肩峰下インピンジメント
インピンジメントは「衝突する」「挟み込む」という意味です。肩関節インピンジメントは可動時に肩関節周辺の骨、軟部組織が衝突することによって痛みや可動域の制限が出ます。
<分類>
肩関節インピンジメントは以下に分類されます。
1)肩関節内インピンジメント(肩甲上腕関節内で生じる)
2)肩関節外インピンジメント(滑液包側で生じる)
ア)肩峰下インピンジメント
イ)烏口下インピンジメント
肩峰下インピンジメント2
肩峰下インピンジメント(Neerの定義):1972年、Neerは「上腕骨大結節の棘上筋・棘下筋付着部ならびに肩峰下滑液包が肩関節挙上時に烏口肩峰アーチ(肩峰、烏口肩峰靱帯、烏口突起)を通過する際に機械的圧迫を受けることにより疼痛が生じる。」とした。
<原因>
機能的要因:肩甲帯周囲の機能不全により肩関節の休心位の異常や肩甲骨の運動障害→保存療法が絶対適応
機械的要因:腱板断裂や石灰沈着、大結節骨折後の変形治癒など解剖学的破綻→時に手術
肩峰下インピンジメント症候群では肩関節の痛みと可動域制限が主訴となる。
肩関節周囲炎
肩関節周囲炎は四十肩、五十肩とも言われ中高年期以降、50歳代を中心に現れる疼痛性肩関節制動症とされています。肩関節周辺の炎症により癒着が起こり進行すると可動域制限が強くなり拘縮となります。初期は肩関節の前方に痛みが生じますが進行するにつれて後方に移動していきます。
<病期>
Freezing phase
Frozon phase
Thawing phase
Triggerとして烏口突起炎、上腕二頭筋長頭滑液包炎、腱板炎、腱板疎部損傷などが関与
多くは三角筋周辺の痛みが生じます。夜間痛や運動時痛が主で昼間の安静時は比較的疼痛は少ない。当初は前方成分(烏口突起周辺、結節間溝、腱板疎部)による痛みで発症し、進行すれば後方四角腔や棘下筋などの後方に移動していきます。回旋運動と回旋時の強い疼痛が生じ、拘縮が進むとすべての方向で可動域制限が起こります。
レントゲン撮影では特に異常所見が無く、拘縮が長いもの、疼痛が強い場合は骨萎縮を起こすことがあります。肩関節周囲炎の原因は関節包の癒着であり、関節包の遊びの消失により可動域制限や痛みが生じるとされています。治療は消炎鎮痛剤に加えて圧痛点にステロイド入り局所麻酔薬を注入する方法があります。近年ではヒアルロン酸の注入が効果的であるとされています。
注射を希望されない人も多いので、地道にストレッチを行い関節包や滑液包の癒着を外していきます。
予後ですが、無治療でもほぼ2年以内に重篤な症例でも回復するという意見もあれば、半数で痛みか拘縮を残すという報告もあり、コンセンサスは得られていません。いずれにせよ痛みが長期に続くのは精神的にも辛いですので、早期にリハビリ等の介入を行い改善を図るのがよいと考えます。
上腕骨外側上顆炎
上腕骨外側上顆を共通の起始部とする短橈側根伸筋(停止:第3中手骨近位)、総指伸筋、小指伸筋、とりわけ短橈側手根伸筋(ECRB)の腱付着部症とされています。病理組織所見として炎症所見の無い血管線維芽細胞の過形成、腱の多発性微少断裂が起こっているとされています。滑膜ひだとの関連も示唆されています。
テニス肘とも呼ばれているが実際にテニスが原因となっているのは約10%にすぎません。
約90%の患者で保存治療が有効で、残りの約10%は保存治療に抵抗性で、慢性化した場合は、手術療法が考慮されます。手術は鏡視下にECBR腱起始部の変性した部分を切除、また関節内(滑膜ひだや輪状靱帯の一部)の病巣切除を行うとしています。
<治療>
保存療法:テニス肘バンド、手関節伸展制限バンド、消炎鎮痛剤(外用、内用)、急性期が過ぎれば前腕伸筋群のストレッチ、筋力強化を行います。
ステロイドの注射は短期的には効果があるが1年以上の長期的には効果が劣るとされています。希望する場合は、6-12週間以上の間隔をあけて4-5回を限度とします。ヒアルロン酸の局注、関節内注射が有効であるとの報告がなされているがしっかりとしたエビデンスはない。
参考:上腕骨外上顆炎 射場浩介 札幌医科大学整形外科教室 保存療法でなおす運動器疾患 Orthopedics 2015.10増刊
TFCCと鑑別を要する尺側に限定した痛みを起こす疾患
ECU腱炎(尺側手根伸筋腱炎、腱鞘炎) 背屈、回外位で疼痛が誘発
手根骨間靱帯損傷(月状骨三角骨間、三角骨有鈎骨間)、第5中手骨CM関節由来の疼痛 疼痛は局所を圧迫、シフトテストで誘発。少量のリドカイン(0.1ml)注射で症状消失。最終的には関節造影で診断
尺骨突き上げ症候群 尺骨頭が月状骨を圧迫、骨軟骨変性を起こす。レントゲンでは中間位では鑑別が困難で回内位、回外位でバリアンスの測定を行う。
変形性遠位橈尺関節症 症状はほとんどTFCCと鑑別できない。MRI
変形性三角骨豆状骨間関節症 掌側の疼痛でfavea sign と混同されやすい。
尺骨茎状突起骨折、骨折後偽関節 レントゲンで判明するが、MRIで初めて分かることも
尺側手根屈筋腱炎 手関節を屈曲位で作業やスポーツをするケースで起こります。腱周囲、腱鞘に沿った痛み
腫瘍 骨腫瘍や軟部腫瘍が原因となっていることがまれにある。→要精査
TFCCの治療
1.保存治療
痛みが生じる動作の回避、安静固定(装具)・・・装具による改善率50-100%、20-30%は疼痛の改善を得られないとされている。
ステロイドの局注
2.手術療法 3ヶ月以上の保存療法でも改善しない場合、また尺骨頭の不安定性があるものは外科的治療の選択をする。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は生活習慣病と同じように罹病率も高く、積極的に発症予防や伸展防止を行う必要があります。変形が起こり出すと緩徐に進行することが多く、10年先、20年先を見据えた対応が必要です。そのためにはこの病気がどのようなものであるかを知ってもらうことと体重管理をしっかり行うことがとりわけ重要です。
<変形性膝関節症とは>
1.知っておきたいこと
・年齢により変性した軟骨や半月板により症状を引き起こしている
・進行は緩やかであるが、軟骨は少しずつ減っていくだけでなく、質的にも悪くなる
・過度の運動や肥満は進行を早める
・健康を維持するためにADLを含めた活動は必要であるが、疼痛を起こすものは控える
*ヒアルロン酸の関節注射:進行を抑制する作用は無く、症状を緩和させます。
外反母趾の装具について
装具には、母趾・第2趾間に挿入する趾間装具、ストラップ型趾間開大装具、足底板があります。
趾間装具は趾の股(1-2趾間)にはめるゴム状のもので簡便ですが、第2趾の外反を起こすことがあります。
ストラップ型趾間開大装具は母趾にストラップを引っかけて外反を矯正します。
足底板は縦アーチと横アーチをサポートするように作成します。ストラップを追加したものもあります。
いずれの装具も軽度から中等症までであり、高度変形例では効果は限定的とされています。HV角35°未満で有効。
腓骨筋痙直型扁平足 Peroneal spastic flat foot PSFF
距骨下関節に生じた慢性の炎症により長・短腓骨筋、長趾伸筋などの外がえしを行う筋がれん縮を起こし著しい外反扁平足を起こします。
足根骨融合症、足根洞症候群が原因となっていることがあります。(狭義では足根骨融合症が無いものを指す。)足根骨融合症は関節の可動域が落ち短腓骨筋などが短縮して起こるとされています。
足関節は自動では内反せず、他動的に内がえしすると下腿内側に痛みが放散します。
<治療>
まず消炎鎮痛剤の投与を行い、扁平足に対しては足底板を装着します。足根洞症候群と同様に距骨下関節内や足根洞への局所麻酔薬とステロイド薬の注射が著効することが多い。
これらの治療で効果が不十分な場合は、麻酔科に患肢を内反底屈位でギプス固定する方法が有効とされています。ギプスの下巻きを厚くして皮膚障害に気をつけ、症状が改善するまで免荷にてギプス更新を行います。保存治療で効果がない場合は手術を考慮します。
小児扁平足の治療
小児の扁平足は足底板による装具療法を行います。思春期では足底板と消炎剤の併用。小児期の可撓性扁平足に足底板(アーチサポート)を用いいて2歳半程度で治療開始をした場合、約7割は治癒するとしています。(落合達弘 こともの扁平足:柔らかい扁平足 MB Orthop 26(6) 1-6 2013
)
頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症の違い
いずれも頚椎に退行性変化による神経への圧迫が起こって症状が出ます。頚髄症は脊柱の真ん中を通る脊髄が圧迫された病態であり、神経根症は脊髄から分岐し末梢へ行く根部の圧迫(椎間孔での圧迫、狭窄)により症状を起こします。すなわち頚髄症が本幹での圧迫であり、神経根症は分岐した後の圧迫です。
<頚椎症性頚髄症>
手指の巧緻障害(ボタンがはめにくい)、myelopathy hand、歩行障害(痙性歩行)、Romberg sign、手指のしびれ、四肢の感覚障害、四肢の筋力低下、深部腱反射亢進、Hofmann
sign、Babinski sign、膀胱直腸障害
外傷を契機としない症状の急速な悪化は血管病変によることがあります。初発症状として手指のしびれ。感覚障害は末梢ほど強い。しびれや感覚障害がない場合は運動ニューロン疾患を鑑別します。
手指の巧緻障害:指が旨く動かない。ボタンのかけ外しがうまくいかない。myelopathy hand finger escape sign、10秒テスト
発育性脊柱管狭窄:脊柱管前後径12-14mm以下
治療:軽症例は保存治療、重症例~進行性は手術療法。保存治療として装具療法(昼間のみ、夜間は外す。高齢者は転倒防止のため歩行時は外す。)と持続牽引をおこないます。装具は装着して症状が悪化することもあり高さの調整が重要です。持続牽引は軽症例では短期であれば有効な治療となりえます。頚椎の間欠牽引療法はエビデンスが無く意義は不明です。持続牽引は入院で行います。持続牽引はグリソン牽引で2-3キロまで、直達牽引であるクラッチフィールドやハローリングでは15kg程度の牽引が限界となっています。
<頚椎症性神経根症>
頚椎症性神経根症は椎間孔狭窄による圧迫性神経障害と定義されています。原因としてはLuschka関節・椎間関節に生じた骨棘、椎間板膨隆(ヘルニアも含む)、 靱帯の肥厚、神経根周辺組織(A線維、C線維)の侵害受容体の刺激などがあります。
画像診断と診断で想定される障害部位が一致することが重要です。画像所見があるから症状が出るとは限りません。頚椎症性神経根症では障害された神経根が支配する領域での頸部痛、上肢痛、肩甲骨やその周辺の痛み、知覚異常、しびれ、筋力低下、深部腱反射の低下がみられます。その他、三角筋(C5)の筋力低下、手指筋力の低下、翼状肩、胸部痛、頭痛なども起こることがあります。
診断は神経学的診察に加えてレントゲン撮影(6R、正側面、両斜位、前後屈)で評価を行い、神経や椎間板などの軟部組織の評価はMRIで行います。
治療は消炎鎮痛剤、中枢性筋弛緩剤、プレガバリンなどの内服薬、外用薬、頚椎の間欠牽引、頚椎装具などを行います。保存療法での治癒率は70%前後とされています。症状の改善しない場合や悪化する場合は手術を考慮しますが、実際にはしびれや痛みよりも筋力低下などの運動神経症状が強くなってくると手術を選択することが多いです。従ってほとんどのケースで手術をすることなく保存療法で対応し、どうしても旨く治らないケース(進行性の筋力低下や保存療法に抵抗する激しい疼痛)のみ手術を選択しますが、おそらく神経根症のうち数%程度ではないかと思われます。
装具治療は症状が緩和する2-3週間を目安に装着します。夜間の装着が有効とする意見もあります。
最近はいろいろな薬での対応が可能となり、症状を緩和することが以前に比べて格段に進歩していますので痛みが出ても恐れないことが大切です。精神的あるいは社会的要因などが関与すると言われており多角的な治療が必要とされています。
椎間板性腰痛
椎間板の内部には神経組織や血管はありませんが、椎間板の線維輪最外周には神経終末や血管が分布しています。これらは椎間板の変性が進むと内部に侵入していくことが分かっています。椎間板に枝を出す末梢神経は、洞椎骨神経、灰白交通枝、交感神経幹となっています。線維輪最外層には侵害受容器が存在し、椎間板病変が急性の腰痛を起こすことが分かっています。感覚繊維がある後根神経節には、椎間板背側部では当該分節、背側部ではL2レベルを中心として腹側で7分節、背側で9分節に及んでいます。神経トレーサを用いた実験ではL5-S1椎間板(ラットではL5-6)では交感神経幹を通じてL2神経支配であり、交感神経幹を除去した状況では、前方からL2,L3,L4,L5の分節分割構造であることがわかりました。(参考:椎間板性腰痛の基礎 高橋弦 日本腰痛会誌 13(1):10-16,2007)
このことはL2より下位のレベルの神経刺激でもL2の痛みが生じる理由となっています。(L5なら神経枝はL2を中心にL5,L4,L3,L2,L1,TH12,TH11の7分節と交通)臨床的にはL5の神経障害の症状にL2神経障害の症状が被さってくることはよくあります。
小児上腕骨顆上骨折
治療の原則:初診時単純レントゲン撮影で整復が必要な場合は麻酔下にCRPP(非観血的整復&経皮的鋼線固定術 closed reduction
& percutaneous pinning)を行います。転位が軽度でも整復を行う場合はCRPPを行う。転位が明らかなものは手術を行い、麻酔や、手術が不可能な場合は直達牽引を行います。
骨折部の内側皮質の第3骨片や粉砕がある場合は骨折部が不安定で内反肘変形を起こしやすいので手術を行います。神経血管損傷が強く疑われる場合や開放骨折は緊急手術の絶対適応となります。
転位の無い場合は保存的に治療します。長上肢ギブスもしくはスプリント固定を行います。(ほか、カラー&カフ法)原則、長上肢ギプスを行いますが腫れが強い例やアトピーが強い場合はスプリント固定とします。ギプスは上腕近位からMP関節まで肘は90°、前腕中間位~軽度回外位で巻きます。巻き換えは小児ほど腫れが引きやすいので頻回とします。1歳未満は週二回、1-7歳は週1-2回。特に1-3週間は骨折部の転位をしやすいので外来受診毎にレントゲン撮影で整復位の評価を行います。4週間でギプス除去、その後スプリント固定を2週間します。 スプリント中は入浴時に外して可動域訓練を行うようにします。
スプリント除去後の後療法は、可動域訓練として日常生活動作として肘をしっかり伸ばし屈曲するように心がけてもらいます。肘の可動域制限は特に伸展制限が数ヶ月続きますがほどんどの場合で受傷後約6ヶ月で可動域制限は消失し左右差が無くなります。外来通院によるレントゲン評価は1-2年以上行うようにします。
通常片側発症で両側は8%程度、家族性は5%となっています。好発年齢は4-8歳で7歳前後の発症が多い。予後は、4歳以下の発症もしくは壊死範囲が大腿骨頭の2分の1以内のものは一般に良好です。逆に9歳以降の発症もしくは骨頭の3分の2を越える壊死では、骨頭の圧壊から関節の不適合を生じる可能性が高く積極的な治療を要します。
治療の原則は、壊死の予防や拡大を防ぐ方法は無く、骨頭の圧壊を防ぎ、関節の適合性をよくし、将来の関節症を防ぐことです。
治療の概念としてcontainment療法が広く行われています。これは包み込むという意味の単語で、ペルテス病では骨頭の壊死が起こりますが、骨頭を受ける側の臼蓋には異常がありません。この臼蓋に骨頭を包み込むことによって臼蓋の圧壊を防ぐという考え方です。
装具を使うか手術をするかは明確な統一見解が無く、施設や術者によってさまざまな意見があります。
| 病期分類 | |
|---|---|
| 初期 | 発病から骨頭に透亮像が現れるまでの時期 平均6ヶ月 |
| 分節期 | 骨頭の修復が始まり壊死骨の吸収がおこり骨頭の内側と外側を中心として骨透亮像が出現する。新生骨が出現するまで。平均約8ヶ月 |
| 再骨化期 | 骨硬化部が通常の濃度になり透亮部に新生骨を認めるようになる時期で、骨頭全体が再骨化するまで。4年以上持続することが多い。 |
| 残余期 | 骨頭修復が完了し骨頭核が正常の骨構造となったときから成長が完了するまでの期間。成長により骨頭形状は変化することがある。 |
| Catterallの壊死範囲分類 | |
| I群 | 骨頭の前方部分のみの壊死 |
| II群 | 骨頭の前方から中央に及ぶ |
| III群 | 骨頭の大部分が壊死だが内外側の一部は保たれている |
| IV群 | 骨頭全体の壊死 |
Salter-Thompson分類
軟骨下骨折の範囲でA,B群に分ける
A群:軟骨下骨折の範囲が骨頭の2分の1を超えないもの。軽症例
B群:骨頭の2分の1を超えるもの
| Lateral pillar 分類 | |
| 分節期の正面レントゲン像では骨頭中央の変化が強く、骨頭の変化を内側・中央・外側の3つの部分に分けてとらえる。骨頭外側の高さの残存程度と予後との相関が強い。 | |
| A群 | 外側に病変なし。外側の高さが健側と同じ |
| B群 | 外側の高さが50%以上 |
| B/C border群 | 追加修正された分類で、B群の中でも以下の3つに該当する場合は予後が悪い 1.骨頭外側部分の幅が3mm以下 2.骨頭外側部の骨萎縮が強い 3.骨頭中央部の陥凹が強い |
| C群 | 外側の高さが50%未満 |
<保存的治療>
原則:骨頭が潰れる時期は関節炎を起こすので、股関節の可動域が低下します。低下により骨頭の加重部分が狭くなり圧壊しやすくなるので、最初に安静にし、関節炎を消退させて可動域を改善させることが必要です。その後、年齢、骨頭の状況により治療方針(経過観察、装具、手術等)を決めます。
| 年齢別治療方針 | |
| 4歳未満 | 活動性低く体重も少ないので股関節への負担は少ない。また残余期での関節適合性改善が見込めるので、壊死範囲に関わらず特別な治療は要しないことが多い。著しい骨頭の圧潰が生じていても関節の適合性に問題がなければ経過観察のみでよい。 股関節の可動域制限による跛行がある場合は短期間の安静により可動域を改善させる。壊死範囲が広く、経過中に骨頭の外方化を生じる場合は加重装具を使用する。 |
| 4・5歳 | 何もせずに経過観察すると骨頭変形を起こすことが多いため治療を行うことが望ましい。 ・発症早期で壊死範囲が不明の場合や壊死範囲が明らかになったあと、Catterall I・II群は免荷を行わずに外転装具 ・壊死範囲が広い場合は外転免荷装具 |
| 6-8歳 | 学童期は活動も増し股関節にかかる負担も大きい。骨頭の圧潰が生じやすいので壊死範囲に関わらず外転免荷装具 股関節のが移転制限がある場合は、牽引治療で外転制限を解除してから装具装着 分節期以降などで関節の適合性が不良な場合でも牽引治療で外転制限が解除できれば装具治療 4週間牽引治療をおこなっても外転制限が解除されない場合は、手術を考慮。 片側が残余期に至る前に対側が発症した場合は外転荷重装具に変更 |
| 9-11歳 | この年齢は残余期に十分なリモデリング期間がなく、再骨化期に骨端閉鎖がおこるなど、治療中は良好な経過に思えても最終成績は必ずしもよくないとしている。保存的療法にこだわらず手術を常に念頭に置く。 ・初期で骨頭の圧潰を認めないか極軽度の場合、6-8歳と同様に外転免荷装具を装着。→経過中、骨頭の圧潰により骨頭の外方化や外転制限が生ずれば、手術を考慮。 ・初診時にすでに股関節の適合性が不良→手術を考える |
| 12歳以上 | 成長終了までの期間が短く、containment療法の効果は期待できない。→大人の大腿骨頭壊死に準じた治療を行う。 |
| 装具除去の判断 | 再骨化期の後半で、レントゲン正側面像で骨頭の輪郭が欠損無くはっきり見えるようになってから。装具除去時、加重装具であれば運動制限を更に半年程度行う。免荷装具では、段階的に加重し、半年程度で全荷重とする。 |
発育性股関節形成不全 developmental dysplasia of the hip (DDH)
リーメンビューゲル装具
生後3ヶ月までは生活指導にとどめ、リーメンビューゲル装具は生後3ヶ月より開始し生後6-7ヶ月を適応上限となっています。これは3ヶ月未満は装着による骨頭壊死発生の観点から、生後7ヶ月以降は整復率低下の観点からそのようになっています。施設によっては新生児以降に装着を開始するところもあります。2.5ヶ月~3ヶ月装着します。脱臼が整復されているか超音波断層にて調べます。
豆知識
・腰椎椎体終板障害 modic type1型 初期の化膿性脊椎炎は画像診断だけでは鑑別できない。血液検査や臨床症状で判断
・腰殿部痛 股関節疾患除外のために骨盤正面1Rを追加しておく
・腰椎すべり症 Meyerding分類
下位椎体との前後方向のすべりを4等分して低い順にI,II、III、IVとする
評価法:20%以上の前後面でのすべり、10mm以上の側方すべり、10°以上の椎間板側方楔状化、前後屈で5mm以上のすべりの変化、椎間板腔の後方拡大10°といった所見は不安定性ありとして、手術の際に固定術の適応
腰部神経根症と下肢絞扼症候群との鑑別
1.腰部神経根症(L2,L3,L4)と外側大腿皮神経障害
共通点 大腿外側部に放散する痛み
差異点 腰部神経根症では感覚神経だけでは無く運動神経障害も伴う
2.腰部神経根症(L2,L3,L4)と大腿神経障害
共通点 大腿四頭筋の筋力低下、膝蓋腱反射の低下
差異点 腰部神経根症では股関節内転筋群(閉鎖神経)や腰部傍脊柱筋などの障害
3.腰部神経根症(L2,L3,L4)と閉鎖神経麻痺
共通点 鼠径部から大腿内側部に放散する痛みや感覚障害、股関節内転筋、薄筋(閉鎖神経支配)
差異点 大腿四頭筋(大腿神経)、腰部傍脊柱筋(後枝支配)
4.腰部神経根症(L5,S1)梨状筋症候群(坐骨神経障害)
共通点 坐骨神経領域の痛み、しびれ、麻痺
差異点 梨状筋症候群では中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋(上殿神経)や腰部傍脊柱筋(後枝支配)は正常、大殿筋(下殿神経)は障害
5.腰部神経根症(L5)と腓骨神経麻痺
共通点 足関節と足趾の背屈力低下(深腓骨神経麻痺)および外反筋(長・短腓骨筋)の筋力低下(浅腓骨神経麻痺)、下腿外側遠位と足背部の感覚障害
差異点 L5神経根症では中殿筋(上殿神経)、後脛骨筋(脛骨神経)、腰部傍脊柱筋(後枝)に障害が出る
6.腰部神経根症(S1)と足根管症候群(脛骨神経麻痺)
共通点 足趾や足底の痛みや感覚障害、足内在筋の筋力低下
差異点 S1神経根症では脛骨神経支配の下腿筋(腓腹筋、長趾屈筋)や大殿筋、腰部傍脊柱筋に異常が見られる
小児内反膝(O脚) pediatrics bowlegs
O脚は日常診療でよく見かける疾患です。O脚は生理的なものと病的なものがあり、前者は成長と共に自然に戻ります。小児では、生後1歳半~2歳ごろまではO脚で、その後X脚となり、7歳頃に成人と同じ下肢アライメントになっていきます。従ってO脚が年齢相応の生理的な範囲以内であれば生理的と判断し治療の対象とはなりません。変形が生理的範囲を超えて高度な場合は、原因を明らかにして基礎疾患によっては治療が必要となります。
変形が強いO脚でもレントゲンで病的変化を認めない場合は、生理的O脚であり、多くは自然矯正されます。O脚の治療は原因疾患により、経過観察、装具療法、手術療法に分けられます。
<小児O脚の分類>
1.生理的なもの
2.病的なもの
A.靱帯の異常によるもの
1.先天性欠損あるいは弛緩
2.外傷
B.大腿骨あるいは脛骨、もしくはこれら両方の変形によるもの
1.先天性発育性欠陥によるもの
2.疾病によるもの
a.Blount病
b.くる病
c.骨形系統疾患
d.腫瘍および腫瘍類似疾患
e.骨髄炎
3.外傷によるもの
a.骨端線損傷
b.骨幹部外傷
c.手術あるいは放射線治療による障害
<O脚を呈する疾患>
ポイント:O脚が年齢相応かが大切(1歳半~二歳頃までは生理的O脚で3-4歳になってもO脚であるのは病的)、病的O脚のほとんどがレントゲン撮影で診断可能
1.Blount病
脛骨の骨端軟骨の成長障害で骨の内側が成長せずに外側ばかりが伸びるので内側に曲がっていきます。成長障害の原因は分かっていません。が、骨端部や骨端周辺の内側の成長障害がみられます。少期にO脚を起こす代表疾患です。発症年齢により幼年期型(1-3歳で発症)と思春期型(6-8歳で発症)に分けられます。治療は装具療法を行い、経過中に進行するものは手術を行います。
2.くる病
くる病は通常一歳を過ぎた頃から四肢の変形や小人症が明らかになってきます。O脚変形が多いのですがX脚となることもあります。原因はカルシウムまたはリン酸の摂取不足、ビタミンD代謝障害、ビタミンDへの抵抗性などがあります。ビタミンD欠乏によるくる病は最近増えてきています。日光浴不足や完全母乳栄養によるビタミンD不足が起こっているとされています。
いずれのタイプのくる病も活性型ビタミンDなどの投与を行い治療します。
3.骨系統性疾患
骨軟骨無形成症、骨幹端異形成症(Schmid型)、偽性軟骨無形成症など。遺伝性のものが多いので家族歴の聴取が重要です。
4.骨端線損傷を伴う外傷
その後の成長とともに変形が生じてくることが多い。大腿骨遠位や脛骨近位の骨端線内側に損傷が起これば、成長するにつれて進行性のO脚変形を起こします。
<治療>
小児O脚の治療は原則として、明らかな原因疾患がなければ経過観察をします。観察中に、変形が進行するもの、改善のみられないものは治療の対象となります。まずは装具治療を行います。装具には、足底装具、靴型装具、短下肢装具、長下肢装具などがあります。装着期間は最低でも6ヶ月間は必要で、O脚の改善をみながら徐々に外します。
6-7歳までは装具による治療が期待できるためにそれ以降に変形が残る場合や進行するケースでは手術を考慮します。Blount病は四歳以降で変形が強い場合は手術を行った方がよいとされています。
(参考:小児内反膝 稲葉裕 MB Orthop.28(10):105-112.2015.)
筋性斜頚 torticollis
斜頸には筋性、骨性、炎症性、眼性のものがあります。
筋性:分娩時胸鎖乳突筋の損傷
骨性:生まれつき頚椎や胸椎に奇形がある
炎症性:中耳炎や扁桃炎などの炎症後に、環軸椎の並び方に異常が起こる
眼性:眼の運動をする筋肉の異常。何かを注視すると頚の傾きが大きくなる
先天性筋性斜頸は分娩時の胸鎖乳突筋の損傷が原因とする説が有力で、乳児期での自然治癒率は80-90%とされています。自然治癒は1歳半から2歳と言われており、変形が残った場合は手術を考慮します。手術自体は三歳になるまで待ってから行います。胸鎖乳突筋の瘢痕は残っており、八歳頃に再発することがあります。
斜頸は患側の胸鎖乳突筋が腫大し短縮するため、頚は患側屈位、顔は健側に向きます。生後5日~2週間ほどで腫瘤が大きくなって発見されることが多く、1ヶ月程度で最大となり、以降は縮小していきます。縮小に伴い損傷した胸鎖乳突筋の線維化が進行し、頚椎の可動域制限が起こります。斜頚位は少し遅れて3ヶ月頃に目立つようになります。
診断は斜頸+頚部の腫瘤に対してレントゲン、超音波診断を行います。骨性斜頸などの他の原因による斜頸を除外診断します。年長児の場合は環軸椎回旋位固定による斜頸もあり、開口位レントゲンやCTにて鑑別します。
保存療法は新生児~乳児期に行います。経過観察が中心で、授乳時に患側に顔を向ける目的で、音のするものや光るものを(患側に)置きます。また斜頸枕や砂嚢などを使って頭の位置を中間位または矯正位(患側側)に向けるようにします。マッサージや徒手(用手)矯正は筋組織の損傷が原因であるため、外力を加えることは組織修復を遅らせるので禁忌とされています。
患側の股関節の開排制限や2次性に起こる頭蓋変形や顔面不均斉に気をつけます。
経過は二か月毎に超音波断層撮影を行い、腫瘤の縮小、内部エコーの消失を観察します。生後1年6ヶ月経ても、胸鎖乳突筋の短縮と固く拘縮した索状物がふれる場合は、顔面非対称、頭蓋変形を予防するために観血的手術を考慮します。
手術は胸鎖乳突筋の胸骨・鎖骨付着部の切離または部分切除を行います。(上端、下端切除する施設もあります。)
2歳児以降の筋性斜頸は手術対象となります。(保存的治療で改善が見込めないので)
腰堆分離すべり症
分離すべり症は変性すべり症とはその成因からも異なったものです。腰椎分離症のうち、終末期分離症が2次骨化核が現れるまでに完成したものは80%ですべり症を発症します。2次骨化核が出現してからは10%と著しく減少します。2次骨化核がでるApophyseal
stage (10-17歳)より若い年齢、すなわち2次骨化核が出現していない時期、Cartilaginous stage (4-12歳)に終末期分離症が完成するとすべり症が極めて発症しやすいといえます。
このすべり症は変性すべり症と異なり、椎間板では無く成長軟骨でおこる骨端軟骨障害として治療を考慮する必要があります。分離すべり症の予防はエビデンスのある報告はありませんが、ダーメンコルセットで仙骨前方部分のリモールディングが起こり、すべり率が改善する例があると報告されています。
分離部由来の腰痛は分離部での滑膜様組織の増殖があることから滑膜炎により物理的、化学的な刺激によるものではないかとされています。また偽関節となった分離部は、萎縮性変化や骨増殖性変化がみられます。これら増殖した骨や線維軟骨性組織が神経根を圧迫することにより坐骨神経痛が生じることがあります。
側弯症分類
・特発性側弯症 頻度高(全体の70-80%)
・症候性側弯症 各種の各種症候群、神経筋疾患に伴うもの
・先天性側弯症 椎体の奇形椎によるもの
1)特発性側弯症:側弯以外は健康で、神経筋疾患が無く、椎体の奇形を伴わないもの
発症年齢により以下に分類
A.乳幼児期側弯症(0-3歳児)
B.学童期側弯症(4-10歳)
C.思春期側弯症(10歳-骨成長終了まで)
<king-Moe分類>
Type1:胸椎カーブ、腰椎カーブ共に正中線を超える。胸椎より腰椎カーブが大きい
Type2:胸椎カーブ、腰椎カーブ共に正中線を超える。腰椎より胸椎カーブが大きい
Type3:胸椎カーブ
Type4:長い胸椎カーブ、第4腰椎までカーブが至る
Type5:二重胸椎カーブ、第1胸椎の傾斜を伴う
<特発性側弯症の自然経過>
進行の要素:カーブ自体と成長、大きなカーブは進行しやすい。ダブルカーブはシングルカーブより進行性が高い。若年ほど進行の危険性は高い。Risser sign(骨盤の骨端線)成長に伴い進行は起こりにくくなる。
Risser sign(骨盤の骨端線):腸骨稜の骨端軟骨は成長に伴い前方から後方へ閉鎖していく。
Grade 0:骨端線の閉鎖が始まっていない
Grade1:外側4分の1まで閉鎖したもの:思春期前or初期、女子では10-11歳
Grade2:外側から半分まで閉鎖したもの:成長率ピークor直前
Grade3:外側から4分の3まで閉鎖したもの:成長が鈍化
Grade4:内側後方まで閉鎖したもの:ほとんど成長が終了
Grade5:完全に閉鎖したもの:成長停止、女子では18歳前後
Risser sign(骨盤の骨端線)が低いほど側弯が進行する可能性がある。
| Risser sign(骨盤の骨端線)とカーブの大きさによる治療法の分類 | ||
| Risser Grade | カーブの大きさ | 治療方針 |
| 0-1 | 1-20° | 経過観察 |
| 0-1 | 20-40° | 装具 |
| 2-3 | 0-30° | 経過観察 |
| 2-3 | 30-40° | 装具 |
| 0-3 | 40-50° | 手術? |
| 0-4 | 50°< | 手術 |
<特発性側弯症の治療>
Cobb角が20°未満 成長期であっても経過観察 定期的にレントゲン撮影(3,6,12ヶ月毎)
Cobb角が25-40°は装具療法。(若年者は20°以上で)
Cobb角が40-50°以上は手術療法
小児の脊柱側彎症2 装具療法
装具療法
1.Milwaukee brace 頚椎も固定するのでコンプライアンスが悪く、あまり使われていない。
2. underarm brace ボストンブレース、大阪医科大学式(ボストン式に高位胸椎パッドを装着)
・ボストンブレース
腰椎、胸腰椎カーブに適応、胸椎カーブには立ち直り反射を期待する。立ち直り反射がない場合は適応外
・大阪医科大学方式
ボストンブレースに王位胸椎パッドを装着し胸椎カーブにも強制力が加わる
小児の脊柱側彎症3 装具療法開始後の経過観察
装具装着後は1ヶ月後に受診し、レントゲンにて矯正の確認が必要です。その後は3-4ヶ月に一度、受診しレントゲンで経過をみます。出来るだけ長時間の装着をする方が効果的で、Rsser
gradeIIIまでの患者は常時装着を、Risser grade IV以上ではパートタイム装着とします。一日、18時間以上の装着で成功率が高いと報告されています。
小児の脊柱側彎症4 装具療法の終了時期
どの時点で装具を終了するかは難しいとされています。
一般的には
1.角度が5%以上進行しない
2.身長の伸びが終了
3.初潮や声変わりから2-2年半経過
4.Rsser Grade IV以上
5.性成熟が十分
Risser grade Vまでパートタイムで装着する方が安全とする意見があります。
野球肘 外側型 離断性骨軟骨炎に対する積極的保存療法
立原らが提唱する運動制限を最小限度とする保存療法のこと。病期に関わらず局所の疼痛、圧痛のある時期のみ投球を禁止し、この間に肩甲胸郭関節と股関節の柔軟性と機能改善を行う。安静期間はおよそ1ヶ月とし、局所症状が改善した時点で投球動作を許可する。復帰後も定期的に経過を診て、疼痛や引っかかり感、病巣の拡大などが診られる場合は手術を併用。
野球への早期復帰が目標であり、レントゲン上の完全修復をめざすものではない。61%の症例で手術を要していることから、手術を前提とした保存療法である。