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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

過去ログ
2015.4
2015.5 2015.6 2015.7 2015.8 2015.9 2015.10 2015.11 2015.12
2016.1 2016.2 2016.3
 
平成28年4月1日(金) 単純性股関節炎 Transient Synovitis of the hip

 4-6才の学童期までの小児に多く見られる股関節の炎症です。原因はよく分かっていませんが先行するウイルス性疾患のあとで発症するケースも3割程度あるとされています。

 股関節の痛みとそれによる跛行を認めます。38.5°以上の発熱やCRPが2.0mg/dlの場合は穿刺して細菌感染を除外診断します。通常は痛みに応じて局所の安静(松葉杖などによる免荷)を行い、希望により消炎鎮痛剤などを使います。局所安静をしっかりと行えば1週間ほど(場合により数週間)で改善します。長引く場合はペルテス病などの他の股関節疾患を考慮します。

 診断はレントゲン撮影に加えて超音波断層撮影を行います。適時、血液検査。症状が継続する場合はMRIにて精査します。
 
 
平成28年4月2日(土) 幼小児期の白血病・悪性リンパ腫

 幼小児期は急性リンパ性白血病が多く占めます。白血病は血液のがんであり骨髄内に白血病細胞が増殖し、貧血や皮下出血、労作時の息切れ、関節痛、骨痛を起こします。整形外科ではあまりみることはありませんが、関節痛、骨痛に加えて元気が無いなどの症状があれば、精査を行うように心がけます。

 血液検査で末梢血液に芽球などの異常が無く、貧血や血小板減少も認めず、LDHのみ高値のことがありますので注意が必要です。あるていど跛行をしていれば、骨盤〜下肢全長をレントゲン撮影し、透亮像、骨膜反応がないかみます。

 専門病院で抗がん剤を中心とした治療を行います。
 
平成28年4月3日(日)
 
平成28年4月4日(月)
 幼小児期の骨肉腫・ユーイング肉腫

 骨肉腫は小児の骨に発生するがんの中で最も頻度が高い骨のがんです。国内では年間150人ほど毎年発症します。膝関節に近い骨(大腿骨、脛骨)に起こることが多いです。次いで肩関節に近い上腕骨です。

 症状は痛みと腫れが最初の症状です。

 ユーイング肉腫も大腿骨の多く発生しますが、骨肉腫より関節から離れた骨幹部中央付近で発症することが多いとされています。骨盤や脊椎などにも発生します。

 いずれの疾患も痛みが続く場合は要注意です。初期にはレントゲンで骨膜反応などの所見がわずかで診断しにくいことがあります。MRIが有効です。


 幼小児期の転移性骨腫瘍では神経芽腫の骨転移が多い。
 
 
平成28年4月5日(火) 多発性外骨腫

 膝周りの大腿骨、脛骨、腓骨に好発します。文字通り骨から外に向かって隆起します。先端に軟骨帽があり超音波やMRIを使って確認します。通常は良性ですが、圧迫して神経障害や可動域障害がでる場合は手術を考慮します。 長期観察例では、ごくまれに悪性化することがあり成人以降も定期診察が必要です。とくに軟骨帽が大きな場合はまれに悪性化の可能性があり要注意とされています。
 
 
平成28年4月6日(水) 化膿性股関節炎、化膿性膝関節炎

 0歳児から乳幼児に多く学童期にもみられる関節の感染症です。症状は患側の痛みによる歩行障害と38°以上の熱発です。微熱のこともあります。膝関節の跳動、股関節はエコーで関節液の状態を調べます。関節液の穿刺で血性、異臭を伴う膿性であれば臨床的に細菌感染と診断し、穿刺診断後、ただちに全身麻酔下で関節洗浄、滑膜切除術を行えるかが関節機能予後に直結します。

 手術後の抗生物質は頻度の高いブドウ球菌をたたくために第1世代のセファム系を点滴静注します。CRPの正常化の後に、経口の抗生物質に切り替えます。点滴静注も含めて総計4週間投与を目安とします。MRSAが検出された場合は、抗MRSA薬を併用します。
 
 
平成28年4月7日(木) 骨端軟骨損傷2

 骨端軟骨損傷は単純レントゲン撮影では正常に見えることも多く、かならず両側を撮影して比較します。超音波断層撮影でストレスをかけて骨端軟骨が安定しているかどうか動的にみるのも診断価値があります。CTやMRIも有用です。長期間の観察が必要です。

 下肢の場合、転位がない場合はギブス固定をし免荷します。転位が著しい場合は、麻酔下に整復し鋼線固定やギブス固定を行います。

 骨端線損傷が起こった場合、骨端線早期閉鎖による短縮、内反・外反、屈曲変形、伸展変形などが生じる可能性があります。後遺症の治療には、骨端線骨性架橋の切除術、骨端線の成長抑制、延長術、強制骨切り術などがあります。
 
 
平成28年4月8日(金) BCG骨髄炎 osteomyelitis of BCG

 結核の予防接種に使われるBCGの副反応としてBCG骨髄炎があります。BCGは弱毒化されていますが生ワクチンなので免疫力が低下した幼児を中心として発症すると言われています。極めてまれで日本では年間5例ほどしか発症しません。骨髄炎を起こしますので腫れや痛み、熱発などの症状が中心です。治療は抗結核剤の服用でほとんどが問題なく治るとされています。まれですが頭の片隅に置いておきたい病気の1つです。
 
 
平成28年4月9日(土) 若年性特発性関節炎 juvenile idiopathic arthritis: JIA

 以前は若年性関節リウマチといわれていましたが、若年性特発性関節炎と名称に統一されました。16歳以下に発症する6週間以上続く原因不明の関節炎と定義されています。症状の出方により全身型、関節型(少関節型、多関節型)、症候性に分類されます。全身型が42%、少関節型が20%、多関節型が32%、その他が6%を占めます。

 全身型は、発症が3歳と8歳と二峰性のピークがあり、弛張熱、リウマトイド疹、関節炎が三主徴です。弛張熱は日内変動が1℃以上で平熱にまでは下がらない熱型を示します。リウマトイド疹は発熱と共に出現し解熱とともに消失することもある数ミリ〜1センチ大の紅斑です。ほかに、リンパ節腫張、肝・脾腫、心炎、胸膜炎、咽頭痛があります。

 関節型は発症6ヶ月以内の関節炎の数で4関節以下を少関節型、5関節以上のものを多関節型とします。少関節型は多くの場合で膝関節や足関節などの大きな関節で始まります。適切な治療で予後は比較的良好とされています。ぶどう膜炎を合併することがあるので定期的な眼科検診が必要です。多関節型は左右同じ関節で痛みや腫れが起こり、手や指の小さな関節をはじめ、肘、足、膝、頚、顎の関節でも炎症がみられます。微熱、倦怠感、食欲不振などの症状が出ることがあります。


 症候性慢性関節炎は乾癬や潰瘍性大腸炎などに併発して二次的に関節炎を起こすものです。

<治療>
 全身型 当初、NSAIDsを使用しますが有効で無いことが多く、ほとんどの症例でステロイドが使われます。抗IL-6受容体モノクローナル抗体(トリシズマブ)が有効です。

 関節型 診断が確定するまではNSAIDsを使用し、確定後、それに加えてメトトレキセート少量パルス療法と少量のプレドニゾロンを使って三者療法が行われます。効果がない場合は、TNF阻害剤であるエタネルセプトや上述のトリシズマブなどの生物学的製剤が使われます。
   
平成28年4月10日(日)
 
平成28年4月11日(月) 血友病性膝関節症 Hemophilic knee arthropathy

 血友病は膝、肘、足関節などの関節内に出血を起こすことがあります。これによりヘモジデリンが沈着して滑膜炎を起こし関節症となるとされています。最近では凝固因子の補充療法により頻度は減っているとされています。関節症は出血を繰り返すことで起こりますが、1度の出血でなることもあります。

 凝固因子の補充療法を受けていても半年間に3回以上、同一関節に出血する場合を、ターゲット関節とし、滑膜切除の対象となります。変形が強くないものは鏡視下に滑膜切除術を行います。変形が進行したものは人工膝関節置換術を行います。

 関節内出血時は、凝固因子の補充、安静入院、牽引、装具、杖などを検討します。
 
 
 
平成28年4月12日(火) 間違いシリーズ9 成長痛 growing pain
  
 昔からよく言われる成長痛ですが、はっきりとした原因は分かっていません。3-8歳によくみられる夜間の膝や下腿の疼痛で痛みにより泣いたりしますが、翌朝はケロッと治って普通に動くのが特徴です。それゆえ朝になっても痛みが続くようですと他の病気やケガの可能性が高いと言えます。

 診断は他の病気(骨折、捻挫、炎症、筋膜炎、腫瘍性病変)が無いことを確認した上で行います。股関節周りの疾患でも膝や下腿の痛みを訴えることがあるので注意が必要です。

 精神的なものでも起こるとされており、例えば、弟や妹が出来てかまって欲しくて痛みを訴えるといったこともあるようです。

 診断に当たっては他の疾患が無いかどうかしっかり診ることが重要です。ご家族も安易に成長痛だと決めつけずしっかりと診察を受けるようにしてください。
 
 
 
平成28年4月13日(水)
 関節の過可動症候群 joint hypermobility syndrome

 全身の関節が弛緩する病態で、軟部組織の器質的異常が原因です。エーラスダンロス症候群、Marfan症候群、ロイス・ディーツ症候群、骨形成不全と確定診断された場合は含まないとされています。

 両膝関節可動域が10°以上の過伸展を呈するのが特徴で、立位では反張膝となりやすい。慢性の膝痛を訴えることも多い。扁平足の合併もみられます。

 幼児期〜学童期で膝痛がみられる場合、内側アーチサポートヒールアップウェッジ補高を行うと症状が改善しやすいとされています。
 
 
平成28年4月14日(木) 膝関節内の痛み

 膝の痛みは膝関節内部からくることもよくあります。膝関節内の知覚神経は、関節包、滑膜、半月板の外1/3、靱帯付着部に分布しています。関節軟骨、十字靱帯中央部、半月板内1/3は知覚神経が分布しておらず、それらの痛みは、損傷に伴う二次的現象(炎症、物理的圧迫、引張り)により周辺の知覚神経を刺激していると考えられています。
  
 
平成28年4月15日(金) 半月板損傷

 半月板損傷はスポーツなどによる単独損傷と靱帯損傷に合併するものに分けられます。また年齢により変性が進みはっきりとした受傷機転が無くともいつの間にか損傷していることもあります。半月板の神経分布は外周のいわゆる外1/3(outer zone)にあり、それより内側には神経組織はみられません。したがって外側の損傷は痛みが出ますが内側の損傷は、間接的にずれや圧迫、炎症などで神経受容体を刺激しないと生じません。 

 神経と同様に血管も外1/3(10−30%)まで入っていますが、そこより内側は血流が無く損傷した場合は治癒しにくいとされています。

<断裂の形態分類>

 ・縦断裂:外1/3に多く、陳旧性ACL断裂膝に多い
 ・バケツ柄断裂:縦断裂が大きくなり半月板が顆間に嵌頓した状態
 ・横断裂:スポーツ動作における強い軸圧とひねり動作で発症、外側不完全型円板状半月板に多い
 ・フラップ(弁状)断裂:断裂の一端が自由端なっている
 ・水平断裂:加齢による変化で生じることが多い。深屈曲で痛みが強くなる、半月嚢腫をしばしば伴う
 
<円板状半月板の損傷形態MRI>
anterior-central shift 半月板が前方にシフト
posterior-centoral shift 後方にシフト
成人例では水平断裂を伴うことが多い

<hypermobile meniscus>
 過可動性半月板。外側半月板でロッキングを起こすが、画像所見はほぼ正常で診断に苦慮する

<損傷パターン>
 スポーツでは外傷性、オーバーユースがある。
 外傷性はACL損傷に伴うもの、単独損傷、円板状半月損傷があり、手術加療を行うことが多い
 オーバーユースは全十字靱帯不全膝の内側半月板後節損傷、円板状半月板水平損傷、加齢による変性、水平断裂がある

<半月板損傷による疼痛>

 半月板損傷の症状:引っかかり感、ロッキング、膝痛、水腫、時にずれる感じ→物理的な引っかかり、半月板機能の破綻による関節軟骨障害症状(水腫)
 痛みは神経組織のある関節包や滑膜組織、半月板外1/3、十字靱帯の両端を刺激したときにでる(無血行野のみの損傷では半月板そのものの痛みは出ず引っかかるときに出る)
 水平断裂は内部に治まる限り痛みは出ない→一部フラップになれば引っかかり感+、水辺断裂のみで痛みが出る場合は、他の原因(半月板機能低下による軟骨変性)を考える
 血行野(神経がある)の損傷では関節包の刺激によって関節裂隙に圧痛が生じる。血行野であるため急性期は関節内血腫を認める

<半月板損傷に対する治療>

 手術(鏡視下に切除、縫合)、保存治療。
 手術適応:半月板温存すべき損傷(辺縁部損傷のある急性損傷)、急激な機能低下をきたす状態(横断裂が辺縁部に至る急性損傷)
 *水平断裂は保存的治療が奏功することが多い。手術との比較でも臨床成績は差が無いと報告されている

・保存療法の適応と実際

 上記の手術適応がない場合、保存療法を行う。疼痛が強い場合は関節注射、あるいは疼痛部位にブロック注射をおこなう。
 半月板損傷はその痛みのために周辺(関節包、膝蓋下脂肪体、二関節筋)の拘縮を伴っていることが多く、入念なストレッチを指導する
 これらの拘縮が改善しても、荷重時や可動域の疼痛が残存し、軟骨変性を伴っていない場合は半月板症状の残存と考えて手術を行う

・手術療法の適応と実際(代表的損傷と手術療法)
 1.辺縁部急性損傷(縦断裂、バケツ柄断裂) 内側半月板の縦断裂、バケツ柄断裂の多くは縫合の適応。ACL断裂再建と同時に。多くは中節から後節。
 2.不完全型円板状半月板の横断裂 横断裂が関節包辺縁までの距離で切除か縫合かを決める。辺縁から5mmを残存できるなら部分切除。残存半月板が5mm以下になるなら縫合術
 3.内側半月板FLAP損傷を伴う水平断裂 壮年期に多い。保存か手術かコンセンサスなし。関節水腫無く、McMurray test陽性で引っかかりに伴う疼痛が主な場合は手術適応。術後、膝蓋下脂肪体の痛み、膝蓋骨の可動性が悪化しやすく、術後早期から関節包の癒着が起こらないように術後早期よりリハビリを開始する。
 4.完全型円板状半月板
  ・辺縁部の断裂がない場合:no shift type は症例の1/3に辺縁不安定性を伴うのでsnapping(弾発)現象のあるものは縫合の準備をする。切除は前節、後節8mm、中節6mm残す中節後部は水平断裂が露出することが多く、小児ではそのまま、成人例ではfast-fix
  ・辺縁部に断裂がある場合:形成切除後、辺縁部を縫合する

・orthipedics 2016.3 p18-21 膝の痛み 大阪市立大学医学部 橋本祐介先生の著書よりまとめました。
 
 
平成28年4月16日(土)
 腸脛靱帯炎

 ランナー膝と呼ばれ、ランニング、登山の下山、サイクリングで起こりやすいです。

 腸脛靱帯は大腿四頭筋のうち外側広筋の外側を走る靱帯で、起始部は大腿筋膜張筋と大殿筋とつながり、脛骨近位の前面のGerdy結節にて停止しています。この靱帯は膝が伸展時は大腿骨外側上顆より前方にあり、30°屈曲で上顆上に、更に屈曲すると上顆より後方に移動します。

 膝を伸展屈曲する運動で外側上顆と擦れインピンジメントとなり炎症が起こります。早いランニングは膝を30°以上屈曲したまま着地するのでインピンジメントとならず靭帯炎を起こしにくいのですが、遅く走る(スローランニング)と30°前後を擦るようになり発症しやすくなります。下り坂、ジョギング、不整地、雨の日のランニングで起こりやすい。靭帯炎と滑液包炎を起こします。

 治療はまずは局所の安静です。腸脛靱帯のストレッチと股関節が内反しないように中殿筋を鍛えるようにします。痛みが改善したらインピンジメントを起こさないように早めのランニングから開始します。その後、徐々に遅いランニングにしていきます。外顆の隆起が強い場合は、外顆を削る手術を行います。
 
平成28年4月17日(日)
 
平成28年4月18日(月)
 鵞足炎 pes anserinus tendonitis

 鵞足はハムストリングスを構成する縫工筋、薄筋、半腱様筋の付着部のことで、膝のやや下方の脛骨内側にあります。膝を屈曲、内旋させる機能があります。一般的にスポーツなどで繰り返して過剰な牽引負荷がかかると慢性の腱炎となり痛みが出ます。深層にある滑液包炎を合併することも多いです。Squtting testのtoe outで症状が出ます。骨性の圧痛がある場合は、脛骨高原骨折や脛骨近位の疲労骨折を除外診断します。

 また変形性膝関節症(膝OA)のある方は鵞足炎も合併していることがよくあります。膝OAの症状はそれほどでは無く鵞足炎の症状が強いこともあります。

 ハムストリングスがタイトであると症状が出やすいです。診断が付いたら体の柔軟性をチェックします。多くの場合、体が硬く、くにハムストリングが硬くなって曲げにくくなります。このような状況が続くと周辺の筋腱も拘縮し可動域が低下します。

 スポーツ障害の場合は痛みが無くなるまで局所の安静が重要で運動の内容を調整しストレッチ(大腿後面と内側)を指導します。痛みが無くなってくればレッグカールを行い筋力強化をはかります。膝OAに合併する場合は両方の治療を行います。回内足ではアーチサポート。外骨腫が原因の場合は手術を考慮します。
 
 
平成28年4月19日(火)
  間違いシリーズ10 捻挫・突き指後の関節変形

 骨折の有無にかかわらず、関節を固定すると多少動きにくくなります。関節が固まる原因は皮膚の拘縮、関節周辺の癒着、骨の変形などがありますのでそれぞれの原因に対し予防し対応する必要があります。骨の変形は骨折を出来るだけ元通りに治すことで予防できます。関節周辺の癒着による拘縮は、出来るだけ早期に可動域訓練を行うことによって予防できます。皮膚の損傷は拘縮が起こらないように外傷後より対応をする必要があります。形成外科へのコンサルトを怠らないことが大切です。

 成人の場合、関節を4週間固定したままだと動きにくくなります。したがって関節の可動域訓練を可能であれば早期より行うようにします。特に手指関節のうち、第2関節(PIP関節)は拘縮が起こりやすく後遺障害が起こりやすいので細心の注意を払います。手指の場合、骨折が治るのに4週間、拘縮は3週間ぐらいから始まってきますので必ず可動域訓練を早期に開始して拘縮が起こらないように努めます。

 そういった対応をきちんと行っても場合により可動域が落ちることもあります。そのときは根気よくリハビリを行い、改善しなければ状況により拘縮を剥離する手術を行います。誰しも手術をしたくはありませんから、外傷の初期対応をしっかりと行うようにします。


 放置して指が曲がったままとなり慌てて来られる方もときにおられますが、ケガを侮らずに早めに受診をするようにしてください。
 
 
平成28年4月20日(水) 腓腹筋腱障害

 大腿骨内顆後面に付着する腓腹筋内側頭付着部に起こる腱炎があります。オーバーユースが原因です。治療は局所の安静とストレッチ、筋力強化が有効です。痛み始めはまず局所の安静をはかり、痛みが改善してくれば、徐々に痛みが強くならない範囲でストレッチを行います。筋力強化はストレッチで痛みが無くなってくれば、徐々に負荷を増やしていきます。じっくり取り組む必要があります。
 
                                                
 
平成28年4月21日(木)
  Hip-spine syndrome

 股関節と脊椎・骨盤は密接に関連してそれぞれの病態に影響し合います。このような状況を Hip-spine syndromeと言います。

<MacNab分類>

1.simple type 股関節、脊椎両方に変形を認めるが病態の主因はどちらか一方
2.secondary type 病態が互いに影響し合っている
3.comprex type 両方に変形、両方が影響
 
 
平成28年4月22日(金) 股関節疾患に伴う変形性膝関節症(coxitis knee)

 なんらかの股関節の障害で可動域の制限、脚長差が生じると隣接する膝関節に関節痛、変形などが生じやすくなります。変形性股関節症(多くは発育性股関節形成不全症)では脚長差が大きくなると患側の膝が外反、健側が内反することがあります。(Windswept deformity)

 変形性股関節症、高位脱臼、強直股関節に合併する変形性膝関節症の場合、治療の原則は股関節→膝関節の順になります。ただ症状の無い股関節疾患の場合、なかなか手術に同意してもらうのが困難です。脚長差がある場合はまずは補高装具を装着し経過をみて症状が改善しないようなら手術を検討します。THRを優先しますが無理な場合はTKA後、可及的速やかにTKAを行うように考慮します。 とりわけ無症状の対側の股関節障害に対する手術が必要なケースでは説明が大変です。

 
平成28年4月23日(土) リウマチ類縁疾患 1.強直性脊椎炎

 強直性脊椎炎は脊椎、仙腸関節、四肢の大関節を侵す慢性進行性の自己免疫疾患です。30歳までの若年者に発症することが多く、頚部〜胸背部〜腰殿部を中心に、胸部さらに股関節、膝関節、肩関節など広範囲に炎症性疼痛を起こしてきます。

 病状の進行と共に各関節の拘縮や強直が生じます。

 <早期診断指針>
 1.徐々に発症する不快感
 2.40歳以下
 3.3ヶ月以上続く頑固な腰痛
 4.関節リウマチ様の朝のこわばり
 5.運動で症状が改善
 6.付着部(炎)障害

 強直性脊椎炎の椎体は上下に骨棘が出来て腰椎の前弯が消失、椎間板も減高し椎体がサイコロ状に立方体化します。有名な竹様脊柱(Bamboo spine)は年数を経て、しかも1/3の症例に認めるだけなので、椎体が直線化して立方体となった時点で診断を確定するようにします。

 発症初期には、症状も少なくレントゲンや血液検査所見に乏しく、本人による症状の訴え(いたみ、こわばり)のみのことが多い。四肢大関節の痛みを訴えることもあり 
平成28年4月24日(日)
 
平成28年4月25日(月)
 リウマチ類縁疾患 2.脊椎関節炎

 脊椎の関節炎を起こす疾患の総称。脊椎関節炎には以下の疾患が含まれます。乾癬性関節炎、腸炎合併関節炎、反応性関節炎、ぶどう膜炎由来の関節炎、強直性脊椎炎、それら以外のものは未分化型脊椎関節炎といいます。

 脊椎関節炎の診断は、1.炎症性脊椎痛がある。2.滑膜炎が存在する。で行う。(ヨーロッパ分類基準)

 1.炎症性脊椎炎
 現在、炎症性背部痛(腰痛、背部痛、項部痛)があるか、その既往があり、下記の中で少なくとも4項目が合致すること。1)3ヶ月以上の持続、2)発症が45歳未満、3)発症が潜行性、4)運動により改善、5)朝のこわばり

 2.滑膜炎
非対称性あるいは下肢に優位な関節炎を認める。あるいはその既往歴。
 1)家族歴:二親等以内に家族に以下のいずれかを認める。
  強直性脊椎炎、乾癬、急性ぶどう膜炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患
 2)乾癬:医師に診断された乾癬、あるいはその既往
 3)炎症性腸疾患:X線もしくは内視鏡にて確認されたクローン病、潰瘍性大腸炎、その既往
 4)左右交互の殿部痛
 5)靭帯炎:アキレス腱炎、足底腱膜付着部炎、その既往
 6)急性下痢症:関節炎発病一ヶ月前
 7)尿道炎、子宮頚管炎:関節炎発症一ヶ月以内に起きた非淋菌性の尿道炎、または子宮頚管炎
 8)仙腸関節炎:両側2度〜4度、もしくは片側3度〜4度のレントゲン所見のあるもの
 *0度:正常、1度:疑い、2度:軽度、3度:中等度、4度:強直

未分化型脊椎関節炎は将来、42%が強直性脊椎炎に移行するとした報告が外国であります。日本ではあまり研究されておらずしっかりとした診断が出来ていないと言われています。
 
 
平成28年4月26日(火)
 リウマチ類縁疾患 3.乾癬性関節炎

 乾癬は銀白色の鱗屑(皮膚の粉)をともない境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出る疾患です。はっきりとした原因は分かっていませんが、近年、その病態が新しい概念(TIP-DC-Th17細胞学説)のもとに急速に解明されてきています。これにより乾癬は、関節リウマチ、Crohn病とならぶ、代表的なTh17細胞性慢性疾患と考えられるようになっています。

 乾癬の1.5%に関節炎を伴います。脊椎関節炎のうち乾癬性関節炎は20%を占めます。好発年齢は25-35歳、女性にやや多い。発症は緩徐で皮疹先行型が3分の2、同時もしくは関節炎先行型が3分の1とされています。乾癬性関節炎のうち典型的なDIP関節炎は5%ほどで非対称性の小関節炎型が7割を占めます。対称性多関節炎型が10%。乾癬では爪の変形を起こすことが多い。DIPの変形はmouse ears sign (末節骨近位両端が骨増殖してネズミの耳のように丸く膨らむ)がみられます。

 治療は、活性型ビタミンD3や最近では生物学的製剤を用いることもあります。
 
 
平成28年4月27日(水)間違いシリーズ11 足の裏が痛いので湿布を貼りましたがあまり効きませんでした。

 経皮吸収される薬は、貼ったり塗ったりする場所によって吸収率が異なります。ハイドロコルチゾン(ステロイド、基材はワセリン)の場合、前腕屈曲を100%とするととすると前腕伸側で110%、胸腰背部で170%、手掌83%、足関節42%、足底14%となっています。このように皮膚の温度、血流、汗腺、角化層の厚さなどにより吸収率が大きく異なってきます。足の裏は心臓より遠く、また角化した上皮が分厚いので湿布を貼ってもなかなか効き目を現すことは難しいといえます。

 足の裏に痛みがあるときは、まずは内服薬を第1選択するとよいでしょう。
 
 
平成28年4月28日(木)
 高齢者の膝痛1

 高齢者の膝痛にはさまざまな原因があり、若者と異なることを考慮して診療する必要があります。多くは変形性膝関節症ですが、急速に痛みが発症する場合は、骨壊死、軟骨下脆弱性骨折、半月板損傷を合併していることもあります。このような疾患はレントゲン撮影では描出されにくいのでMRIでの精査が必要です。
 
平成28年4月29日(金) 昭和の日
 
平成28年4月30日(土)
 高齢者の膝痛2 変形性膝関節症

 変形性膝関節症は軟骨が摩耗し膝関節の変形が起こる疾患ですが、変形があっても痛みの程度はさまざまで全くないこともあります。痛みが起こる部位は関節内と関節外に分けられます。関節内の痛覚(痛みの受容器)は、軟骨部分には無く、滑膜、半月板の外3分の1、靱帯の起始部と停止部に分布しています。

 痛みが起こるのは半月板や軟骨の破片が関節内に遊離し滑膜を刺激し滑膜炎を起こすためと言われています。この刺激によって膝関節内に水が溜まるようになります。

 MRIで精査すると、荷重のかかる内側を中心に軟骨下骨で骨壊死、骨浮腫、線維化、出血などが起こっていることがあり、所見と痛みはよく相関するとされています。

 治療は、保存的には消炎鎮痛剤、外用薬、運動療法、膝の装具、アウターウェッジ装着、関節内注射などを行います。それでも改善しない場合は、手術を検討します。

 手術には、施設により若干異なりますが、比較的若くアライメントの矯正で症状の緩和が計れると判断した場合は高位脛骨骨切り術(HTO)、大腿骨遠位部骨切り術(FDO)を行い、75歳以上では、アライメントが徒手(用手)矯正可能で内側または外側に限局した可動域が良好なOAには人工膝関節単顆置換術(UKA)、その他の症例は人工膝関節全置換術(TKA)を行います。


 関節外の痛みの原因としては、鵞足、腸脛靱帯、内側側副靭帯に痛みを訴えることが多い。この成因はよく分かっていないが、膝の変形や不安定性、痛みにより膝周辺の靱帯、腱に負荷がかかりすぎたり、また膝関節周りの筋腱や靱帯が関節内部の痛みにより拘縮して起こっているのではないかと考えます。