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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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 平成29年1月1日(日) 元旦 謹賀新年 明けましておめでとうございます。
 平成29年1月2日(月) 正月休み
 平成29年1月3日(火) 正月休み
 平成29年1月4日(水) 正月休み
 
平成29年1月5日(木) 平常通り診療します(午前診のみ)

 
本日のコラム56 腰痛体操

 腰痛体操はネットで調べても数多あって、どれが良いのか分からないのが実情と思われます。これらの多くは、Mackenzie法から派生した変法であることが多いです。Mackenzie法はオーストラリアの理学療法士Mackenzie氏が、偶然発見した治療法です。その経緯は、前の患者さんのために治療ベッドを半起坐位にしてあったのが、電話が掛かってきて対応しているうちに、次の患者さんがその
ベッドに腹臥位で寝てしまったのです。背中が大きく反った体位で寝てしまいました。ところがその結果、長年の腰痛が随分と緩和しました。こんな偶然の出来事で始まったMackenzie法ですが、今では世界中に広まって実践されています。

 オリジナルなMackenzie法は、腹臥位で背中を反らすだけのシンプルなものです。このときに強い痛みや下肢に放散する痛みが無いことが大切です。
 
 
平成29年1月6日(金)
  本日のコラム57 近頃、腱炎は腱症と呼びます

 かつて習った「○○腱炎」は「○○腱症」と呼称が変更になっています。理由は、これまで臨床的に「腱炎」と診断した状況でも、腱の「炎症」所見が組織学的には少なく、「変性」が中心となっているからです。であれば「腱症」じゃなくて「腱変性症」の方が分かりやすいようにも思います。「アキレス腱炎」は「アキレス腱症」に、「足底腱膜炎」は「足底腱膜症」と分かったような分からない名前に変わってきています。

 実は、この「変性」がくせ者で、あちこちの腱で起こります。特に力が掛かったりよく使うところで、じわじわ進んで病状を悪化させます。
 
 
平成29年1月7日(土) 本日のコラム58 腱症、腱付着症の超音波像

 腱に痛みが生じても、実際には組織学的に炎症所見に乏しく、変性が中心となっているために、腱炎、付着部炎とは言わずに腱症、付着部症と言い換えることになっています。臨床所見として疼痛、圧痛、腫脹があり、超音波でみると、肥厚し、fibrilllar pattern不整があり、またカラードップラーでは、腱内や周辺脂肪織に新生血管が増生しています。

 <足関節周辺疾患の超音波像>

 アキレス腱症:アキレス腱とその下方にある脂肪性結合組織(kager's fat pad) 内への新生血管の増生を認めます。
 アキレス腱付着部症:腱部に同様の所見を認めます。
 後脛骨筋腱機能不全:成人扁平足の病因の一つ。腱部に同様の所見を認めます。
 後脛骨筋腱付着部症:停止部は舟状骨底部にあり、その後足底に分枝し楔状骨、中足骨基部に停止します。有痛性外脛骨との鑑別は臨床的には困難。MRIで外脛骨障害は骨髄浮腫を認めます。腱付着部症は超音波で判断。
 腓骨筋腱脱臼:外傷を契機に、上腓骨筋支帯が外果表面より剥離し、仮性嚢が生じ、腓骨筋腱が仮性嚢内へ外果を乗り上げるように脱臼します。脱臼の再現性がない場合は、上肢筋支帯の剥離(仮性嚢)の有無を確認します。

 
 平成29年1月8日(日)
 平成29年1月9日(月) 成人の日
 
平成29年1月10日(火) 本日のコラム59 腱症、腱付着部症のMRI

 腱はI型コラーゲンが97−98%を占めており、均一な構造の繊維で、水分含有量が他の組織より低いので、MRIではどのシ−クエンスでも低信号となります。靱帯もほぼ同様にMRIでは低信号に見えます。腱の太さは筋腱移行部を除いて、付着部までほぼ均一な太さに見えます。

 正常な腱はどのシークエンスでも低信号なので、信号が高ければ腱の異常があります。(magic angle effectを除外)腱の変性は、腱の長軸方向に沿った信号上昇(刷毛状)がみられます。腱鞘は通常のMRIでは見えない。腱の周囲に液体貯溜が認められる場合は腱鞘を指摘できることがあります。滑液包も正常では同定できません。指摘できるときは、滑液包に何らかの病的な状態が生じています。アキレス腱周囲のパラテノンもMRIでは指摘できないのが正常です。
 
 
平成29年1月11日(水)  本日のコラム60 アキレス腱痛症(achillodynia)

 アキレス腱の障害を総じてアキレス腱痛症といい、非付着部アキレス腱症とアキレス腱付着部症に分けられます。非アキレス腱付着部症は、アキレス腱症(実質部の変性)とアキレス腱周囲炎(パラテノンの炎症)に分けられます。

 いずれもover use 障害ですが、急激な負荷や不適切な靴なども一因となっています。更には加齢や下腿三頭筋の柔軟性の低下、過回内足なども負荷を増大させています。

 治療は、4-6週間、保存療法を行って抵抗性のある難治性のものは、手術療法を考慮します。保存治療は、まず2-6週間の安静とスポーツ活動の休止を行い、抗炎症薬、外用薬、局所のアイシングなどを行います。エキセントリックエクササイズが有効で急性期が過ぎれば、ステップの段差を使ってアキレス腱のストレッチ運動を行います。(3ヶ月、1日2回、15回3セット)この運動は、動作に支障が出ない限り痛みが出ても継続します。
 
 注射療法:ステロイドの注射は、腱内への投与は原則禁忌と考えられています。アキレス腱周囲炎に対しパラテノン内にヒアルロン酸を注射することがあるが、有効性についての報告は少ない。


手術療法:保存療法を少なくとも4ヶ月以上行っても有効で無い難治例は手術療法を考慮します。術式は腱内変性組織の除去、腱周囲の癒着の除去、足底筋腱の切離、長母指屈筋腱移行術など。
 
 その他の治療:体外衝撃波療法、自己血血小板血漿注入療法、硬化療法 (いずれも保険適応外 2016年現在)

 
 
平成29年1月12日(木)
  本日のコラム61 アキレス腱付着部症 insertional achilles tendinopathy

 狭義のアキレス腱付着部症はアキレス腱付着部に骨棘を認めるものをいい、踵骨後部滑液包炎や踵骨皮下滑液包炎(アキレス腱皮下滑液包炎と同じ)とは区別します。

<踵骨後部滑液包炎>

 踵骨の後部でアキレス腱前方に生じる滑液包炎です。踵骨上縁レベルでアキレス腱のすぐ前方に圧痛があります。治療は、保存療法が第1選択となります。NSAIDsや局所安静、アイシングが有効です。急性期以降は、アキレス腱の遠心性収縮運動(ステップを使って荷重をかけた足関節の伸展〜屈曲)などを行います。ヒールをあげたときに、後足部の外がえしや回内の有無をチェックして矯正します。5−10mmのヒールリフトを目的として足底板も有効です。

 超音波ガイド下にヒアルロン酸や局所麻酔薬の注入も効果があるとされています。ステロイド注入はリスクがあるため、余程のことが無い限り行わないようにします。(強い炎症に対し単発のみ)

 手術は3-6ヶ月の保存療法に抵抗性の場合に考慮します。鏡視下にて踵骨後部の滑液包内の滑膜組織の切除と踵骨後上隆起の切除をします。

 <狭義のアキレス腱付着部症>
 
 アキレス腱付着部の痛みと圧痛が生じます。特に起床時に痛く、数歩で症状は緩和することも多いので、運動を繰り返すうちに悪化することがよくあります。治療は、保存療法を第1選択とします。炎症が強い時期は、消炎鎮痛剤、局所安静、アイシングが有効です。急性期を過ぎるとアキレス腱の遠心性収縮運動を行います。またヒールリフトを目的として足底板も有効です。

 3-6ヶ月の保存療法に抵抗性の場合は手術を選択します。骨棘や腱内石灰化、変性部位の切除を行います。
 
 
平成29年1月13日(金)
  本日のコラム62 アキレス腱断裂

 アキレス腱断裂の三大徴候
 1.下腿後縁下部に空くレス腱断裂部の陥凹(delle)
 2.患側でのつま先立ちが不可能
 3.Tompsonテストが陽性

 ・保存療法の適応
  年齢、性別、スポーツレベルの高低を問わず、受傷後5日以内の新鮮アキレス腱皮下断裂は全例適応となります。(病的断裂、陳旧性断裂は除く)それ以降は、断端が周辺組織と癒着し、足関節を底屈しても断端同士が接触しない。→2週間以内で超音波検査で断端が寄るのであれば保存適応とする意見もあります。

 受傷時から6週間の膝下ギプス固定+その後、4週間の短下肢装具とします。

 受傷後→最大底屈位(約50度以上)で膝下ギブスを2週間(ヒールタッチ)
     →3週間目:30度底屈位(軽度部分荷重)
     →5週間目:軽度底屈位(全荷重、ヒール付きギブズ)
     →7週間目:踵にくさびパットを入れた短下肢装具 4週間装着 全荷重

     受傷後3-4ヶ月でつま先立ち、ジョギングの開始、受傷4ヶ月まではジャンプ、ダッシュなどの過度のストレスは控える
     6-7ヶ月で片足つま先立ち可。

(杏林大学方式)

 断端部でのドップラー超音波所見:1ヶ月より新生血管、3ヶ月がピークでそれ以降、血管の描出は減っていきます。6ヶ月で更に減少、12ヶ月でわずかになります。

 *保存療法の適応に超音波診断が極めて有効です。底屈位で断端が寄らないケースでは再接着は難しいと考えられます。

 *施設により治療のプロトコールは若干異なっています。
 
 
平成29年1月14日(土)
 本日のコラム63 外反母趾

 外反母趾は、西洋型の生活様式で靴を履くようになってから増えています。特に女性がハイヒールを長期間履くとなり易いと言われています。これは足の前3分の1体重が掛かるのと中年以降に体重増により足のアーチが崩れて起こるとされます。

 保存治療は足のアーチを改善させる足底板(母趾を内反させる機能を付加することあり)や足の体操(グーチョキパー、ホーマン体操、内がえし、外がえし、タオルつかみ)を行います。

 *ホーマン体操とは、両母趾に太めの輪ゴムをかけて足の前方を開きます。母趾はゴムの力で相対的に内転します。

 靴は母趾根部〜小趾根部が包み込まれてフィットするものを選択します。幅広なものを選びがちですが、これは横アーチが潰れたままになり易いのでよろしくありません。痛みが出ない程度にフィットしたものを履きましょう。

 手術は、仕事や日常生活に支障がある場合に考慮します。例えば、仕事でどうしてもハイヒールを履かざるを得ず、保存治療に抵抗して痛みが続く場合などは手術を選択します。
 
 平成29年1月15日(日)
 
平成29年1月16日(月) 本日のコラム64 骨端軟骨損傷の分類(Salter-Harris分類)

 大人には無い小児特有のケガです。骨端軟骨は、成長期の子供の骨が伸びるために、骨に挟まっている板状の軟骨のことです。ここから骨が新生されて成長します。骨に比べて脆弱なため、外傷で骨折がなくとも、骨端軟骨が損傷していることがよくあります。

typeT:骨端軟骨の完全な分離。骨折を伴わない。
   幼少児。一般に成長障害は残さない。

typeU:高頻度に起こります。骨端軟骨の分離と骨幹端の三角骨片。
   年長児に多い。整復は容易で成長障害を起こす事は少ない。

typeV:まれ。骨端軟骨板の分離+骨端の長軸に沿った関節内骨折。
   まず関節面の整復を行うと軟骨板の整復も出来る。成長障害はほどんどない。

typeW:関節面から骨端軟骨板をこえて骨間端部にいたる縦骨折。
   上腕骨外顆骨折でよくみられる。成長障害(内反肘、外反肘)を起こしやすい。

typeX:長軸方向の外力で骨端軟骨板が圧挫される。
   足関節・膝関節などの加重が強く働く部位で起こりやすい。レントゲン上、転位がないため診断は困難。
   圧挫された軟骨板の早期閉鎖が起こり、成長障害や変形を来たし易く、最も予後不良のタイプである。

 
 
平成29年1月17日(火)  本日のコラム65 モートン病

 足の趾神経が中足骨骨頭に挟まれて、締めつけられ圧迫されることにより神経が炎症を起こして太くなり、更に圧迫されやすくなり症状が悪化します。症状は足を踏み返す時に起こる鋭い痛みです。足の横アーチが崩れることによって圧迫されやすくなります。

 治療としては横アーチを形成する足底板を作成し装着します。また趾神経が交叉している指の付け根に痛み止めと炎症止めの注射をします。またグーチョキパー体操も効果があります。

 これら保存治療で改善しない場合は、炎症で腫れた趾神経を切除します。この趾神経は切除しても、あまり困ることは無く、2,3年後には感覚が回復してくるとされています。
 
 
平成29年1月18日(水)本日のコラム66 尿酸の排泄を促すカゼイン

 カゼインは牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品に含まれているタンパク質です。カゼインは腎臓に働きかけて尿酸の排泄を促します。この結果、高尿酸血症の改善につながります。現在、投薬を受けている方でも乳製品を通してカゼインを摂取するとよいでしょう。

 コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールは尿酸値を下げる作用があり、1日コーヒーを4杯以上飲むと痛風発作を半分ぐらいに抑える作用があるとされています。(ただし3杯以下では効果が殆ど無い。)カフェインに弱い方は、デカフェインのコーヒーを飲むのがよいですね。
 
 
平成29年1月19日(木) 本日のコラム67 骨粗しょう症薬ビスフォスフォネートと顎骨壊死

  ビスフォスフォネートの副作用として顎骨壊死があります。最近のデータでは、経口のビスフォスフォネートで起こることは少ないとされており、少なくとも服用期間が3年未満は歯科治療時に休薬は必要ないとされています。3年以上経過したものは、歯科医と相談して決めるように推奨されています。

 ビスフォスフォネートは長期間、組織内に残存するので、投薬5年後に休薬しても効果は変わらないとされています。その観点からは歯科治療時の休薬は意味が無い可能性が示唆されています。(ただし3年以上経過後の歯科治療は歯科医と相談しましょう。)

 注射剤は顎骨壊死を誘発する可能性があり、歯科治療時には中止し休薬をした方が良いとされています。

(2017.1現在)

 *今後、変わるかも知れませんのでご注意ください。
 
 
平成29年1月20日(金)  本日のコラム68 scheuermann病

 思春期に発症する脊椎の変形が起こり、背中の痛みや円背(後弯変形)が生じます。原因はよく分かっていません。成長につれて胸椎を中心に後弯変形が起こり、このために遷延する背部痛や腰痛などがみられます。

 治療は、成長期には悪化を防ぐためにコルセットを装着します。成長期が過ぎれば、ストレッチや筋力強化などを中心に行います。
 
 
平成29年1月21日(土) 本日のコラム69 腰椎分離症 骨癒合を目指す装具療法

 
スポーツの休止期間:分離初期で3ヶ月、進行期で半年程度、体幹硬性装具。腰椎伸展制限と回旋予防を行う。(胸郭と骨盤をしっかり把持できる長さが必要。)→CTで骨癒合が確認できるまで着用する。硬性装具後→スポーツ復帰用軟性装具(ライトブレーズRS、アルケア社)を2-3ヶ月装着する。

 進行期のうち骨癒合の可能性が低いType、骨油後婦の可能性が無い終末期では、骨癒合は目指さず、痛みが無い分離症の状態を目指します。伸展制限ができるスポーツ復帰用軟性装具(ライトブレーズRS、アルケア社)を装着する。

腰椎の骨年令とすべり症の関係 
 Cartilaginous stage (C stage)   椎体と椎間板の間にある二次骨化核が骨化する前 ほぼ小学生 5mm以上のすべり症に移行80%   分離症のstage関わらず硬性体幹装具
 Apophyseal stage (A stage)  成長軟骨が残存   ほぼ中学生  すべり症に移行10%  骨癒合をめざす 硬性装具の適応
 Epiphyseal stage (E stage)」
 椎体と癒合して成長が終了  ほぼ高校生  すべり症への移行0%  スポーツ用のライトブレース
 大人はすべて終末期(トップアスリートを除く)
 
 平成29年1月22日(日)
 
平成29年1月23日(月)
 本日のコラム70 高齢者の脊椎椎体骨折

 初期治療は、安静と外固定(装具)が基本となります。

 <外固定の選択基準>

 ダーメン型軟性装具:脊椎後彎変形がすでにある。偽関節に注意。
 硬性装具(モールド型、ジュエット型、フレーム型):初発の椎体骨折で胸腰椎移行部で後弯変形が強く無いもの

 *中位胸椎(T6−10)、中下位腰椎(L3-5)で後壁が保持されている安定型の椎体骨折は軟性装具でも対応可能
 *いずれの装具も骨折椎体の上位3椎体まで固定できる長さを選択する
 
 
平成29年1月24日(火) 本日のコラム71 突き指(腱性、骨性槌指) mallet finger

 <装具治療のポイント>

 腱性槌指:DIP軽度伸展位で8週間固定。装具装着8週目より10回/日でDIP関節の自動屈曲運動を開始、9週目からは1日2セット。装着後10週から12週は夜間のみ装具を装着します。経過中、伸展角度が悪化する場合は、前のステップに戻して、固定期間を延長します。

 陳旧性腱性槌指:まずは伸展位固定を試してみます。(陳旧例の手術の成績は安定していない)、不良角度の改善は期待できます。

 骨性槌指:DIP伸展位での固定。6週間ほどで改善することも多い。骨癒合が得られなくとも、線維性癒合が得られDIPが伸展できれば問題なし。当初の腫脹が強い場合は、徐々に伸展位をとるように工夫します。

 *治療中にPIP関節が過伸展となっていくことがあり、この場合は、PIP関節に伸展制限装具を装着します。PIP関節窩伸展を予防するために、当初2週間、DIP関節伸展位、PIP関節屈曲位でアルフェンスシーネ固定を行う施設もあります。

参考文献:整形・災害外科60:35-42 2017 手指の腱損傷治療における装具治療 森崎裕
 
 
平成29年1月25日(水) 本日のコラム72
 手指の腱損傷

 伸筋腱断裂:開放性は手術、閉鎖性ではほとんどが保存療法
 屈曲腱断裂:原則手術

 <伸筋腱損傷とzone分類>

 1.Zone1 DIP関節周辺 槌指損傷を参照

 2.Zone2 1-2の間(中節骨骨幹部あたり) 中節骨背側 殆どが開放性損傷 片側の側索が残っていれば修復不要と言われ、一般的には50%以上の損傷で修復術。腱縫合後、mallet装具などを用い、DIP伸展位で6週間程度固定。

 3.Zone3 PIP関節周辺
  閉鎖性:PIP背側に腫脹・圧痛、PIP関節自動伸展運動が可能でもElsonテストを実施する。
  開放性:中央索の損傷をみる。Elsonテストなどで判断に迷うときは、損傷ありとして治療。  
 保存治療:PIP関節伸展位固定を6週間。(DIP関節の自動屈曲運動は励行。)6週以降はCapener splintを用いて自動運動を開始。Capener splintは夜間伸展位固定と合わせて装着から4-6週間継続

 *Elsonテスト PIP関節最大屈曲位でDIP関節が伸展できない→正常、伸展できる→断裂

 4.Zone4 3と5の間(基節骨背側)、基本的には開放損傷。両側の側索を含めるとかなりの幅があり、切創で完全断裂は起こりにくい。一般的に50%以上の損傷で修復を行う。腱縫合後は、手関節伸展20°、MP関節・PIP関節伸展位で4週間固定、または屈曲を制限したOuttrigger装具を使用。

 5.Zone5 MP関節 

 ・伸筋腱脱臼:Saggital Bandの損傷。多くは橈側の損傷で尺側へ伸筋腱が脱臼する。従来は伸展位固定であったが、現在はRerative motion sprintで治療する。(利点:MPが動かせる。復帰が早い。) 8週間の装着→6週間でも問題ないとしている。

 *Rerative motion sprint アルフェンスシーネやプラスティックギプス(サインカーブで二峰性として挟み込む)を用いて患指を両側の指より15-20°伸展を保ちつつ屈伸運動が可能。

 ・伸筋腱断裂:基本は開放性損傷。以前は腱縫合後、4週間のMP関節伸展位固定、今はRerative motion sprintを6週間装着。

6.Zone6 手背部:基本は開放性損傷 Zone5同様にRerative motion sprintで良好な成績

7.Zone7 手関節部:基本は手術適応で、開放性損傷は腱縫合、関節リウマチや遠位橈尺関節症などで皮下断裂では腱移行や腱移植。

<屈筋腱損傷>

 断裂の場合は、いずれも手術を要する。Kleinert法装具、早期自動運動療法など

 参考文献:整形・災害外科60:35-42 2017 手指の腱損傷治療における装具治療 森崎裕
 
 
平成29年1月26日(木) 本日のコラム73 側弯症の装具

 40°を超える側弯は、成長終了後も進行しやすい。できれば40°未満に抑えて手術を避けることができれば理想的。

 ・装具の適応

 ある程度側弯が進行し、今後も成長に伴う進行が予想される場合で、具体的にはCobb角25-45°、Risser signが0-3が良い適応。Risser4でも進行することがあるので適応あり。

 胸椎カーブで25°以上、胸腰椎カーブや腰椎カーブでは20°以上で装具。

 <装具治療開始時>

 目的は側弯の進行を予防し手術を回避すること(治ることは無い)
 装着時間が長いほど効果が高い
 今しか頑張れるときは無い
 精神的なストレスに配慮
 
<装具治療終了の時期と方法>

 身長が伸びている間は側弯も進行するので装着を続ける。身長が伸びなくなったら(年間1cm未満)、装具の離脱をはかる。離脱の条件は、Risser4以上、初潮から2年以上経過があるが、身長が止まれば、これらの条件は大抵満たされている。フルタイム装着例では夜間のみのパートタイムに変更し、側弯の進行が無くなったら完全離脱とする。

<装具治療の問題点>
 ・装具が装着できない 痛み、不快感、理解不足、精神的ストレス
 ・効果の不確かさ フルタイムの装着でも進行を止められずに手術に至ることもある。
 ・上位胸椎カーブや胸椎前弯例への矯正には限界がある。

参考文献:整形・災害外科60:51-57 2017 側弯症装具 柳田晴久 福岡市立こども病院

 
 
平成29年1月27日(金) 本日のコラム74 装具装着による体幹筋萎縮は起こるのか?

 腰のコルセットなど体幹装具を連続して4週間装着すると腹斜筋(外、内)、腹横筋が萎縮すると報告されています。筋肉は負荷が減少するなど使わなければ、萎縮は普通に起こります。2-3週間、ギブス固定をすると手足が細くなるのはよく経験することです。もちろん、こういった萎縮を予防するために、等尺運動などを並行して行うようにします。

 漫然と装着するのでは無く、適切な効果判定を行いながら指導することが大切です。
 
 
平成29年1月28日(土)  本日のコラム75 ペルテス病の装具治療の考え方

 ペルテス病における装具療法の目的は、大腿骨頭の壊死した部分を球形に再生させることです。このため、装具は骨頭を外転、内旋させるようにします。(潰れているところへの荷重を避けるようにします。)

 両側装具と患側のみの片側装具があります。片側装具の方が歩行しやすいが、患側yへの体重が掛かりやすい。このための両側装具を用いる施設も多い。ただし、6歳以上の子供は小学校で恥ずかしがって、なかなか装着してくれないという問題があります。


 6歳以上では、(両側装具を装着したがらないケースなどで)患肢非荷重の松葉杖歩行ができれば、それに切り替えることもあります。

 参考文献: 渡邊英明ほか:小児股関節疾患に対する装具、整形・災害外科,60:59-65, 2017
 
 平成29年1月29日(日)
 
平成29年1月30日(月) 本日のコラム75 モートンパッド Morton pad

 モートン病に使う足底板:アーチをサポートすることにより、足部中足骨骨頭の負荷を軽減させます。モートン病(神経の腫れ)が存在する中足骨遠位直下に足底板を入れると症状が悪化することもあるので、前足部のやや近位に入れて横アーチを形成するようにします。
 

 
平成29年1月31日(火) 本日のコラム76 アイシングは効果的か?

 外傷における急性期治療として、RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)があります。

 アイシングの効果は、局所の温度を下げ、炎症で起こる過度の血管拡張が抑制され、局所の循環血液量も減少します。また疼痛の軽減にも効果的です。疼痛物質であるブラジキニンの濃度が高くなると、通常42°で反応する侵害受容器が32°で励起され、体温で痛みの刺激が起こるので、局所を冷やすことにより侵害受容器の反応を抑えます。

 アイシングの方法は、1時間毎に15-20分冷やします。目安はジンとしびれて痛みを感じなくなる状態になれば、アイシングを休止します。連続して行うと、低温やけどを起こしますので注意が必要です。眠りながら冷やすの管理の面で良くないと考えます。