膝痛をきたす他科疾患
膝の痛みは変形性膝関節症や靱帯・半月板の損傷でお越しになる方がほとんどですが、なかにはそれ以外の病気が隠れていることがあります。とりわけ、熱があって急に膝が腫れて熱を持ち、動かすと激しく痛むという場合は、化膿性膝関節炎をまず考えます。関節液を抜いて確認し、必要ならすぐに洗浄する処置が要ります。急に足が虚血のような症状(強い痛み、蒼白、脈が触れない)を呈する膝窩動脈の急性閉塞も同じく緊急対応が必要な病気です。
腫瘍が関係することもあります。白血病や、肺・乳房・前立腺などから膝周囲の骨へ転移したがんは、夜になると痛む、じっとしていても痛みが続くといった訴えで気づかれることがあります。がん自体が転移していなくても、体の反応として指先が太鼓ばちのように変わったり、関節リウマチに似た多関節炎(がんに先行して出ることもあります)が現れることもあります。乳がんなどの治療で使うアロマターゼ阻害剤をはじめ、多くの薬が関節痛の原因になる点も、お薬手帳を確認する際に意識しています。
膝の裏側の血管に関わる病気も見逃せません。膝窩動脈にできた瘤はベーカー嚢胞と紛らわしく、間欠性の跛行や膝窩の痛みを訴える若いスポーツ選手では、動脈が周囲の筋肉に締め付けられる捕捉症候群も考えます。両側に起こることも半数近くあります。下肢の腫れや熱感、発赤を伴う痛みでは深部静脈血栓症も鑑別に入ります。
膝そのものではなく、股関節周りの病気が膝の痛みとして感じられることもあります。腸腰筋の膿瘍や血腫、閉鎖孔のヘルニア、閉鎖神経の絞扼などがそれにあたり、股関節を伸ばすと痛みが強まる、太ももの内側にしびれがあるといった様子から気づくことがあります。
皮膚の病気が関節に及ぶこともあります。乾癬では皮疹より先に関節炎が出ることがあり、爪の変化が手がかりになります。血友病のある方では、繰り返す関節内出血によって変形性関節症のような変化が進むことがあります。子供では、風邪のあとに紫斑と関節痛を来すアレルギー性紫斑病もよく経験しますし、全身性エリテマトーデスでは骨は壊れないのに関節が変形するJaccoud関節症を来すことがあり、関節リウマチとの違いとして覚えています。
このほか、アミロイドーシスやアルカプトン尿症といった代謝性の病気、サルコイドーシス、末端肥大症、まれなErdheim-Chester病なども、膝の痛みの原因になることがあります。頻度は高くありませんが、通常の治療で改善しない膝の痛みでは、こうした病気も一度は頭に浮かべるようにしています。
| 分類 | 主な疾患・特徴 |
|---|---|
| 見逃せない急性疾患 | 化膿性膝関節炎、膝窩動脈急性閉塞 |
| 腫瘍性 | 白血病、転移性骨腫瘍(肺・乳房・前立腺が多い) |
| 血管性 | 膝窩動脈瘤、膝窩動脈捕捉症候群、深部静脈血栓症 |
| 関連痛 | 腸腰筋膿瘍・血腫、閉鎖孔ヘルニア、閉鎖神経絞扼 |
| 皮膚・自己免疫 | 乾癬性関節炎、アレルギー性紫斑病、SLE(Jaccoud関節症) |
| 血友病 | 反復する関節内出血 |
| 代謝性・その他 | アミロイドーシス、サルコイドーシス、末端肥大症 |
参考文献:Orthopedics 整形外科外来における他科疾患を見逃さないコツ 3.2017
参考:『リウマチ病学テキスト 改訂第3版』