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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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平成27年12月1日(火) 胸肋症候群 coststernal syndrome

 胸肋症候群は打撲や胸郭の運動などによる鈍的損傷が胸肋関節に起こって痛みを生じます。時に亜脱臼や脱臼を起こします。胸肋関節には骨関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、Reiter症候群また胸腺癌、転移性悪性腫瘍でも痛み、腫れ、炎症が起こります。単純レントゲン撮影に加えて病状によってはMRI、CTなどの精査を行います。

 治療は消炎鎮痛剤、理学療法、胸部固定帯などを行います。

<その他の鑑別を要する疾患>

 *Tietze症候群:ウイルス感染にともなう上部肋軟骨の痛みと腫脹、多くは自然治癒
 *肋軟骨炎:片側の第2-第5肋軟骨に起こる炎症で深呼吸等で痛み、治療は消炎鎮痛剤
 *肋間神経痛
 *SAPHO症候群:Synovitis(滑膜炎)、Acne(座瘡)、Pustulosis(膿疱症)、Hyperostosis(骨化症)、Osteitis(骨炎) 前胸部に無菌性の骨炎。鎖骨、第一肋骨に骨硬化と腫大。掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)合併
 *Mondor病:乳房と前胸壁の浅静脈の血栓症。原因として乳がんや肺がんのことがあるので注意
 
  
平成27年12月2日(水) 胸骨柄症候群 manubriosternal syndrome

 胸骨は上から胸骨柄、胸骨体、剣状突起の3つの骨で出来ています。胸骨柄と胸骨体は関節を形成していますが、線維性軟骨関節もしくは軟骨結合となっており可動性に乏しいです。ハンドル外傷などの強い力が働く場合や鈍的外傷で損傷します。脱臼や亜脱臼を起こすことがあります。

 骨関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、Reiter症候群また胸腺癌、転移性悪性腫瘍との鑑別が重要です。

 心原性の痛みと併発することもあるので注意が必要です。
 
 
平成27年12月3日(木) 糖尿病性体幹部神経障害 diabetic troncal neuropathy

 糖尿病患者のデルマトームに一致した体幹部、すなわち背中〜肋部〜脇腹にかけての肋間神経痛様の強い痛みと感覚鈍麻が生じます。6-12ヶ月で自然に回復することが多く、治療は対症療法となります。

 糖尿病の三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)のうち一番早く症状が出るのは神経障害です。この神経障害は単神経障害と多発神経障害に分かれます。

 単神経障害は急性と慢性に分けられます。急性は外眼筋麻痺(動眼神経麻痺を中心とした症状:眼瞼下垂、複視、眼球運動障害)、顔面神経麻痺、聴神経・前庭神経麻痺(難聴、めまい)、体幹部神経障害、外側大腿皮神経障害、腓骨神経障害などがあります。これらは神経への栄養血管が閉塞が関与していると言われていますが諸説あります。慢性は手根管症候群などの圧迫による障害が多く見られます。

 多発神経障害は糖尿病患者の多くが罹患しており、両下肢の足関節より遠位での激しいしびれや疼痛が生じます。これは遠位性軸索障害によるもので、足関節より近位に症状が出ることはかなり進行しないと起こらない。また上肢に症状が出るのはかなり進行した時となります。

 注:単神経障害が複数同時に侵されるものを多巣性神経障害(多発単神経性)といいます。
  

平成27年12月4日(金) 糖尿病性神経障害

 糖尿病は血中の高血糖がいろいろな障害を引き起こします。高血糖による神経障害は軸索の長い末梢神経ほど障害されます。末梢神経には痛みを感じる「感覚神経」、筋肉を動かす「運動神経」、心臓や胃腸といった内臓の動きや血圧体温を調整する「自律神経」の三種類があります。

 糖尿病の治療が不十分ですとこれらの神経に障害が出てきます。

 初期症状としては、両側の足先がしびれる、足が冷える(熱くなる)、手足の感覚が鈍くなる、足の裏に何かがへばりついた感じがする、虫が這ったような感じ、神経痛(坐骨神経痛、上肢の神経痛、肋間神経痛)、足がつるといったことが起こります。

 <神経障害の症状>

 外眼筋麻痺、顔面神経麻痺、発汗障害(味覚発汗:酸っぱいものを食べると顔や首に汗が出る)、心血管障害(起立性低血圧、無痛性心筋梗塞、頻脈、心拍変動減少・消失)、消化管(食道運動障害、胃排出能低下、便秘、下痢、胆嚢収縮能低下)、泌尿生殖器(排尿障害、膀胱尿管逆流、勃起障害)、こむらがえり、無自覚性低血糖(血糖降下剤を使用している人で低血糖の症状が出ずにいきなり意識を失う)、手足(しびれ、痛み、潰瘍、壊疽、足が熱い・冷える、足裏に紙が貼ってる感覚、砂利の上を歩く感じ、無発汗)

 参考図書 糖尿病性神経障害 日本臨床内科医会
 
 
平成27年12月5日(土) Tietze症候群

 40歳代の女性に多く起こる病気で第2第3肋軟骨の腫脹と痛みが生じます。痛みは強く寝られないことや手や肩に放散することもあります。無菌性の肋軟骨炎で原因は分かっていませんが、上気道炎などのウイルス感染と関連していることもあるようです。激しい咳や重労働でも起こります。他の重大な疾患との鑑別が重要です。症状は数週間から数ヶ月続きます。治療は対症療法となり徐々に改善していきます。
 
平成27年12月6日(日)
 
平成27年12月7日(月) Precordial catch 症候群

 どの年齢でも起こりますが子供や若年者に多く胸部に鋭く刺すような痛みが30秒〜3分持続します。痛みのために浅い呼吸となります。胸壁の痛みですが心臓疾患などとの鑑別が必要です。しばしば、深いソファーに座っていると起こることがあるとされています。

 治療は痛みが始まったら深く息を吸うようにします。特に薬物治療は必要ありません。
 
 
平成27年12月8日(火) 肋骨骨折

 肋骨はペラペラのヘラぐらいの厚さしかないので簡単に折れてしまいます。一番重要なのは肺に刺さって気胸や血胸を起こしていないか、また多発性の肋骨骨折で奇異呼吸(フレイルチェスト)が起こっていないか十分チェックします。

 以前読んだ専門書では肋骨骨折で固定帯を使用する施設は約半数でした。何も巻かずとも通常は治ります。痛みが強い場合は固定帯を装着しますが、低換気→、無気肺→肺炎と悪循環となることがありますので注意が必要です。呼吸機能の落ちている高齢者には固定帯を使用を控える方が良いと思います。
  
 
平成27年12月9日(水) 帯状疱疹

 四肢や体幹部の痛みがあると整形外科を受診されますが、そのなかに帯状疱疹で痛みが生じていることがあります。帯状疱疹は文字通り帯びのように発疹ができる病気です。末梢神経に沿って出ますのでそのようになります。原因は水疱瘡を起こすヘルペスウイルスが再度増殖してくることによります。

 今は抗ヘルペスウイルス薬がありますので発症早期に使用すれば、早めに治療できます。問題は、診断です。痛みがあるところをしっかりまず直接見ることが大切です。初期には痛みが先行し発疹が無いこともありますのでしっかりそのことを伝え経過観察をこまめにします。発疹が出たらただちに投薬を行います。

 それでも数%に痛みの後遺症が残ります。そういうことも最初にしっかり伝えておく必要があります。
 
 
平成27年12月10日(木) 糖尿病性神経障害2

 豊田らによる糖尿病合併症の調査(1998年東北地方33,000例)によると糖尿病性神経障害27%、糖尿病性網膜症24%、糖尿病性腎症20%、虚血性心疾患8%でした。神経障害の症状別発現率は、上下肢のしびれ、痛み、冷感・ほてり、便秘・下痢がそれぞれ約30%、こむら返り25%、排尿障害21%、立ちくらみ19%、感覚鈍麻11%でした。神経障害の各症状の発現頻度は糖尿病の罹病期間が長いほど、またHbA1cが高いほど増加した。血糖コントロールが合併症の発現頻度に大きく影響します。

 アキレス腱反射と振動覚異常の頻度が高く、診断に有効です。(いずれも低下、消失するアキレス腱反射の異常は下肢の症状(しびれ、異常感覚、感覚低下、疼痛、それぞれの頻度と比較)より発現頻度が高かった。

 <糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準(豊田ら)>

 必須項目 以下の2項目を満たす
 1.糖尿病が存在する
 2.糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる

 条件項目 以下の3項目のうち2項目を満たす場合を「神経障害あり」とする。
 1.糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状(下肢)
 2.両側アキレス腱反射の低下あるいは消失
 3.両側足関節内顆振動覚低下
 
 
平成27年12月11日(金) 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー/多巣性運動性ニューロパチー Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy

 国から難病指定。末梢神経のミエリン鞘に対する自己免疫疾患であり多発性硬化症を合併することがあります。「2ヶ月以上にわたる慢性進行性 あるいは階段性、再発性の左右対称性の四肢の遠位、近位筋の筋力低下・感覚障害を主徴した原因不明の末梢神経疾患」と定義されています。末梢神経の生検で脱髄所見とonion-bulb像を認めます。

 脱髄性多発根神経炎(ギラン・バレー症候群)は数日〜約一週間以内に発症するのに対して、緩徐に進行、再発、再燃を繰り返します。
治療はステロイド療法、血液浄化療法、免疫グロブリン静注療法など。

<診断基準> (難病情報センターより抜粋)

1.主要項目
(1)発症と経過
@2 ヶ月以上の経過の、寛解・増悪を繰り返すか、慢性進行性の経過をとる多発ニューロパチーである。
A当該患者の多発ニューロパチーを説明できる明らかな基礎疾患、薬物使用、毒物への暴露がなく、類似疾 患の遺伝歴がない。
(2)検査所見
@末梢神経伝導検査で、2 本以上の運動神経において、脱髄を示唆する所見を示す。※注1
A脳脊髄液検査で、蛋白増加をみとめ、細胞数は 10/mm3 未満である。
B免疫グロブリン大量療法、副腎皮質ステロイド薬、血液浄化療法、その他の免疫療法などにより改善を示し た病歴がある。
CMRI で神経根あるいは馬尾の肥厚または造影所見がある。
D末梢神経生検で脱髄を示唆する所見がある。
2.鑑別診断
(1)全身性疾患等による末梢神経障害 糖尿病、アミロイドーシス、膠原病、血管炎、悪性腫瘍、多発性骨髄腫、中枢神経系脱髄疾患、HIV 感染症、サルコイドーシス
(2)末梢神経障害を起こす薬物への暴露
(3)末梢神経障害を起こす毒物への暴露
(4)末梢神経障害を起こす遺伝性疾患
3.診断の判定
(1)@Aならびに(2)@のすべてを満たし、(2)AからDのうちいずれか1つを満たすもの。
注.2 本以上の運動神経で、脱髄を示唆する所見(@伝導速度の低下、A伝導ブロックまたは時間的分散の存在、B遠位潜時の延長、CF 波欠如または最短潜時の延長の少なくともひとつ)がみられることを記載した神経伝導検査レポートまたはそれと同内容の文書の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付すること
 
 
平成27年12月12日(土) こむらがえり(筋クランプ、有痛性筋痙攣)

 こむらがえりは漢字では「腓(こむら)」返りと書き腓腹筋のけいれん起こす状態を指します。有痛性筋痙攣(いわゆるこむらがえり)は筋肉が過剰に収縮して自力では元に戻らない状態でありどの筋肉でも起こりえます。健常者でも運動をし過ぎたり、水泳などで冷えたりすると起こることがあります。さらに疾患によってはこむら返りを引き起こしやすいものがあります。

 <こむらがえり(有痛性筋痙攣)が起こりやすい疾患>

 1.健常者:夜型、激しい運動中・後、妊娠後期
 2.脊髄・中枢神経疾患:テタヌス、stiffman症候群、運動ニューロン疾患、全身こむら返り病
 3.末梢神経障害:多発性ニューロパチー
 4.筋疾患:糖尿病、脂質代謝異常によるミオパチー、AMPdeaminase欠損症、、ミトコンドリアミオパチー、甲状腺中毒ミオパチー
 5.その他:肝硬変、透析患者、水・電解質代障害(脱水、下痢、利尿薬、低ナトリウム血症など)、アルコール、Addison病、癌、胃切除後
 6.薬剤性:β刺激薬、β遮断薬、Ca拮抗剤、H2受容体拮抗薬など
 7.家族性:常染色体優性、X染色体劣性
 
 治療方針は原因疾患を探索しそれに対する治療を行うのが原則です。まず低Ca血症、低Mg血症、腎不全、肝硬変、糖尿病、甲状腺機能低下症などの代謝異常を検索します。

 神経疾患の有無を探るために、筋力低下・筋萎縮、感覚障害、腱反射の低下をチェックし筋線維束性収縮などに注意します。筋電図で異常放電の有無も有用です。

 健常者における夜間のこむら返りは発症時にはクランプを起こしている筋を伸ばすようにします。日頃から軽くストレッチしておく方が良いでしょう。

 薬としては芍薬甘草湯が即効性があり有効です。ただし連用すると低カリウム血症を起こすことがあるので副作用症状が出ていないかどうか、また定期的に血液検査が必要です。

 頻回に起こる場合は、中枢性筋弛緩薬(ミオナール、テルネリン)を使用します。
 
平成27年12月13日(日) 
 
平成27年12月14日(月) 糖尿病性神経障害3

 糖尿病で起こる神経障害は多発性神経障害であることが一番多く、遠位対称性感覚・運動神経障害を起こし大抵は自律神経障害と並行して進行します。下肢のしびれ、感覚低下、痛みなどが生じ悪化していきます。自律神経障害は心臓調律の異常、発汗異常、起立性低血圧、下痢、便秘、勃起不全などを起こします。

 糖尿病で高血糖となったとき、または治療後に多発性神経障害の症状がでることがあります。高血糖時の症状(四肢のしびれ、痛み、感覚障害)は是正とともに改善します。治療後有痛性神経障害は急速な高血糖の是正を行った場合に起こることがあり、低血糖誘導後数日から数週間後に急激で激烈な痛み、すなわち下肢から体幹部〜全身におよぶぴりぴり感、じんじんする痛み、電撃痛が生じます。夜間に悪化し、不眠、食欲低下、鬱状態となることがあります。

 参考:糖尿病神経障害の新知識 豊田ら
 
  
平成27年12月15日(火)  糖尿病性神経障害4 

 豊田らの著書によると糖尿病による多発神経障害か否かの鑑別は要約すると、他に該当する疾患がないこと、両足で症状がある、上肢だけの症状でないこと、左右差が強くないこと、感覚低下が乏しいこと、糖尿病のコントロールに問題がない、姿勢によって症状が変わらないなどが挙げられます。

 糖尿病多発神経障害の症状とそれに合致しない徴候

1.糖尿病多発神経障害を考えさせる症状

 1)陽性症状(陽性とは有症状のこと)
   両側足趾から始まる感覚異常(ぴりぴり、じんじん、びりびり、ざらざらなど)
   両側足先の痛み(何かに触れたり触って強く感じる痛み、痛みや刺激に敏感)

 2)陰性所見(患者は通常訴えない)
   両側足趾先から始まる感覚鈍麻

2.糖尿病性多発神経障害に合致しない徴候

 1)手や上肢だけの神経症状
   頸椎症、手根管症候群、肘部管症候群、後縦靭帯骨化症など、あるいは糖尿病性単神経麻痺
 2)左右差の強い非対称性の下肢神経症状
   脊椎疾患、中枢神経疾患、末梢血管障害、足根管症候群、腓骨神経麻痺、あるいは糖尿病性単神経麻痺
 3)感覚異常より筋力低下、筋萎縮が主症状
    ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、筋障害、筋炎などの神経筋疾患、甲状腺・副腎などの内分泌疾患
 4)病的反射を認める場合
    脳卒中、脊髄疾患、悪性腫瘍の中枢神経転移など
 5)血糖コントロール良好にもかかわらず神経障害が進行する場合
    慢性炎症性脱髄性多発神経炎、Crow-Fukase症候群、腫瘍随伴性神経障害など
 6)立位や歩行で症状増悪、臥位安静で軽快
    骨、関節、脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、閉塞性動脈硬化症
 7)急性発症の神経障害
    脳血管障害、帯状疱疹、脊髄動脈閉塞や感染症
 8)強い自律神経障害が主体のとき
    Shy-Drager症候群、Pandysautonomia、アミロイドーシスなど

3.病歴で鑑別すべきもの
 1)中毒性(有機溶剤、薬剤など)
 2)アルコール性
 3)尿毒症性
 4)癌性
 5)膠原病関連性
 6)遺伝性

   参考:糖尿病神経障害の新知識 豊田ら P60 表15より
 
 
平成27年12月16日(水) 有痛性三角骨

 足関節の後方に痛みが生じます。特徴は足関節を下方に伸ばすと痛みが生じます。クラシックバレーやサッカー選手に多くみられます。原因は足関節を構成する距骨後方に余剰骨として三角骨が伸展時に足関節上面の脛骨下面に衝突(インピンジメント)して痛みを生じます。

 三角骨の成因(副骨説、インピンジメント説、骨癒合症概説など)はよく分かっていませんが約10%の人にみられます。ほとんどが無症状で過伸展する運動をする人に痛みが生じることがあります。

 治療は局所の安静を中心に痛みが強ければシーネやギブスで固定します。生活指導としては伸展を制限するようにします。多くはこれで症状の改善をみますがどうしても痛みが続く場合は三角骨を取り除く手術をします。スポーツ復帰は術後およそ6週間です。

 鑑別としては距骨後突起骨折、アキレス腱付着部症(炎)、腓骨筋腱炎、長母指屈筋腱炎があります。
 
 
平成27年12月17日(木) 外傷性肩関節不安定症 traumatic unstable sholder (骨性bankart損傷、bankart損傷)

 外傷により肩関節が亜脱臼、脱臼をすると不安定性が残ることがあります。これは肩関節の上腕骨骨頭を受けている肩甲骨関節窩の関節唇や同部の骨が裂離して起こります。

 脱臼の機序から前方脱臼をすると関節唇の前側が剥がれます。これをbankart損傷と言います。関節唇を支えている骨が剥がれることを骨性bankart損傷と呼びます。

 診断はMRIやCTを行います。症状が強い場合は鏡視下に修復術を行います。
 
 
平成27年12月18日(金) 下肢の痛み・しびれを起こす疾患

 腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症・分離すべり症、腰椎変性すべり症、化膿性脊椎炎・脊椎カリエス、変性側弯症、骨粗しょう症に起因する腰椎椎体圧迫骨折(破裂骨折)、脊椎や骨盤の腫瘍、梨状筋症候群、婦人科疾患、内臓疾患、心因性、神経疾患、血管障害

 実際に診察に来られた方にはさまざまな疾患を鑑別する必要があります。坐骨神経痛は疾患名ではなく症状名ですので坐骨神経領域の痛みがでる場合は何が原因となっているかを明らかにして治療方針を立てなければなりません。
 
 
平成27年12月19日(土)
 第一肋骨疲労骨折

 上肢の運動を繰り返すと第一肋骨が疲労骨折を起こします。ウエイトリフティング、野球、剣道、柔道、新体操、チアリーディングなど上肢を挙上する動作を繰り返す運動で起こりやすいです。症状は頸部から肩にかけての痛みを訴えます。また化骨が出来て膨らむと腕神経叢を圧迫して脱力やしびれが起こることがあります。

 治療は初期はスポーツ活動の制限をし局所の安静を保ちます。遷延した場合は低出6]3fh力パルス超音波療法(LIPUS)が効果的です。化骨が大きくなり腕神経叢への圧迫が高度の場合は切除手術も考慮します。
 
平成27年12月20日(日)
 
平成27年12月21日(月) 野球肘

 野球をしている少年の肘に起こりやすいスポーツ障害です。利き腕の投球を行う肘に痛みが出ます。障害の部位によって内側型(内側上顆障害、裂離骨折を含む)、外側型(上腕骨小頭の障害、離断性骨軟骨炎)に分けられます。

 内側型は予後は比較的良好で数週間の投球動作の休止で改善することが多い。慢性化している場合は数ヶ月掛かることもあります。

 外側型の上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎)は骨端線が閉鎖していないケースでは3ヶ月は保存療法を行います。修復は上腕骨小頭の外側から始まり中央へ移動します。外側が最低限でも修復されるのが重要です。レントゲンで小頭軟骨下骨の修復がされるまで徹底します。1-2ヶ月で痛みが改善し可動域もよくなりますが、ここで負荷を再開すると再び悪化しますので注意が必要です。

 外側型の手術適応は以下の通りです。すでに遊離体となっている、骨軟骨片が離断しかけている、3ヶ月の保存療法で修復傾向がないもの。

 
 
平成27年12月22日(火)
 開胸後疼痛症候群 Postthoracotomy Pain Syndrome

 開胸術後、周術期を越えて胸部に痛みを起こします。原因は、手術による肋間神経損傷、開胸器による肋骨骨折、牽引器による肋間神経直接の圧迫性神経障害、皮膚神経腫形成、肋骨脊椎関節での肋間神経過伸展などが挙げられます。深呼吸や、咳嗽、胸郭の動きなどにより疼痛が悪化します。

 治療は消炎鎮痛剤、局所ブロック注射などをおこないます。
 
平成27年12月23日(水) 天皇誕生日
 
平成27年12月24日(木) 肋椎関節症候群

 肋骨と椎体が成す関節の炎症です。背中の痛みが出ます。骨関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、Reiter病、強直性脊椎炎で起こりやすいです。また交通外傷や、鈍的外傷によっても起こります。心臓血管由来の痛みとの鑑別が必要です。
 
 
平成27年12月25日(金) 腸骨鼡径部痛症候群 Ilioinguinal Neuralgia

 鼠径ヘルニアの術後や鈍的外傷、骨盤手術中の損傷などで腸骨鼠径神経が圧迫されて起こる神経痛です。まれに自然発症します。鼠径部〜陰嚢上部(女性の場合は鼠径部〜恥丘・外陰唇)にかけて痛みと感覚障害が生じ、大腿上部に放散します。前屈姿勢を取ると症状が緩和します。鼠径部外側の腹横筋を貫いて鼠径管に入るところでTinel signを認めます。腸骨鼠径神経はL1神経より分枝しており一部Th12も混じていることがあります。

 治療は消炎鎮痛剤などで対症療法を行いますが、鼠径ヘルニア手術が原因の場合、特にパッチなどで絞扼されている時は手術を行い絞扼を解除します。
   
 
平成27年12月26日(土) 陰部大腿神経痛 Genitofemoral Neuralgia

 陰部大腿神経はL1,L2よりでて腸腰筋を通り陰部枝(鼠径管をとおり、女性は子宮円索と大陰唇へ、男性は精索とともに走行し精巣挙筋、陰嚢下部へ)と大腿枝(大腿動脈に沿い鼠径靱帯の下をくぐって大腿内側の感覚神経となる)に分かれます。原因としては鼠径部の鈍的外傷、鼠径ヘルニアの手術後に起こることが多く、まれに自然発症します。痛み止め、局所のブロックなどが行われます。
  
平成27年12月27日(日)
 
平成27年12月28日(月)
 広背筋症候群 Latissimus Dorsi Syndorome

 運動や仕事で上方に腕を伸ばす動作を繰り返して起こる広背筋の筋筋膜炎のことです。肩甲骨下方にある広背筋に圧痛点があり肩甲骨〜上肢〜環指・小指へと放散痛がでることがあります。治療は痛みの出る作業を控えること、消炎鎮痛剤やトリガーポイント注射が有効です。
 
 
平成27年12月29日(火)
 本日の診療は年内最終日。午前診(9-12時)のみです。

 一年間、ありがとうございました。

 今年はホームページのリニューアルに伴い10年ぶりに診療日記を再開しました。以前の日記は時事関連が多かったのですが今回は整形外科に関わることのみとしました。

 また新しく始めた「具合の悪いところからわかる整形外科疾患一覧」は間違いがないよう疾患を一つずつ調べなおして書き上げています。おかげで私自身もこれまで学んだこと経験したことを整理することが出来ました。

 さらに構想10年以上かけてようやく「運動器の超音波診断」のコーナーを開始しました。これは主に医師や臨床検査技師向けの内容となっています。ここ最近、四肢〜体幹部など運動器に関わる超音波診断は著しい進歩を遂げていますが、慣れない先生方にとっては何が写っているかも分かりにくく参考図書も数えるぐらいしかありません。

 旧来のレントゲンを撮影して「大丈夫!」という診療は通用しなくなってきています。学習する機会に恵まれていない先生方に少しでもお役に立てればと思っております。
 
 医療というものは長年にわたり先人が積み上げてものにほんの少し自分の経験を足したものではないかと思えるようになりました。常に感謝する気持ちをもって今後も診療を行いたいと思います。

 それではみなさん、よいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いたします。
 
平成27年12月30日(水) 休診
平成27年12月31日(木) 休診 年始は1月5日(火)より平常どおり診療いたします