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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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平成28年3月1日(火) 子供の腰痛(腰椎分離症)

 酒巻らによるとMRIを用いた疫学調査において小中学生の二週間以上続く腰痛のうち45%が分離症であったと報告しています。
このように子供の腰痛のうちかなり高率に腰痛分離症が含まれており、放置するとすべり症を合併することもあるので注意が必要です。

 元来、分離症は先天性のものと考えられてきましたが、現在ではそのほとんどがスポーツによる疲労骨折が原因と言われています。(小学校低学年の分離症は遺伝性のものもあります。)疲労骨折ですので、早期に見つけた場合は、十分治癒する可能性もあります。早期発見には、腰痛を放置しないことと早期にMRIを行うことです。疲労骨折の変化は初期にはレントゲン撮影では十分描出されませんが、MRIでははっきりと映し出すことが出来ます。またCTによる検査も有効です。

 MRIにおける初期の変化は、pedicle(椎弓根部)の輝度変化が重要で、骨髄浮腫を起こしてくるのでT2強調、脂肪抑制T2強調で高信号が現れます。ごく初期はpedicleの腹側・尾側から生じます。

 大人とは異なり、レントゲンで明らかな分離症を認めてもMRIで輝度変化があれば、必ずしも終末期とか限らずMRIを行って治癒する可能性があるか調べるようにします。

 MRIで輝度変化があれば、CTによる精査を更に行います。これは早期診断にはMRIが必要ですが、分離部の進行度(初期、進行期、終末期)、骨癒合判定はCTで行います。

 治療ですが、初期・進行期はスポーツの中止、硬性体幹装具を装着します。治療期間は初期もので平均癒合期間が3ヶ月(癒合率94%)、進行期6ヶ月(癒合率64%)とされています。


 低信号(終末期)の場合は、痛み止めを使いながらスポーツ用の装具を装着してスポーツ復帰します。

 L4よりL5の方が治りにくい。また片側より両側の方が治りにくい。
 
 
平成28年3月2日(水)
 子供の腰痛2 すべり症

 子供の分離症のうち一部がすべり症を起こしてきます。(分離すべり症) すべり症を起こすか起こさないかは、骨年令によって異なります。

・腰椎の骨年令とすべり症の関係 

 Cartilaginous stage (C stage) 椎体と椎間板の間にある二次骨化核が骨化する前 5mm以上のすべり症に移行 80% ほとんどが小学生 分離症のstage関わらず硬性体幹装具

 Apophyseal stage (A stage) 成長軟骨が残存 すべり症に移行10% ほとんどが中学生 骨癒合をめざす 硬性装具の適応

 Epiphyseal stage (E stage) 椎体と癒合して成長が終了 すべり症への移行0% ほとんどが高校生 スポーツ用のライトブレース 

 *大人はすべて終末期(トップアスリートを除く)
 
 
平成28年3月3日(木)子供の肩関節脱臼

 初回脱臼の後、再脱臼する状態を反復性肩関節脱臼といいます。40歳以上の初回脱臼が反復性となるのが10%に対し、10歳代は80〜90%(文献により再脱臼率は異なりますがおよそ50〜80%)と言われています。いずれにせよかなりの高率で再脱臼することになります。

 成長期の初回脱臼は保存的治療で脱臼整復後、3週間の固定、その後、損傷した靱帯の強度が修復する3−4ヶ月は運動制限を行います。再脱臼(反復性肩関節脱臼)の根治をめざすのであれば手術療法を選択します。手術は鏡視下bankart修復術に加えて状に応じて腱板疎部の補強を追加します。
 
 
平成28年3月4日(金) 子供(小学生〜中学生)の身体的特徴

 子供は大人を縮小したものではありません。大人に向かって成長する過程にあり、骨、靱帯、腱付着部には軟骨成分が多くあります。これらは大人の骨に比べて脆弱で、その部分が力学的に破綻して裂離や変性などが起こります。また同じ暦の年齢でも骨年令や体格に幅があります。これらを勘案して治療に当たる必要があります。

 成長の過程で特に骨端線閉鎖前と骨端線閉鎖後では障害される部位、治療方針、予後も異なることがありますのでそれぞれに適した治療を選択する必要があります。
 
 
平成28年3月5日(土)
 骨端軟骨損傷 Salter-Harris分類

 小児は大人と違って骨端に軟骨が挟まっており、そこから骨が成長します。この骨端軟骨損傷を分類したものにSalter-Harris分類があります。骨端軟骨の損傷はレントゲンでは骨の間にある透明な隙間として描出されますので診断が難しいです。左右差があるかどうかが有力な手がかりとなります。レントゲンでは異常なくとも、骨端線に沿って圧痛があれば損傷と見なして治療をします。

 治療は転位が激しい場合は徒手整復後、ギプス固定を行います。

<Salter-Harris分類>
 I型 骨端線離開
 II型 骨端線離開し、対側の骨幹部に骨折線により三角形の骨片が生ず
 III型 骨端線を一部離開しそのまま骨端に向かって骨折する
 IV型 骨幹部から骨折し骨端線をまたいで骨端に達する骨折
 V型 骨端線の長軸方向への圧縮により挫滅が起こる

 I、IIは予後良好
 III,IV,Vは予後不良
 
平成28年3月6日(日)
 
平成28年3月7日(月)
 鼡径部痛症候群 groin pain syndrome

 アスリートに生じる鼡径部痛(ほかに下腹部痛、内転筋根部、睾丸後方、大腿直筋付け根)のことです。頑固な痛みで選手生命に影響することもあります。かつてはスポーツによる鼠径ヘルニアとして手術が行われてきましたが、最近ではヘルニアとは関係ないとして手術を行うことは無くなりました。

 未だに原因が分からず、また治療法も確立されていませんが、運動を休止すれば日常生活での痛みは改善します。

 診断はまず器質的な疾患の有無を調べます。鑑別診断として、肉離れ、裂離骨折、疲労骨折、変形性股関節症、ペルテス病などの股関節炎、股関節臼蓋形成不全、関節唇障害、FAIなど周辺で起こりうるものすべてが該当します。

 腸腰筋の挫傷が起こっていることもあるので抵抗をかけて股関節を屈曲したときに痛みが誘発される場合はMRIが有効です。腸腰筋損傷では運動の休止後、4-6週間かけて復帰します。

 該当するものが見つからない場合に鼡径部痛症候群と診断します。治療は運動量を調整を中心の体幹の機能、バランスの強化、関節可動域の改善をめざしてストレッチを行います。

 発症すると治療に難渋しますので、日頃、コンディションを常に整えておくこと、また捻挫等の外傷を庇ったまま運動を継続しないように心がけます。
 
 
平成28年3月8日(火)
 股関節のスポーツ障害(レイヤー別アプローチ)

 股関節は構造上、4つの層(レイヤー)で構成されています。その層別に疾患を考えると理解しやすい。

 レイヤー1:骨軟骨レイヤー(骨、軟骨)
  臼蓋形成不全、大腿骨寛骨臼の変形、動的なものとして大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)、大転子インピンジメント、下前腸骨棘インピンジメント
 レイヤー2:不活性レイヤー(関節唇、関節包、靱帯)
  股関節唇損傷
 レイヤー3:ダイナミックレイヤー(筋肉、腱)
  腸腰筋スナップ、弾発股、肉離れ、腱付着部の炎症・損傷
 レイヤー4:神経メカニカルレイヤー(神経、血管)
  
 
平成28年3月9日(水)
 臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)

 生まれつき股関節の臼蓋が浅い形成異常です。乳児の時にレントゲンや超音波で診断される「画像上の診断名」で、臨床的に問題となる症状はないとされています。

 スポーツ負荷などで臼蓋の縁に力がかかり、また大腿骨頭の扁平化でインピンジメントが生じると関節唇損傷や軟骨の分離がおこり、股関節痛の原因となります。

 症状のある臼蓋形成不全には約87%に股関節唇損傷が合併していると言われています。

 参考:子供のスポーツ外来
 
 
平成28年3月10日(木) 大腿骨頚部疲労骨折

 比較的まれ。軍人やアスリートなどがオーバーユースにより起こることがあります。初期はレントゲンで写りません。MRIが有効です。治療は転位の無い圧迫型(頚部の内側部分)は基本的に保存療法を行います。ベッド上安静から免荷歩行を行います。手術は、転位のある場合、上方から下方へ骨折線がつながっているケース、牽引型(頚部の上方部分)で内固定を行います。
 
 
平成28年3月11日(金) 下前腸骨棘インピンジメント

 大腿直筋の付着部である下前腸骨棘が膨隆すると、股関節の可動時に大腿骨頚部と衝突してインピンジメントを起こすことがあります。成長期に鍛錬したアスリートは下前腸骨棘が発達していることが多く、また裂離骨折を起こした後に膨隆するケースも見られます。

 症状は股関節を屈曲すると下前腸骨棘に疼痛が生じます。レントゲンでは下前腸骨棘が前下方に突出しています。

 保存治療はインピンジメントを起こさないように屈曲などを控えるようにします。改善しない場合は鏡視下に下前腸骨棘の除圧を行います。FAIの手術と一緒に行う例が多い。
 
 
平成28年3月12日(土) 腸腰筋スナッピング

 弾発股のうち内側型が腸腰筋スナッピングと呼ばれています。腸腰筋腱が股関節外旋外転するときに股関節前面の骨突出部で弾発します。

 診断は股関節を屈曲し外転外旋を行い下肢を伸展するときに股部内側にスナッピングが誘発されます。

 炎症が強い場合はMRIで画像所見を認めます。

 治療は原則としてほとんどが保存的に行います。痛み止め、股関節前面のストレッチ、体幹機能の調整などを行います。改善しない場合は鏡視下に腸腰筋腱を切離しますがパフォーマンスが落ちるので熟慮する必要があります。

平成28年3月13日(日)
 
平成28年3月14日(月) ATFL view (前距腓靱帯像)

 足関節の外側靱帯は前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯で構成されています。内がえし損傷となると多くの場合、まず前距腓靱帯が強く引っ張られて損傷し、場合によっては付着部の腓骨遠位端の裂離骨折を起こします。

 この裂離骨折は通常の正面側面2方向のレントゲンでは描出されにくく、ATFL view という特殊な撮影を行います。足底をカセットに対しつけ、足背を15°内反し45°底屈します。これにより前距腓靱帯の付着部に対し接線方向に撮影できますので裂離骨折が描出されやすくなります。
 
 
平成28年3月15日(火)
 距骨骨軟骨損傷

 足関節捻挫して4週間までの亜急性期では、約20%に骨軟骨損傷がみられます。足関節底屈・内がえしでは内側後方に、背屈・内がえしでは外側前方に損傷が起こりやすいです。後方病変の確認は底屈位正面像を追加します。
 
 
平成28年3月16日(水) 距骨骨軟骨損傷2

治療方針はBerndtらの分類により決めます。

<Berndtらの分類+軟骨下骨のう腫>

 stage1 軟骨下骨層の圧挫

 stage2 骨軟骨片不完全分離
 stage3 転位のない骨軟骨片完全分離
 stage4 転位のある骨軟骨片完全裂離
 stage5 軟骨下骨嚢胞を有するもの

 治療方針

 stage1,2と3の内側病変は約6週間のギブス固定
 stage3の外側病変、stage4は手術療法の適応

 手術療法の種類
 marrow stimulation technique
 骨軟骨片固定術
 自家骨軟骨移植術(OAT)
 自家培養軟骨移植術(ACI)

 *小児に対しては可能な範囲で鏡視下手術を行う。内側病変に対する逆行性ドリリングは軟骨が温存され、かつ骨端線も温存されるので有効な治療となっています。

 
平成28年3月17日(木) 間違いシリーズ1:骨折ってもっと痛くて腫れて歩けないor動かせないのでは?

 骨折でも痛みや腫れが少なく動かせたり歩行できたりすることがよくあります。その逆に骨折が無くとも動かせず歩けないこともあります。従って腫れた痛みや動作だけで判断するには極めて難しいと言えます。転倒して股関節や骨盤の骨折をしても普通に歩いて来られるます。もちろん動けないほど痛ければ病院に救急搬送されます。

 診断で折れてないことを証明するのはなかなか困難で、臨床所見と画像診断で明らかな骨折は見当たらないレベルが限界です。骨折の証明はあれば画像診断で比較的明瞭につけることが出来ます。ただし裂離骨折や急性塑型性変形など分かりにくいものもあり、レントゲン撮影に加えて超音波断層、MRI、CTなどの補助検査を追加します。


 また初回診察では明らかにならなかった骨折が後日、経過と共にずれが生じて分かることもあります。このあたりは経験がものを言うのですが骨折の可能性が否定できなければ骨折に準じた治療を行います。 

 
 
平成28年3月18日(金) 間違いシリーズ2:レントゲンで骨は大丈夫と言われましたが?

 レントゲン撮影は万能ではありません。昔はレントゲン撮影を行って「はい、大丈夫」なんていう治療がまかり通っていましたが、今では時代遅れとなっています。

 例えば、肋骨骨折の診断率はレントゲン65%、超音波85%、CT98%となっていますのでレントゲンではかなりの率が漏れてしまうことになります。

 この際、一番大切なのは画像診断では無く、医師が行う診察とその所見です。経験を積めば、診察だけでおよそ骨折しているかいないかは分かるようになります。その上で目星をつけた部位をレントゲンなどの補助検査を追加します。

 とは言え、症状や所見からどちらとも言えないケースもあります。またレントゲンで描出されないが極めて骨折の可能性が高い場合などは、超音波断層、MRI、CTを順次、追加します。

 もちろん何でもかんでも検査すると医療コストが膨大となりますので、必要な症例を選んで行います。この場合の必要とは骨折の有無によって治療方針が著しく変わる場合を意味します。
 
 
平成28年3月19日(土) 間違いシリーズ3:頚が痛いので枕を低くしましたが良くなりません


 頚椎は枕が無いと過剰に後屈して神経が引っ張られやすくなり、頸椎症などがある場合は更に症状が悪化します。従って枕の高さを調整する必要があります。

 上向きに寝てあごが少し引く程度になるのが程よい高さとされています。お試しください。

 うつぶせ寝ばかりという方もおられますが胸腰椎に対して頚椎がねじれますので悪化しやすいです。これは癖になっていることも多いの徐々に改善するようにしましょう。
 
平成28年3月20日(日) 春分の日
平成28年3月21日(月) 振替休日
 
平成28年3月22日(火)
 間違いシリーズ4 火傷やケガにアロエの葉を貼ったら悪化しました

 これも典型的な失敗です。アロエの効能はさておき、植わった葉には菌がいっぱい付いています。少々洗っても落ちませんので、これを傷に貼ったりするとばい菌が入って蜂窩織炎などの感染症を起こします。当院でもよく間違った治療をして更に悪化して来られます。

 火傷やケガはまず水道水などで良く洗浄してください。火傷の場合は10-15分冷却も兼ねて行います。傷の中や周辺の雑菌を良く洗い流してから治療すると効果的です 
 
平成28年3月23日(水) 間違いシリーズ5 肩こりだと思っていたら違う病気でした。

 肩こりとは肩の筋肉がストレスや運動不足、過度の緊張などにより血行障害を起こして筋肉が固くなりいわゆる凝った感じを引き起こします。このメカニズムはよく分かっていない部分もあり、また日本以外では肩こりという概念自体が無い国も多いと言われています。

 ではなぜ日本だけ肩が凝るのか?それは分かりません。肩が凝るというのは日本語として独特の言い回しだと考えています。

 肩こり様の症状を引き起こす重大な病気の1つに「肺尖部腫瘍」があります。有名なのは肺の一番上部の肺尖部にがんが生じて起こるもので、パンコースト腫瘍と呼ばれます。これは進行すると肩こり、痛みを発症し、更には腕神経叢に浸潤して上肢のしびれ、麻痺を引き起こします。

 また肩こりだと思っていると肺炎、気胸、胸膜炎などが起こっていることもあります。頚椎の疾患全般で同様に肩こり症状がでることがあります。従って肩こりだと侮らずしっかりとした診断・治療をお勧めします。
 
 
平成28年3月24日(木) 間違いシリーズ6 腰が急に痛くなったので慌てて体操したら余計に痛くなりました。

 腰が急に痛くなることは誰にでも起こります。そのとき「やっぱり運動不足」なんだと思い突然、ストレッチや筋トレを始められる方があります。その結果、更に痛くなって来られるわけですが、急性期の痛みが起こっている時は、原則、安静が重要です。もちろんべったり臥床安静ではなく、「ゴロゴロ」痛みの強くならない範囲で生活をします。この急性の腰痛症の中には、膵炎、尿管結石、腹部大動脈瘤、癌などの内臓疾患もありますので、きちんと医療機関を受診するようにしてください。一般的に内臓疾患は体位によって痛みが変化せず、安静にしていても痛みが強く出たりします。もちろん例外もあるのでややこしいのですが。

 いずれにせよ、今まで感じたことの無い痛み、脂汗や冷や汗が出る、安静にしても痛みが続くような場合はただちに診察が必要です。無理に自力で動かず、場合によっては救急搬送を選択すべきです。
  
 
平成28年3月25日(金) 足関節骨端線損傷

 骨端線とは小児期に骨が伸びるためにある成長軟骨のことです。レントゲンで線状に写るのでそのように呼ばれています。周辺の骨に比べて力学的に弱いために外力が加わると骨より損傷しやすい。

 足関節の骨端線は、脛骨で17才、腓骨で16才頃に閉鎖します。足関節を捻ると腓骨や脛骨の骨端線(成長軟骨)が損傷して解離します。骨端線損傷は片側だけみると分かりませんで必ず左右を撮影して比較します。撮影で左右差が無くとも、損傷していることがありますので、圧痛などの臨床所見が大切です。大きな転位が無いもの(2mm以下)は下腿から中足部までギブス固定を4週間行います。

 実際には多くの症例で手術が必要で、全身麻酔下で徒手整復を試みます。転位が2mm以下になればKirschner鋼線にて固定します。このとき骨端線を通過しないように心がけます。ただし必要な場合は躊躇しないことが肝要です。通常、プレート固定は不要です。
 
 
平成28年3月26日(土) 陳旧性足関節外側靱帯損傷

 外側靱帯損傷は足関節の内がえしが強制されて起こります。陳旧性とは放置や不適切な治療で裂離骨折や損傷靱帯がきちんと治らなかった状態をいいます。裂離骨折の骨片はレントゲンで癒合していなくとも線維性の結合で安定していることが多いので実際に不安定性があるかどうかが問題となります。不安定性があれば同部に圧痛を認めることがあります。

 治療は骨端線閉鎖後であれば手術を考慮します。靱帯損傷のみではテーピング、サポーターの使用により運動継続が可能であることが多く手術適応とならないことが多い。骨軟骨病変(距骨骨軟骨損傷、前方インピンジメントなど)を併発している場合は手術適応があります。 
平成28年3月27日(日)
 
平成28年3月28日(月) 間違いシリーズ7 骨折に湿布を貼ったらかぶれて手術が延期になりました

 小さい頃から湿布は魔法の薬のように何かケガをしたら貼って育った人が多いかと思います。それゆえに骨折しても貼ってしまいます。湿布は時としてかぶれます。このかぶれがくせ者で、皮膚がかぶれることによって細菌が増殖します。こうなると骨折の手術は出来ません。かぶれが治るまで延期となれば適正な時期を逃してしまうこともあります。しっかりと診断が付くまでは湿布は貼らないようにした方が良いです。
 
 
平成28年3月29日(火) sever病

 小児期における踵骨後部の骨端炎。骨端核がアキレス腱と足底腱膜に繰り返して引っ張られるために発症します。踵の痛みが特徴。レントゲンで踵骨骨端部の骨硬化像、不整像を認めます。治療は局所の安静を2-3週間行うと改善します。踵部への刺激を減らすためにクッション性のある靴やヒールパッド、アキレス腱を緩めるために踵部を1センチ前後高くする足底板を用いたりします。予後は良好です。
 
 
平成28年3月30日(水)
 間違いシリーズ8 足が痛いので幅広の靴を買ったら更に悪化しました

 人間の足は大きさも形も微妙に異なりますので、既製品でしっくり合う靴を探すのは至難の業です。ましてやそれぞれのスポーツに適したシューズとなると迷宮の中をさまようこともあります。

 靴は足の長さと幅で選択できるようになっています。靴を選択する場合、まず踵から足趾の先までを物差しで測ります。(実際の大きさ)これが例えば、26.5センチであれば通常、26.5センチの靴をまず選んでみます。丈や幅はメーカーによって若干異なります。

 中敷きが外れるものであれば、外してみて自分の足に合わせてみます。踵を合わせて足趾より中敷きが少し長めになっている必要があります。若干の余裕は必要で足先で趾が当たらず少し動かせる程度のものがよいでしょう。

 横幅は日本人は欧州人より幅広が広いのですが実際より幅の広いものを選択しがちです。幅が広いと足の横アーチが崩れてベチャ足となり中足骨遠位あたりに痛みが出たり疲労しやすくなります。日本人の90%は幅広タイプでは無く、通常のもので問題ないとされています。
 
 
 
平成28年3月31日(木) 大腿骨頸部骨折

 大腿骨の頚部とは股関節にはまっている部分(大腿骨骨頭)を支える部位をいいます。転倒などにより大きな力が働くと頚部に骨折が起こります。骨折が骨頭に近い内側型と遠位の外側型に分けられます。外側型は通常症状が強く歩行困難となりますが、内側型は痛みがそれほどでもなく痛いながらも歩行が可能のことがよくあります。歩行可能だから骨折はないと考えてはいけません。

 内側型はこのように症状が強くなく歩行できることもあり、専門の整形外科医でも見逃すことがあるので注意が必要です。また初診時にはレントゲンで異常が無くとも加重や筋肉に引っ張られてずれてくることももあります。従って痛みが継続する場合は、必ず経時的にレントゲンを撮影します。初診時に骨折が疑われる例ではMRIにより精査を迅速に行うようにします。レントゲンでは見つからない例でもMRIで確定することはよくあります。

 症状としては外側型は股関節に激痛が生じることが多く、内側型は痛みは弱く下肢に放散して坐骨神経痛や筋肉痛様の症状を起こすことがあるので注意が必要です。

 頚部骨折は原則として手術療法を選択します。転位が無く安定している場合は、保存的に治療することもありますが、治療期間が長くなり、高齢者の場合、寝たきりになることも多いとされています。