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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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平成27年10月1日(木) 子供の骨折は大人と同じ?

 子供の骨折は大人の骨折とはまったく違うと考えてください。子供の骨折で特に難しいのは軟骨の損傷を伴いやすいことです。軟骨はレントゲンやCTではまったく写りません。超音波断層撮影やMRIで軟骨損傷の有無や程度を調べます。超音波では軟骨は基本的に水と同じように低信号として黒く写ります。超音波は軟骨表面の観察には優れていますが内部の亀裂等は分かりにくいです。MRIはその分解能は超音波より劣りますが全体像を俯瞰するように内部構造も含めて見ることが出来ます。

 子供の骨折の場合、レントゲンでは小さな骨折のように見えても実はその周りに大きな軟骨があり大きくずれているということもありますので注意が必要です。

 子供の骨折は基本的には保存的に治療しますが、手術が必要なケースもあります。軟骨の評価も含めて検討し治療方針を決めます。
 
 
平成27年10月2日(金) 睡眠時間は8時間がよい?

 なぜか睡眠障害の講演会で座長をする羽目になってただいま勉強中です。整形分野では痛みで眠れないということはよく経験しますし、これは痛みをコントロールすれば解決します。純粋に眠れない人を診察することは基本的にはありません。

 表題の睡眠時間ですが8時間睡眠に何ら根拠はありません。年齢の若い子供ほど睡眠時間が長く、年を取るとともに睡眠時間は短くなります。成人では25歳で7時間、45歳で6.5時間、65歳で6時間ほどになっています。また季節変動があり日が長くなると睡眠時間は短くなり、逆に短くなると睡眠時間は長くなります。さらに活動性が上がると睡眠時間は長くなる傾向にあります。

 個人差はありますが、8時間睡眠である必要は無くおよそ6-7時間睡眠で朝の目覚めがすっきりしていればよいとされています。(成人)
 
 
平成27年10月3日(土) 膝の引っかかり感と膝雑音

 膝の曲げ伸ばしで引っかかる感じが生じることがあります。これは骨軟骨損傷や半月板損傷などでよくみられます。特に深屈曲から伸展するときに引っかかり感と関節裂隙の後外側に自発痛が出現する場合は外側半月板の後節付着部で緩むことによりインピンジメントを起こしていることがあります。

 膝の雑音は腱や関節支持帯、骨軟骨、半月板などの障害で起こります。多くは雑音はあっても痛みが無いか、もしくはそれほど強くないことがほとんどです。疼痛がある場合や弾発膝となっている場合は治療が必要です。

 弾発膝とは半月板や関節内遊離体が関節に挟まって曲げていくと引っかかる感じがしてがくんとなってその後すっと曲がる現象を言います。

 *注 弾発股は股関節を動かすと「ボコ」と音がする現象を言います。股関節外側にある大腿筋膜張筋が大腿骨の大転子に引っかかるときに鳴ります。これは股関節周辺の筋肉や腱が硬くなって起こります。スポーツや股関節をよく曲げる仕事で起こります。治療は保存的に行います。保存的治療で改善しない場合は手術も考慮します。
 
平成27年10月4日(日)
 
平成27年10月5日(月) ファベラ症候群 Fabella Syndrome

 膝関節の外側後方にある外側腓腹筋の種子骨が大腿骨後外側顆と擦れて痛む病気と定義されています。正常変異として10-20%にみられます。特に10代前半に多いです。発症は緩徐で膝後外側に限局した痛みが出ます。診断補助として膝を伸展させると痛みを誘発します。

 使いすぎや腓腹筋の短縮で起こります。従って治療は運動量を抑えてストレッチや温熱治療などを行います。保存的治療で改善しない場合は手術を考慮します。 

 
平成27年10月6日(火) 睡眠障害2

 前々前回に引き続いて睡眠障害のお話を。睡眠障害の対応と治療ガイドラインによると、睡眠は強い朝日を浴びるとリセットされて15-16時間後に眠くなる。部屋の照明では光が弱くリセットされない。日曜日にじっくり寝るとリセットされるのが遅くなり寝る時間も遅くなり月曜日に睡眠不足になる。眠くなってから床につく。眠くないのに早く寝ようと電気を消して床につくと暗くて不安となり物音や考え事をして余計に寝られなくなる。

 コーヒー、お茶、コーラなどに入っているカフェインは利尿作用のほかに覚醒させる作用があり飲用後4時間ほど効果があるので入眠4時間前には控えることが望ましい。喫煙は行った直後より約1時間ニコチンが覚醒作用を持っているのでこれも控えた方が良いとあります。

 家にいることが多く光(太陽光)を浴びることが少ないと日照時間が短くなったのと同じであり身体は冬モードになり睡眠が浅く長くなります。秋から冬にかけて日長時間が短くなると食欲の増進、活動性の低下が起こるとされています。

 家でゴロゴロしているとお日様に当たることも無く、秋〜冬モードとなり食欲は進んで多食になり活動性も下がってどんどん肥満になるとも言えますね。
 
 
平成27年10月7日(水) Pellegrini-Stieda症候群

 膝関節の内側側副靭帯(MCL)を損傷後に過剰な可動域訓練を行うと発症することがあります。痛みが強く膝関節の拘縮を起こすことがあるので注意が必要です。レントゲンでMCL近位付着部周辺に骨化・石灰化像を認めます。治療は局所安静や骨代謝改善剤(ダイドロネルなど)を用います。改善しない場合、手術を考慮します。

 骨化性筋膜炎と同じように外傷を起点として骨化が起こるのだと思われます。特に早期に激しいリハビリをすると発症しやすいのではないかと考えます。やはり旧跡はしっかりと安静を保ち、徐々にリハビリを行っていくことが肝要と言えます。
 
 
平成27年10月8日(木) レントゲン撮影の限界

 骨傷でのレントゲンの有効性は言うまでもありませんが微少な骨折を描出するのは時として困難であり限界を感じることがあります。超音波診断が無かった頃は、レントゲンではっきりせずなおかつ痛みが強い場合はCTを撮影していました。

今は手軽に超音波診断が出来ますのでレントゲンで分からない骨折が見つかることがよくあります。もはや必須アイテムと言っても過言ではありません。特に肋骨骨折、手足の裂離骨折などは得意とするところです。やはり動画であらゆる角度からスキャンできるのはかなり有利です。

 これまでレントゲンのみで骨折が無いとされていたケースでも超音波で検査すると見つかることも十分あり得ます。レントゲンだけ撮影して『骨は大丈夫』というのは時代遅れと言えます。またレントゲンで骨折がはっきりしていても、血管や神経、筋肉の損傷程度を見ることも大切です。これらは超音波断層撮影で十分診断可能です。

 惜しむらくは、レントゲン診断に比べて超音波断層撮影の診断はかなりスキルが必要なことです。ちょっと勉強したぐらいでは読影困難であり医療機関や検者のレベルによって大きく診断能力の差が出ます。
 
 
平成27年10月9日(金) ある日突然胸が痛くなって・・・。

 高齢男性、左前胸部が痛くなったので内科を受診。内科では心臓の虚血性疾患を疑って心電図を取りましたが所見なし。整形外科の疾患ではないかと説明を受けたそうです。痛みは左前腕部まで広がって夜間眠れないほどとなり発症10日目に当院を受診されました。上半身を裸になってもらったところ、左胸部〜背部〜左上腕に赤くなった発疹が多数ありました。誰が見ても明らかな「帯状疱疹」でした。

 問題は発症してから10日経っていることです。帯状疱疹は特徴的な発疹が出るので診断は簡単ですが、発症早期は痛みだけしかないことも多く、翌日、翌々日から発疹がぽつぽつ出ることもよくあります。診断がついた時点で抗ヘルペスウイルス薬を投与するのですが、これは発症して早いほど悪化が防げますので10日経っているとどれほど効果があるのか難しいところです。
 
 
平成27年10月10日(土) 子供の睡眠

 生まれたばかりの赤ちゃんは3時間毎に授乳されまた三時間眠るというのを繰り返します。これは体内時計の働きがまだ十分でないためだそうです。体内時計は25時間周期になっていますが生後3-4ヶ月まではこの周期と一日24時間のずれを修正することが出来ずに一日一時間ずつ生活リズムがずれていきます。

 大人でも朝日を十分浴びないとリセットされないためにずれが生じていきます。日光浴は骨を丈夫にするビタミンDの活性化に必須です。最近、日焼けするのを嫌って乳幼児にも日焼け止めクリームを塗り、その結果、骨が十分形成されない「くる病」になるケースが増えています。子供は外で元気に遊ぶのが大切ですね。
 
平成27年10月11日(日)
平成27年10月12日(月) 体育の日
 
平成27年10月13日(火) 骨粗しょう症のお薬

 骨粗しょう症の治療薬としてよく使われるものとして活性化型ビタミンD3とビスフホスフォネート系があります。他にもビタミンK2、閉経後の女性に効果があるラロキシフェンも適時使用されます。重度の骨粗しょう症にはテリパラチド(副甲状腺ホルモンの活性部分)、モノクローナル抗体であるデノスマブが使われることもあります。

 ビタミンD3には、アルファカシドール、カルシトリオール、エルデカルシトールがあります。ビタミンDが欠乏するとII型筋繊維が萎縮し体幹の揺れが出ますが高齢者への活性型ビタミンD3を投与すると転倒を抑制します。またエルデカルシトールはより強力な骨量増加作用、椎体骨折抑制効果があります。副作用として血中高カルシウム血症に注意が必要です。

 ビスホスホネート系はエチドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸、イパンドロネート(静注のみ)があります。いずれも骨を破壊する破骨細胞に取り込まれるとアポトーシスを起こし骨吸収を抑制します。ビスホスフォネート系は経口接種では腸管からの吸収がかなり悪く、また一緒に飲む水にミネラルが含まれていると吸収されにくくなります。当然、食事も服用30分は水以外は控えることが必要です。加えて食道炎を起こしやすいので朝一番の空腹時に服用し30分は寝転ばずに身体を起こしておく必要があります。

 更にビスホスフォネート系は長期投与で大腿骨骨折や歯科治療時に顎骨壊死を起こすことがあります。歯科治療を受けられる場合は、投与三年未満は服用を継続したまま治療し、投与3年以上の場合は3ヶ月の休薬期間が推奨されています。

 ビスホスフォネートの投与期間に関して明確に示した学会の指針や合意はありませんが、3-5年で休薬期間を設けるかの判断をするのが良いとする意見があります。骨粗しょう症による椎体骨折などを起こしている重症例では継続を、中等例では投薬を継続するか検討、軽症例では休止するといった個々の判断が必要となってきます。

 活性型ビタミンD3とビスホスホネートを併用したり、休薬期間のみD3に切り替えるといった方法がとられることもあります。
 
 
平成27年10月14日(水) 腰痛診療ガイドライン2012

 このガイドラインによると重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折など)の合併を疑うべきred flags (危険信号)として以下を記載してます。しかしながら実際の臨床の場では参考になってもこの通りといかないですし、医療機関に訪れる患者さんはある程度症状が続いていたりしますので、画像診断等の検査を行う率は高いです。。

・発症年齢 <20歳 または>55歳
・時間や活動性に関係の無い腰痛
・胸部痛
・癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
・栄養不良
・体重減少
・広範囲に及ぶ神経症状
・構築性脊柱変形
・発熱

 危険信号の無いものは、4−6週間の保存的治療を推奨してます。また危険信号のあるものは画像診断や血液検査などを行うように推奨しています。 

 
平成27年10月15日(木) 梨状筋症候群

 梨状筋が坐骨神経を刺激して起こる一連の痛みや症状をいいます。スポーツ障害としても起こります。梨状筋と坐骨神経の関係は様々なバリエーションがあり、いずれも坐骨神経が圧迫されることによって絞扼症状が出ます。

 主に臀部の痛みとそこから下肢に放散する痛みやしびれです。ランニングや自転車など運動負荷をかけると痛みやしびれが出ます。

 診断は股関節を屈曲内旋すると症状が出ます。このとき骨盤を固定しないときだけ痛みが出る場合は仙腸関節の障害を疑います。また座位で股関節を強制的に外旋して痛みが出ます。

 梨状筋は仙骨と大腿骨の大転子についており股関節を外旋する作用があります。この筋肉が運動で肥大したり、老化やストレッチ不足で硬く短縮すると坐骨神経を圧迫します。

 運動の休止やストレッチ、消炎鎮痛剤などを組み合わせて治療します。
 
 
平成27年10月16日(金) 外傷後の関節可動域

 関節周りにケガをすると本来あった可動域が保たれずに曲がりにくくなったり伸びにくくなることがあります。これは、骨折等による関節の変形、皮膚の拘縮、軟部組織の癒着などが原因となります。可動域制限を起こさないように十分なケアを実施しますが、それでも起こるときは起こります。可動域訓練を十分に行い改善しない場合は手術を考慮することもあります。

 骨折や捻挫、靱帯損傷が起こるとなかなか元通りと言うわけには参りません。多少の腫れや変形は起こりうるので生活に支障があるかないかで総合的に判断すると良いでしょう。
 
 
平成27年10月17日(土) 椎間板変性とヘルニア

 椎間板はちょうどバームクーヘンに例えられます。バームクーヘンの真ん中に髄核というゼリー状の物が入っていると言うイメージです。椎間板の線維輪に当たる部分がバームクーヘンでありこの部分が年月とともに徐々に変性してくると破れて中身(髄核)が出てきます。椎体の前面は前縦靱帯が分厚くへばりついていますので、どうしても脆弱な後ろ側にヘルニアとなりやすいとされています。

 このようにドロッと髄核が出たケースでは、異物反応を起こして平均4ヶ月程度で吸収されることが分かっています。ただどの程度良くなるかはケースバイケースでなかなか変化の出ないこともあり、逆に髄核が更に出て悪化することもあります。

 基本的には保存的治療で症状は改善しますし手術をすることは滅多にありません。
 
平成27年10月18日(日)
 
平成27年10月19日(月) 椎間板ヘルニアと症状

 椎間板ヘルニアがあるから必ず痛むわけではありません。とは言えあれば痛む可能性は当然あります。同じように神経を押していても痛い時期と痛くない時期があり、これはその場所の炎症の程度により異なるとされています。ただし本当にそうなのかはよく分かっていません。経験的に2-3週間すると治ってきますし、痛み止めを一回服用しただけで治ることもあります。

 逆に強力な痛み止めでもまったく効かない、しかもそれほど画像診断上は大したヘルニアでは無いこともあります。もちろん椎間板ヘルニアだけでは無く、椎間孔の狭窄も最近ではクローズアップされて来ています。これらが合併したときは、更に症状は悪化すると考えられます。

 いずれにせよ多くの患者さんを診ていると同じ程度のヘルニアでも痛みの訴えに幅があります。その差はどこから来ているのか明確な説明を行なうことは出来ません。
 
 
平成27年10月20日(火) 上肢の疲労骨折

 疲労骨折はスポーツ障害としてよく起こります。体重がかかる下肢に多く見られます。なかでも足背の痛みが出る中足骨、脛骨がたびたび痛くなって来院されます。上肢でも繰り返して力が加わると疲労骨折を起こします。第一肋骨疲労骨折、有鈎骨鈎疲労骨折、肘頭疲労骨折、舟状骨疲労骨折が有名です。

 第一肋骨疲労骨折は斜角筋群が繰り返して収縮して起こります。ウエイトリフティング、野球、剣道、柔道、チアリーディング、新体操など上肢の挙上運動を繰り返すことによって発症します。この疲労骨折は頭の中に疲労骨折かも知れないと思うことが重要で、何も考えないと見逃してしまいます。遷延治癒や偽関節となると厄介です。症状は頸部から肩にかけての痛みです。頸部疾患や肩疾患と誤診されることが多いです。初期は運動を控えた保存的治療を行います。化骨が大きくなったり、偽関節になると腕神経叢を圧迫し筋力低下・萎縮、痛み、しびれなどが出ることがあります。保存的治療で効果が無い場合は、手術を考慮します。腕神経叢への圧迫が高度の場合は、第一肋骨切除術を行います。

 有鈎骨鈎疲労骨折はバット、竹刀、ゴルフクラブ、テニスなどのラケットの端が直接的に有鈎骨鈎を繰り返し圧迫して起こります。保存的治療は時間がかかり骨癒合しにくいので、手術的に骨片の摘出や骨接合術が行われます。

 肘頭疲労骨折は投球動作による障害です。骨端線閉鎖前は骨端線の離開、閉鎖不全となり、成長し骨端線が閉鎖した後は疲労骨折となります。治療は投球動作を禁止し、身体の固さを改善するストレッチなどを行います。

 舟状骨疲労骨折は手関節を背屈する動作を繰り返すことによって軸圧が加わり生じます。当初は痛みだけのことも多く、放置して偽関節になることも多いです。

 いずれの疲労骨折も初期症状は痛みのみで、レントゲン撮影では所見を認めないことが多いのでMRI、CTを行うか、経時的にレントゲン撮影を行うようにします。
 
 
平成27年10月21日(水) 肩こりと肩こり様症状

 肩こりは日本語特有の表現で西洋では肩こりをうまく表す言葉は無いと言われています。neck stiffness(頸が硬くなっている状態)という言葉が使われますが、これも肩こりとは少しニュアンスが異なるようです。

 さて純粋な意味での肩こりは肩周辺の筋肉(僧帽筋等)がストレスなどにより過剰に緊張して筋肉内の循環障害を起こしそれにより老廃物や痛みを引き起こす物質が蓄積するために生じると言われています。このようなケースでは該当する筋肉を動かすことに症状は改善します。とは言えストレスの多い生活をしていると再び凝ってきます。
 肩こり様症状とはいわゆる肩こり症ではなく他の病気で肩こりのような症状を起こす場合を言います。これは原因疾患がありますのでそれをきちんと鑑別しないといけません。

 純粋な肩こりと他の疾患で引き起こされる肩こり様症状は基本的には同じ症状ですので、肩こりを訴えられる場合は必ず肩こり様の症状を引き起こす疾患を除外診断しなければなりません。肩が凝っているので単純に肩こりだと考えるのは間違っています。一番怖いのはやはり肺尖部の癌です。これも同様に肩こりや上胸部の痛みを起こすことがありますので注意が必要です。
 
 
平成27年10月22日(木) 股関節のスポーツ外傷・障害 その1

 股関節周辺のスポーツ外傷としては、大腿直筋損傷、上前腸骨棘裂離骨折、下前腸骨棘裂離骨折、内転筋損傷、ハムストリング損傷があります。スポーツ障害としては、大腿骨頚部疲労骨折、弾発股、腸腰筋スナッピング、腸脛靱帯炎、内転筋炎、恥骨結合炎、ハムストリング腱付着部炎があります。外傷、障害いずれにも該当するのが大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)としています。(こどものスポーツ外来 P186)
 
平成27年10月23日(金) 股関節のスポーツ外傷・障害 その2

 FAIはpincer タイプとcamタイプとがあります。いずれも出っ張りにより関節がインピンジメントを起こし可動域の制限や痛みが出ることがあります。保存的な治療で改善しない場合は手術を考慮します。


 大腿骨頚部疲労骨折はまれですがハイレベルのアスリートで起こりやすいです。初期ではレントゲンには所見が無いことがほとんどで症状によりMRIなどで精査します。レントゲンで上から下まで骨折線がつながっている場合は手術療法を考慮します。内側での疲労骨折は圧迫型疲労骨折、外側は牽引型疲労骨折となります。

 弾発股には外側型と内側型があり、内側型は腸腰筋スナッピングといい腸腰筋が股関節の前面を通るときに骨の出っ張りに擦れて起こります。股関節を屈曲し外転外旋を行うとゴリっと擦れてスナッピングし痛みが誘発されます。外側型が腸脛靱帯が大転子に擦れて症状を起こします。いずれも運動を控えて消炎鎮痛剤やストレッチなどの保存的治療をまず行います。改善しない場合は手術療法を考慮します。

 
 
平成27年10月24日(土) 股関節のスポーツ外傷・障害 その3

 大腿直筋損傷、付着部炎はサッカーなどインステップ系のキックで起こりやすいです。肉離れや付着部の炎症、場合により小児の場合は骨端線損傷により離開することがあります。骨端線離開は1センチ未満は保存的治療を行います。離開が1センチ以上の場合は手術を考慮します。

 股関節外転筋群の障害としてオーバーユースによる筋筋膜炎があります。外転筋の付着部である大転子に強い圧痛を認めます。
 
平成27年10月25日(日)
 
平成27年10月26日(月) 股関節のスポーツ外傷・障害 その4

 大転子疼痛症候群(greater trochanteric pain syndrome ; GTPS)とは大転子に付着する様々な筋肉(外転作用として中殿筋、小殿筋、外旋筋として方形筋、梨状筋)、また大転子上を通る筋肉(大腿筋膜張筋、大臀筋、)や滑液包などが炎症を起こして大転子周辺に圧痛が生じる疾患です。MRIでT2強調像で高信号を認めることがあります。治療は局所の安静とストレッチ、特に体幹のバランスや姿勢異常があればこれを矯正します。
 
 
平成27年10月27日(火) 足関節内果疲労骨折

 足の疲労骨折は足関節内果、舟状骨、踵骨、第5中足骨基部、2−4中足骨骨幹部、第1MTP種子骨、母趾基節骨などに起こりやすいです。

 疲労骨折ははっきりした受傷機転が無く徐々に痛んできます。疲労骨折部は腫れていたり押さえると痛みがでます。昔は行軍で起こることもありましたが、今はアスリートが中心です。

 疲労骨折になる人は基本的に頑張り屋さんで一所懸命に運動に取り組んでいる場合がほとんどです。運動を続けたいために無理をすると悪化します。

 足関節内果骨折は足関節の腫れや痛みが出ます。レントゲン(前方に向かう斜骨折が特徴)では早期の場合、所見が無いこともありますので疑われる時はMRIを行います。スポーツ復帰までは保存的治療で4-5ヶ月、手術療法で2-3ヶ月かかりますので早期復帰を望む場合は手術を選択します。(内固定材はスポーツ活動をする限り抜釘しないのが原則)また遷延治癒や偽関節になった場合も手術を考慮します。

 
 
平成27年10月28日(水) 特発性膝関節血症

 高齢者で誘因無く発症する膝関節の血腫は原因の明らかで無いものと外側半月板断裂に起因するものがあります。鑑別診断として色素性絨毛結節性滑膜炎(PVS;pigmented villonodular synovitis)が挙げられます。PVSはMRIで関節内に結節性の病変を認めます。PVSは造影MRIで広がりが分かります。ただし炎症を繰り返す滑膜炎でも肥厚してくるので鑑別診断は最終的には病理診断を行う必要があります。後天性血友病の可能性に注意します。後天性血友病;APTTが低下、後天性血友病XIII:13因子の欠損でAPTTは低下しません。
 
 
平成27年10月29日(木)  梨状筋症候群2

 臀部から下肢にかけて坐骨神経様の痛みが出る場合、腰から神経障害が生じているのか、それともより末梢の神経障害かを見極める必要があります。坐骨神経痛を訴える患者の6%に梨状筋症候群がみられます。梨状筋症候群は基本的には腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症を除外診断します。梨状筋症候群の診断が難しいのはしっかりとした除外診断を行う必要があることとそもそもこの病気を念頭に置いておかないと見逃してしまうことです。

 股関節を他動的に内旋させるテスト(Treiberg徴候)、座位で股関節を抵抗下に外転させるPace徴候、患肢を上にした側臥位で下肢を外転するBeatty徴候などの徒手検査も有効です。

 検査は腰椎〜骨盤部のレントゲンに加えて必要に応じてMRIを行います。腰椎にヘルニアや狭窄症が無く上述の徒手検査が陽性であれば梨状筋症候群に確度は高くなります。逆にMRIで所見があれば、それと合致する症状が出ているかで判断します。
 
 
平成27年10月30日(金) 肩関節周囲炎

 いわゆる四十肩、五十肩と昔から言われている病気で、肩関節やその周辺の痛みと可動域制限が出てきます。原因は局所の動脈硬化説が有力ですが本当のところは分かっていません。炎症の結果、関節包〜筋膜〜滑液包に癒着が起こり動きにくくなります。

 この癒着は4-5年すれば治るとも言われていますが、そのまま筋肉も萎縮して恒常的に拘縮した状態が続くこともありますので基本的にはしっかりリハビリを行って治す方がよいと思います。

 鑑別疾患としては骨の腫瘍性病変や炎症、ローテーターカフのインピンジメントや断裂、石灰沈着性肩腱板炎、上腕二頭筋長頭筋腱炎などがあります。そのうち治るだろうと放置すると拘縮が強くなりなかなか元に戻らないこともありますので注意が必要です。

 平均寿命が短かった江戸時代では五十肩は長寿の印としてお祝いされたそうです。長寿化した現代では有り難いことではありませんが・・・。
 
 
平成27年10月31日(土)
 脊椎圧迫骨折

 脊椎の圧迫骨折は骨粗しょう症のある高齢者や大きな外力(落下、飛び降りなど)が加わった若者に起こります。いずれにせよ、脊椎の椎体が潰れてきます。多いのは胸腰椎移行部でそのほか胸椎〜腰椎のいずれでも起こりえます。

 圧迫骨折の痛みの程度は様々で少し痛むものから動けないものまであります。ですから痛みが少ないから大丈夫ということではありません。治療は安静が基本です。通常、骨折が治ってくるのに2ヶ月かかりますのでフレームコルセットなどを装着して安静を保ちます。ここで無理をすると偽関節になったり遷延治癒や破裂骨折が移動して後ろにある脊椎神経を圧迫して麻痺を起こすことがあります。

 通常は2-3ヶ月のコルセット装着を指示します。高齢の場合は3ヶ月の装着が良いでしょう。また骨粗しょう症がある場合は並行して治療します。