こったら痛みの程度に応じて安静をはかります。とても痛いときは当然動けませんから寝ておきます。痛みがそれほどでも無いときは臥床安静は必要ではなく「ごろごろ」しておくと良いでしょう。スエーデンの文献では、腰痛患者を三群(安静臥床、ごろごろ、運動)に分け、その後の経過を見ましたが、一番早く治ったのはごろごろ群でした。

 あまり安静にし過ぎるのも良くないと言えます。ただし動くと激痛が生じる、動かなくても激痛が起こるような場合は安静も大切ですが、まず医療機関を受診してください。

 腰痛が生じたからと急に体操等を行うのは運動を行うのと同じですからかえって痛みが長引きます。「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言えます。
 
 
平成27年8月22日(土) 認知症と運動

 最近のデータによると、認知症の予防、進行の防止に運動が推奨されています。どのようなメカニズムで効果があるのかは分かっていませんが、統計上は運動を行った群の方が認知症になるのを遅らせるようです。運動すると当然、脳神経が命令を出して筋肉が動くわけですから、またバランスを取ったりして、脳のいろんな部位が活性化されます。

 また一人で黙々とするのではなく人と話す機会があれば更に効果的だと思います。当院でも運動療法をされている方が認知症になることは比較的低くなっているように思います。

 人間は一人で生きるのではなく、社会に参加することによって自然と会話し運動します。こういったことが認知症を進行しにくくする効果があると言えます。
 
平成27年8月23日(日)
 
平成27年8月24日(月) 成長痛

 子供の手足が痛むとき「成長痛」でしょうかとよく聞かれます。昔はおよそなんでもかんでも成長痛としてかたづけられていましたが、いまは大人と同様に痛むにはそれなりの理由(疾患)があるとされています。実際診療をおこなうと大抵は痛む原因があります。成長痛というのはほとんどありません。

 よくあるのは使いすぎによる痛みです。毎日、運動系の習い事をしていると起こりやすいです。なかでも真面目に一所懸命に頑張っている子供ほど起こりやすいです。

 使い痛みだと少し運動負荷を減らすと改善します。無理をすると筋や腱の炎症のみならず疲労骨折や裂離骨折などを併発してきます。こうなると治療期間も長くなり運動への復帰も遅れます。
 
 
平成27年8月25日(火) サルコペニアとサルコペニア肥満

 最近、サルコペニアという言葉を聞かれたことがあると思いますが、これはサルコペニア(sarcopenia)=sarco(筋肉)+penia(減少)という造語です。病気の定義としては「加齢に伴う筋肉の減少」となっています。サルコペニア肥満とは、筋肉の減少と肥満を併せ持った病態です。

 サルコペニアの原因は1次性(年齢による)、2次性(疾患による)に分けられています。

 サルコペニアを改善させるには筋肉を増やす必要があります。30歳を超えると毎年1%ずつ筋肉が減っていきます。60歳を超えると1-2割の人がサルコペニアとなり、70歳を超すと過半数がサルコペニアとなっています。

 サルコペニアの予防は、筋肉を減らさないことですので筋トレや有酸素運動が欠かせません。画一的な運動を行うのではなく、継続できる好きな運動をするのが良いでしょう。また体力に応じて行う必要があります。

 お手軽な運動としては簡単な筋トレと散歩がお勧めです。筋トレも無理のないようにします。散歩は最初はゆっくりとすれば良いでしょうし、慣れてきたら速く歩くように努めます。このあたりは個々の体力差が大きいと思われますので、それぞれ主治医に相談してください。

 サルコペニアに肥満を併発した場合は、ダイエットも重要です。食事療法だけでダイエットを行うと筋肉の異化作用が起こって筋が更に減少します。一説には3ヶ月の食事のみのダイエットで生じる筋肉の減少は5年分の自然減少に匹敵するといわれています。

 従ってサルコペニア肥満の改善には筋肉量を増やす目的と脂肪を減らすことを目的として行う必要があります。すなわち適切な食事療法と筋トレ、有酸素運動をうまく組み合わせることが重要です。
 
 
平成27年8月26日(水) 筋トレ

 筋肉を鍛える(筋肥大)のにはレジスタンストレーニングが一番優れています。最大挙上重量の80%負荷(80%1RM)で8回できる(8RM)で行うのが最も効率が言われています。最近の研究では30%1RMであっても限界まで動作を反復すれば80%1RMと同等の効果が得られるという報告があります。

 筋肉が増量しても早く収縮して使えるものでなければなりません。そのためにはレンジスタンストレーニングだけではなく瞬発力を鍛える必要があります。

 インナーマッスルを鍛えるのには最大筋力の30%以内で行う必要があるというのは間違いで根拠のない話のようです。
 
 
平成27年8月27日(木) crowned dens syndrome

 簡単に言うと環軸椎の偽痛風です。CTで歯突起が王冠をかぶったように見えるのでこのような名前がつけられました。

 頚椎の第1−第2関節である環軸関節において第2頚椎の歯突起の後方にピロリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトが蓄積して炎症が起こる病気です。炎症を起こすと頸部痛、とくに回旋させるときに痛みが生じます。レントゲンで歯突起後方に石灰像があるとほぼ確定ですが、実際には判読するのは難しく、CTで石灰化があるかどうかをチェックします。

 高齢者に多く、発作時には血液検査で炎症反応が出ます。鑑別診断としては、リウマチ性多発性筋痛症、髄膜炎、脊椎炎があります。
 
 
平成27年8月28日(金) 上殿皮神経障害 SCN-EN

 上殿皮神経は腸骨稜近辺で胸腰筋膜を貫いて臀部に至る皮神経です。筋膜から出るところで絞扼(締まってしまうこと)されると臀部に痛みが出ます。しゃがんだり座ったりすると痛みが出たり強くなったりします。

 絞扼部位を押さえると臀部に痛みが放散します。MRIでの画像診断は困難です。超音波断層で腸骨稜縁での低輝度層が厚かったという報告があります。治療は消炎鎮痛剤の投与、神経ブロック、手術療法があります。

 見逃されることが多く殿部痛を起こす他の疾患と間違われることがあります。両側で発症したり、他の疾患と併発することもあります。
 
 
平成27年8月29日(土) 湿布(ケトプロフェン)による光線過敏症

 湿布でかぶれることはよくありますが、この湿布(ケトプロフェンを含有)による光線過敏症は貼ったところに日光(紫外線)を浴びると皮膚炎を起こしてくる副作用です。当院では過去に光線過敏症の警告が出る前に一度だけ経験したことがあります。その後、メーカーより副作用情報がでましたので十分注意して使用し投薬時にもこの副作用についてくどく説明していますので一例も起こっていません。

 今回、たまたま外傷で受診した男子大学生が以前他院でもらった三週間前に湿布を貼っていたところ、赤くなり水ぶくれが出来てものすごく腫れたとのことでした。ご本人の許可を得ましたので写真を供覧して頂きます。



 足背から足趾にかけて光線過敏症が起こった痕があります。三週間経っていますが日焼けのように色素沈着しています。正常な部分はサンダルを履いていて日光に当たっていないところです。(第2趾の発赤は今回受診した打撲による)

 このケトプロフェンによる光線過敏は
湿布を外してから一ヶ月は起こりうるので注意が必要です。湿布を外して一ヶ月経たずに患部に日光を浴びると起こりえます。
 
平成27年8月30日(日)
 
平成27年8月31日(月) 股関節への加重

 基本的に安静に両足で立った状態では片方の股関節には体重の約30−40%がかかります。これが片足立ちになると体重の2-3倍となります。歩行時には着地時の衝撃などにより体重の10倍の力がかかることもあります。体重50kgですと500kgです。走ったり跳躍の着地時には更に強い力がかかります。

 痛みを発症しやすい股関節は骨頭を覆っている臼蓋が浅く小さい場合です。骨頭の中心からの垂線と臼蓋の最外側と骨頭の中心を通る線とが成す角度をCE角といい、これが正常な股関節ですと30度前後となります。正常は25度以上で20度以下だと臼蓋形成不全などの疾患の可能性があります。