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| 整形外科 外科 リハビリテーション科 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
肋間神経痛(Intercostal Neuralgia)肋間神経痛とは、胸の横から背中にかけて神経の通り道に沿って“刺す・電気が走る・焼けるような痛みが帯状に出現し、咳や深呼吸・体をひねる動作で増悪する神経痛です。 |
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| カテゴリ | 典型例 | 臨床的特徴 |
|---|---|---|
| 胸椎・脊椎性 | 胸椎椎間板ヘルニア、圧迫骨折後変形、変性すべり症、側弯症 | 体動・咳・深呼吸で痛みが誘発/デルマトーム一致/MRIで診断 |
| 胸郭・肋骨性 | 肋骨骨折、陳旧骨折の仮骨、肋軟骨炎、Tietze症候群 | 局所圧痛が顕著。Tietzeは腫脹が鑑別点 |
| 感染性 | 帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛 | 皮疹前疼痛が多い=見逃しやすい。重症化・慢性化しやすい |
| 代謝性・全身性 | 糖尿病性神経障害、栄養障害性末梢神経障害 | 両側性・慢性・他部位の神経症状を伴いがち |
| 腫瘍・胸腔内 | 肺腫瘍、胸膜腫瘍、肋骨腫瘍 | 夜間痛・体重減少・神経ブロック無効 → 要注意 |
発症様式:突然/受傷後/感染後/時間経過で悪化か
誘発要因:咳・姿勢・回旋・深呼吸
疼痛表現:刺す・焼ける・しびれる・電撃・締め付け
皮膚感覚:過敏/麻痺/冷感/熱感
胸部症状:呼吸困難・動悸・悪心の有無
肋骨間圧痛 → 肋間神経
仮骨の圧痛 → 陳旧骨折
傍脊柱筋圧痛 → 胸椎椎間板・椎間孔狭窄
棘突起叩打による放散痛 → 神経根症
皮膚の軽擦で激痛(brush allodynia) → PHNの特徴
| 検査 | 目的 | コメント |
|---|---|---|
| XP | 骨折・変形の確認 | 新旧骨折鑑別、仮骨過剰形成の評価 |
| CT | 微細骨折・石灰化・腫瘍 | 肋骨・肋軟骨・胸椎椎間孔の評価に優れる |
| MRI(最重要) | 神経根・椎間板・脊髄病変 | 神経性疼痛の原因検索の決定検査 |
| 神経ブロック診断 | 原因部位同定 | 痛み消失 → 責任神経の確定に極めて有用 |
NSAIDs・アセトアミノフェン
神経障害性疼痛治療薬
プレガバリン/ミロガバリン/ガバペンチン/アミトリプチリン/デュロキセチン
筋緊張対策
姿勢異常・胸郭可動域制限・呼吸筋の二次性緊張の改善
帯状疱疹 → 抗ウイルス薬を早期投与することでPHNへの移行を抑制
肋間神経ブロック
傍脊椎ブロック
胸椎硬膜外ブロック
→ 疼痛緩和・診断的意義・慢性化予防の三役を担う。
パルスRFA(神経変性を起こさない低侵襲焼灼)
帯状疱疹後神経痛に対する脊髄刺激療法(SCS)
| 原因 | 予後 |
|---|---|
| 肋骨骨折・肋軟骨炎 | 数週〜数か月で改善 |
| 胸椎椎間板ヘルニア | 変形・配列異常残存で再燃しやすい |
| 帯状疱疹 | 高齢者・糖尿病・皮疹前疼痛例で慢性化リスク増 |
| 圧迫骨折後変形 | 姿勢異常・荷重伝達異常により遷延しやすい |
皮疹のない帯状疱疹(zoster sine herpete) → 典型的皮疹がないまま神経痛のみ
神経ブロックで無効 → “原因が神経以外”を考慮
夜間痛・逐次悪化・体重減少 → 腫瘍性疾患の警告所見
急激発症と冷汗 → ACSを最優先で除外
肋間神経痛を疑う状況であっても、以下の疾患は見逃しが生命予後に直結するため、除外が最優先となる。
圧迫される/締め付けられる痛み
胸骨後部〜左胸部中心
左肩・上腕・顎・歯・背部への放散あり
| 項目 | ACS | 肋間神経痛 |
|---|---|---|
| 痛みの誘発 | 労作・寒冷・精神ストレス | 咳・深呼吸・回旋・姿勢 |
| 体位変化での変動 | 乏しい | 大きく変動 |
| 圧痛 | 原則なし | 神経走行に一致して陽性 |
冷汗・悪心・呼吸困難・倦怠感
バイタル不安定
高齢者・糖尿病では典型的胸痛を欠くことがある
心電図(ST変化・陰性T・異常Q)
心筋トロポニン
胸部X線で陰性でも除外不可
※疑えば救急対応
突然発症の激烈な裂ける痛み(tearing pain)
胸部 → 背部 → 腰へ移動することあり
(解離の進展を反映)
片側上肢の血圧差
意識障害・失神・脳虚血症状
下肢虚血(ABI低下)
大動脈雑音
背部への放散痛が強いため、しばしば整形外科初診となる。
痛みの強さ・急激性・全身不調が鍵。
造影CT(ゴールドスタンダード)
経食道心エコー(緊急時)
整形外科的胸痛と最も頻繁に鑑別が必要。
急激な呼吸困難・頻呼吸・胸痛・動悸
片側下肢腫脹・長時間座位・手術歴・妊娠が危険因子
S1Q3T3・Dダイマー上昇(※正常でも除外不可)
呼吸性胸痛(吸気で悪化)
発熱・咳・炎症反応陽性
聴診:胸膜摩擦音
若年・長身痩型男性に多い
突然の片側胸痛+呼吸苦
打診で過共鳴、呼吸音減弱
胸部XPで診断
深呼吸で悪化は共通だが
→ 肺疾患は呼吸困難・SpO₂低下・発熱・不整脈を伴いやすい
神経走行に一致した圧痛がある場合はむしろ肋間神経痛
しばしば右前胸部痛・心窩部痛 → 胸痛として受診する。
右季肋部痛〜右肩への関連痛
発熱・悪心・食後悪化・脂質摂取で誘発
Murphy徴候陽性
心窩部〜前胸部の鈍痛・焼ける痛み
食事・空腹・夜間で変動
胃酸抑制薬で軽快傾向
| 所見 | 消化器病変 | 肋間神経痛 |
|---|---|---|
| 姿勢で変化 | 少ない | 明確に変動 |
| 皮膚感覚異常 | なし | しびれ・アロディニアあり |
| 体幹回旋で誘発 | まれ | 典型 |
※鑑別の最重要ポイント:皮疹前疼痛(前駆痛)
皮膚症状が出る数日〜1週間前に、激しい肋間神経痛が出現
神経走行に沿った灼熱痛・電撃痛・表在過敏
微細な擦過刺激でも強い痛み(brush allodynia)
痛みが夜間増悪/非姿勢依存
感覚過敏>圧痛
NSAIDsが効きにくい
高齢者・糖尿病・免疫低下はリスク増
小水疱 → 膿疱 → 痂皮
皮疹はデルマトームに一致(正中を越えないことが多い)
皮疹治癒後も数か月〜数年の神経痛が残存する可能性
→ 抗ウイルス薬の早期治療が最も重要
| 所見 | 肋間神経痛らしい | 重篤疾患を強く疑う |
|---|---|---|
| 体幹回旋で増悪 | ○ | △ |
| 神経走行の圧痛 | ○ | ✕ |
| 皮膚感覚異常(アロディニア) | ○ | ✕ |
| 冷汗/息苦しさ/頻脈 | ✕ | ◎ |
| 夜間突然の激痛 | △ | ◎(大動脈解離・ACS) |
| 皮疹前の灼熱痛 | △ | ◎(帯状疱疹) |
| 発熱・咳・SpO₂低下 | ✕ | ◎(肺疾患) |
| 右季肋部痛・食後悪化 | ✕ | ◎(胆嚢・消化器) |