池田医院
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして
整形外科 外科 リハビリテーション科

診療日記 2017年2月

1日

(水) 本日のコラム77 子供の扁平足

 6歳以下の子供では、軟骨も多く、足底板が有効です。またできるだけ素足で過ごす。つま先立ち体操を行う、ケンケンなど、効果があるとされています。足底板は縦アーチに加えて横アーチをサポート(メタタルパッド)するように作成します。

2日

(木)  本日のコラム78 口周りのしびれは脳梗塞かも知れません。→ただちに専門病院へ

 朝、目が覚めたら口の周りがしびれていた。これは重要な症状で脳梗塞が生じた可能性が高いので最寄りの専門病院をただちに受診するようにしてください。MRIの検査をすると脳梗塞の有無が分かります。。超早期だとCTでは所見が無いことがありますので要注意です。口周りのしびれに加えて、片側上肢のしびれ感がでていれば、まず脳梗塞です。上肢のしびれは口のしびれに遅れて出てくることがあります。

 さて、上肢のしびれだけだとどうでしょう?これは整形外科にも来院される可能性があります。朝起きたら、急にしびれていた。このような場合は、まず脳梗塞の有無を検討します。脳梗塞は急に症状が出ます。そして徐々に進行することがあります。ある日突然、起こった場合は脳梗塞を疑いただちに最寄りの専門病院へ行きます。ここでもたもたしていると脳梗塞の治療が十分できないので、可能な限り、早く受診することです。かかりつけ医の先生に診てもらうより直接、専門病院を救急受診した方が良いです。

 手指だけのしびれ、尺骨神経のみの障害、橈骨神経のみの障害、通常は頚椎以下の末梢神経の障害とされる神経症状でも、特殊な脳梗塞では、同じ症状を起こすことがありますので、くれぐれも間違わないようにしてください。急速に起こった場合は、脳梗塞の可能性があります。

3日
 
3日(金)  本日のコラム79 FAI(大腿骨-寛骨臼インピンジメント)(*:狭義)の診断指針(日本股関節学会、2015)

 FAI(大腿骨-寛骨臼インピンジメント)の概念は、股関節運動時に寛骨臼辺縁部と大腿骨頸部もしくは大腿骨頸部移行部付近が、繰り返し衝突(インピンジメント)することによって寛骨臼縁の関節唇および関節軟骨に損傷が生じる病態とされています。既知の疾患のあるものは除外します。

 pincer type と cam type があります。(両方あるものは,mixed type) pincer type FAIは寛骨臼辺縁の過剰な被覆であり、Cam tope FAIは大腿骨頭・頚部移行部の骨性隆起により生じます。両者はまったく別の病態と考えられています。

 Cam type は、関節鏡の良い適応です。臼蓋形成不全を有する症例をpincer typeと誤って臼蓋辺縁部のトリミングを行うと変形性股関節症をが進行してしまう。

 *:明らかな股関節疾患に続発する骨形成異常を除いた大腿骨-寛骨臼インピンジメント

 日本股関節学会指針(案)FAIの診断基準(2015)
  Pincer typeのインピンジメントを示唆する所見
1.CE角40度以上
2.CE角30度以上かつARO0°以下
3.CE角25度以上かつCross-over sign陽性

*正確なX線正面像による評価を要する。特にcrossover signは擬陽性が生じやすいので、3の場合はCT.MRIで寛骨臼のretroversionの存在を確認することを推奨する。
  身体所見
前方インピンジメントテスト陽性(股関節屈曲・内旋位での疼痛誘発を評価)
股関節屈曲・内旋角度の低下(股関節90°屈曲にて内旋角度を健側と比較する)

Patrickテスト(FABERテスト)陽性(股関節屈曲・外転・外旋位にて疼痛誘発)も参考所見として用いられる。(他の股関節疾患、仙腸関節疾患でも高率に認められるので注意が必要。)
  Cam typeのインピンジメントを示唆する所見
CE角25度以上
主項目:α角(55度以上)
副項目:Head-neck offset(8mm未満)、
Pistol grip deformity、Herniation pit
(主項目を含む2項目以上の所見を要する)
*X線、CT、MRIのいずれによる評価も可。
  診断の目安 上記の画像所見を満たし、臨床症状(股関節痛)を有する症例を臨床的にFAIと診断する。
  除外項目

 以下の疾患の中には2次性に大腿骨-寛骨臼インピンジメントをきたしうるものがあるが、それらについては本診断基準をそのまま適応することはできない。

・既知の股関節疾患

炎症性疾患(関節リウマチ、強直性脊椎炎、反応性関節炎、SLEなど)、石灰沈着症、異常骨化、骨腫瘍、痛風性関節炎、ヘモクロマトーシス、大腿骨頭壊死症、股関節周囲骨折の既往、感染や内固定材料に起因した関節軟骨損傷、明らかな関節症性変化を有する変形性股関節症、小児期より発生した股関節疾患(発育性股関節形成不全、大腿骨頭すべり症、ペルテス病、骨端異形成症)、股関節周囲の関節外疾患

・股関節手術の既往

 1次性もしくは特発性としてのFAIと小児疾患や外傷の既往歴があるのもを2次性のFAIとする考えもあります。
4日

(土) 本日のコラム80 大腿骨頸部内側骨折

 Garden分類

Stage Ⅰ:不完全骨折。頸部内側の骨性連続が残存。

Stage Ⅱ:完全骨折。軟部組織の連続性は残存し、骨折部は嵌合。

Stage Ⅲ:完全骨折。回転転位があります。頸部被膜(Weitbrecht支帯)の連続性は残存。

Stage Ⅳ:完全骨折。すべての軟部組織の連続性が断たれている。

 大腿骨頸部内側骨折は血流の関係で、骨折すると自然治癒が難しいとされています。また高齢者では保存治療に要する時間が長くかかり、寝たきりや就下性肺炎などを起こし易いので原則手術をすることが勧められています。それでは全例で手術をするのかというとそうでもなく、Garden分類のStage
Ⅰ、IIには保存治療が選択されることもあります。経過中、骨頭壊死を起こせば、人工骨頭置換術を考慮します。

 全身状態が悪く手術に耐えられと判断される場合や手術を拒否される場合も行いません。

5日

(日)

6日

(月) 本日のコラム81 重症骨粗しょう症の治療

 骨粗しょう症がベースにあり骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨骨折、橈骨骨折など)を起こした場合は、重症の骨粗しょう症として治療を行います。逆にこれらの骨折を起こした高齢の患者さんは、骨粗しょう症の有無、程度を検索する必要があります。

 最近、重症の骨粗しょう症の治療として、副甲状腺ホルモン製剤を使うことが広まってきています。他の骨粗しょう薬に比べて効き目が良く、骨折の予防や骨量の改善をはかることができます。経口薬ではなく注射剤ですので少し手間が掛かります。また薬剤費が高いのが少し気になりますが、期間限定(薬剤の種類によって18か月~24ヶ月が上限)で、将来の骨折を防ぎ、寝たきり予防となりますので、骨への先行投資と考えて頂ければ良いと思います。

7日

(火)   本日のコラム82 頚性めまい cervical vertigo

 めまいを起こす病気は沢山あります。めまいは「回転性」めまいと「浮遊性」めまいに分けられます.回転性めまいはぐるぐると天井が回るように感じます。不遊性めまいは「ふわふわ」「グラグラ」した感じがします。

 人は、目(視覚)、耳(前庭)、頚(頚部筋)、手足(四肢感覚)にある位置感覚器から来る情報を総合的に脳が判断して、今身体の各部位がどの位置にあるかを認識します。このそれぞれの入力が一致すれば、問題ないのですが、何らかの原因で例えば、耳の内耳障害が発生すれば感覚がばらつくために、めまいとして脳が感じてしまいます。

 めまいを起こす病気としては、耳(突発性難聴、Meniere症候群など)、目(視力異常)、頸部(頚部筋緊張異常)、血圧低下、うつ状態、小脳・脳幹障害、大脳疾患があります。

 

 整形外科では、頚性めまいをよく診ることがあります。めまいというと耳や脳の障害をまず考えるので、脳神経や耳鼻科で調べて貰っても特に問題が無いので受診されることが多いです。頚性めまいの特徴は、頸部から肩にかけての筋緊張が強く、特に左右差がある場合に起こりやすいとされています。

 頚性めまいは、筋肉の緊張が主因ですので、筋肉を和らげるお薬を飲んで頂くと、数日で改善することが多いです。

8日

 

8日(水) 本日のコラム83 鎖骨遠位端骨折



 小さな骨折はなかなか分かりにくいものです。診察に加えて、超音波検査とレントゲンを組み合わせると明らかになることもよくあります。やはり超音波検査(エコー)を如何に駆使できるかが診断能力の分かれ目のように感じます。
 



レントゲンでは、左鎖骨遠位端に変形と骨折線がわずかに見えます。





超音波でみると骨折部のずれが描出されます。肩鎖関節の脱臼を伺わせる像も認めます。

9日

(木) 本日のコラム84 軟骨は再生しないのか?

 骨折すると内固定や外固定を行うことによって速やかに治ることが多いのですが、軟骨の損傷は、いったん起こると治りにくいとされています。そもそも骨の再生に比べて軟骨の再生は微々たるもので、大きな損傷を治す力はありません。とは言え、関節などでは荷重などのストレスにより日々すり減っているのですが、若い頃はすり減る程度に見合った再生が行われて、そのバランスが崩れない限り、どんどん無くなることはありません。

 中高年になると、徐々にすり減るのですが、これは再生能力が損耗を下回ることによって起こります。

 同じ年齢でも、膝を例に取りますと、変形の度合いは随分と異なります。この差は、男女差、生活様式、筋力、運動、栄養などさまざまな要因が複雑に絡んでいると思われますが、なぜ大きな差が出るのかはっきりとは分かっていません。

10日

(金)  本日のコラム85 骨盤の歪みは痛みの原因となるのか?

 結論から言いますと、腰痛と骨盤の歪みはまったく関係ありません。これは30年以上前から世界中で研究論文が多数あり、いずれも否定しています。特に、腰痛とは無関係です。

 未だに、「骨盤が歪んでいるから」と施術するところもありますが、よく勉強した施設では、行っていません。骨盤の歪みによる施術は、単なる人集めと判断してよいでしょう。

 人の身体は左右差があります。顔が左右でまったく同じ人はいないでしょう。心臓はやや左にありますし、肝臓は右の横隔膜下にあります。脾臓は左ですね。肺も左右で異なっています。右葉は3つ、左葉は2つに分かれています。もし、これをひずみと言うならば、生まれたときからあちこち痛いはずです。

 もし、「この痛みは骨盤の歪みから」と説明を受けたら、別のところで診てもらう方がよいと思います。もちろん、整形外科もお忘れ無く。

11日

(土)

12日

(日)

13日

(月) 本日のコラム86 変形性関節症

 関節の軟骨がすり減って、関節の変形が起こった状態を変形性関節症といいます。関節の変形は、関節リウマチなどの疾患により起こる場合と年齢を経て徐々に変形が進むものがあります。通常、関節の変形をきたす疾患がないのに変形をした場合に、変形性関節症と呼んでいます。

 関節の関節があれば、年月とともに変形性関節症が起こります。この変形は徐々に進行します。膝の変形は中高年以降、目立って多くなります。膝は体重が掛かるので痛みなどの症状が出やすいといえます。体重が掛からない指の第1関節の変形も度々起こります。

 第1関節の変形性関節症のことをヘバーデン結節と呼びます。第1関節だけで無く第2関節に起こるのものをブシャール病と言います。いすれも変形性関節症なのですが、変形の初期は痛みが強く、変形が進むと痛みが減弱していきます。痛みがあるのは、そこに炎症が存在することなので、この時期は変形も進みやすいと考えられます。

 痛みと変形の進み具合は相関性があり、膝関節の研究では、痛みがあると変形が進みやすいとされています。従って、痛みがある状態を継続すると変形が進みますので、きちんと医療機関で治療を受ける方が良いでしょう。

 特に膝や股関節は、歩行障害の原因となり、高齢者では寝たきりの原因となります。これらの関節に痛みが出ると外に出る生活が困難となって来ます。そうなると体重を支える筋も萎縮し、筋力が落ちて、さらに動けなくなり、寝たきりにつながっていきます。

 当院では、痛みのコントロールに加えて、筋力強化、可動域の改善をはかるためのリハビリを行っています。これらを継続している方は、寝たきりになることはかなり少ないです。継続して通院されている方が寝たきりになることはほとんど無く、途中で治療から脱落するといつの間にか寝たきりになっているケースが多いです。

 痛みが良くなってきたから治ったと考えるのは無く、年齢とともに変形性関節症は少しずつ進行しますので、継続した治療、とりわけリハビリの継続が大切です。

14日

(火)
  本日のコラム87 慢性腰痛

 先週は、雪が多くてみなさん、大変でしたね。今週は少し暖かくなるらしいのでホッとしています。今日は腰痛の話です。

 慢性腰痛が最近話題になっています。慢性腰痛とは3ヶ月以上持続した痛みが腰にある場合をいいます。痛みのメカニズムは、未だに正確には分かっていません。痛みの起こり方には、2種類あって侵害受容性(疼)痛と神経障害性’(疼)痛があります。

 侵害受容性(疼)痛とは神経の末端にある痛みを感じる受容器が刺激されて起こる痛みであり、神経障害性(疼)痛は末梢神経が経路中で刺激されて起こる痛みです。腰痛はこれら受容器、神経自体が刺激されて起こります。

 侵害受容器が持続的にまたは強く刺激されると、痛みに対する反応が亢進するようになります。これを痛覚増強(hyperalgesia)と呼びます。これは感作(sensitization)として知られており、末梢性感作による1次性痛覚増強と中枢性感作の2次性痛覚増強があるとされています。この感作が生じると刺激が少なくても強い痛みとして感じるようになります。

 腰痛が慢性化するメカニズムとして、脳報酬系(腹側被蓋野、側坐核(NAc)、内側前頭前野(mPFC))との関連が注目されています。慢性腰痛ではこれら報酬系の機能が低下しており、そのために無快楽症、うつ、意志決定の障害などの症状が出現することがあります。脳報酬系の過剰興奮が、下行性疼痛増強に関与するのではないかと考えられています。

15日

(水) 本日のコラム88 腰痛とレントゲン検査

 
一般に腰痛で整形外科を受診すれば、レントゲン検査はほぼ必須に行われています。一方、腰痛診療ガイドライン2012では、redflagではなく、かつ下肢の症状を認めない患者は、いったん「非特異性腰痛症」と判断して、必ずしもレントゲン撮影は必要では無いと記載されています。これに対し全国の医療機関から異論がでており、次回改訂時には見直される可能性が高いと思われます。

 というのは、redflagが認められない方でも転移性脊椎腫瘍のこともありますので、レントゲン撮影を行わない場合は見落としてしまう可能性があるからです。もちろん、レントゲンに写らない転移性脊椎腫瘍もありますので、症状の継続がみられる場合は、MRIによる精査を行う方が良いでしょう。転移性脊椎腫瘍は腰痛の1%程度と言われていますが、それを見逃す訳にはいきません。

*Red flag sign

 
20歳未満または55歳以上

 
外傷の既往が最近ある

 
癌の既往あり

 
薬物乱用、免疫抑制、HIV感染

 
全身状態が悪い

 
発熱

 
痛みが進展してて、寝ても取れない

 
広範囲な神経痛

 
背骨の変形

16日

(木)  本日のコラム89 神経障害性疼痛とは?

 神経障害性疼痛は一般の方にとっては聞き覚えの無い言葉です。国際疼痛学会の定義では「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」とされています。これでも分かりにくくて難しいです。日本ペインクリニック学会が作成した「神経障害性疼痛薬物療療法ガイドライン改訂第2版」によれば、神経障害性疼痛は「末梢神経から大脳に至るまでの侵害情報伝達経路のいずれかに病変や疾患が存在する際に生じる」とし、「体幹感覚神経系の過敏性と下行性疼痛修飾系における抑制系の機能減弱が発症機序となる。」としています。

 痛みには侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分けられます。(両者の混ざったものを混合性疼痛という。)

 侵害受容性疼痛とは「神経組織以外の生体組織に対する実質的ないし潜在的な傷害によって、侵害受容器が興奮して起こる疼痛」と定義されています。平たく言うと、痛みの受容器が障害されて起こる痛みを「侵害受容性疼痛」とし、神経の異常によって起こる痛みを「神経障害性疼痛」と言います。

17日

(金) 本日のコラム90 末梢神経の炎症による急性痛は神経障害性疼痛か?

 日本ペインクリニック学会が作成した「神経障害性疼痛薬物療療法ガイドライン改訂第2版」によれば、『賛否両論がある(両論併記)』としながらも、『本ガイドラインでは末梢神経の炎症による急性痛は神経障害性疼痛に含めない。』としています。

 末梢神経に炎症が生じて急性痛を起こす疾患の代表例として、急性期の帯状疱疹と同じく急性期の椎間板ヘルニアによる神経根症をあげています。(いずれも慢性期は神経障害性疼痛。)急性期の帯状疱疹は、脊髄後根神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルスが神経に炎症を起こし、急性期の椎間板ヘルニアでは、椎間板の髄核が脱出することで神経根や後根神経節に炎症が及んで痛みが生じるとしています。

 これも簡単に言うと、これら疾患の急性期には、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在しており、その割合も分かるすべも無いので、ひとまず神経障害性疼痛には含めないでおくとした。(異論もあるので、両論併記となっています。)

 神経障害性疼痛にはNSAIDsは選択薬に入っていないのは、こういった理由からんだと思います。

18日

(土) 本日のコラム91 神経障害性疼痛は痛み止めが効かない。

 痛みを感じる受容器(侵害受容器)の傷害で起こる痛みには、いわゆるアセトアミノフェンやNSAIDsといった消炎鎮痛薬が効果を示しますが、神経系の傷害による神経障害性疼痛では、効き目がありません。従って市販の痛み止めを服用したけれど、殆ど効かないと言って来られます。

 脳では、侵害受容器性疼痛と神経障害性疼痛をはっきりと区別する訳では無く、同じ疾患の経過中にその割合が変化しながら痛みを感じているのだと考えます。痛み止めを服用すれば、侵害受容器性疼痛は改善傾向を示しますが、神経障害性疼痛は残存したままとなります。

 神経障害性疼痛の特徴は、神経支配に一致する痛みを起こすことです。侵害受容器性疼痛は侵害受容器が傷害した部位に痛みが出ますので神経支配とは一致しません。ただし、神経周辺の侵害受容器が傷害されるとその神経自体に影響が及び神経支配に一致する痛みが起こります。

 例えば、椎間板ヘルニアの髄核が飛び出して神経根を圧迫すると侵害受容器の傷害も起こるために痛みが起こります。そして神経支配に一致した痛みも起こりえます。ただし、その割合を具体的に調べる方法は無く、どの段階でどの程度が侵害受容器性疼痛なのかは分かりません。急性期の痛みは侵害受容器のものが中心と考えられます。

 このことから痛みの性状をしっかりと診断し、侵害受容性なのか神経障害性なのかを見極める必要があります。

19日

(日)

20日

(月)   本日のコラム92 侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の治療薬

 侵害受容性疼痛:アセトアミノフェン、NSAIDs、オピオイド

 神経障害性疼痛:プレガバリン(リリカ)、ガバペンチン、三環系抗うつ剤、SNRI(サインバルタ)、ノイロトロピン、オピオイド

 ざっくりまとめるとこんな感じになります。

21日

(火)
本日のコラム93 痛みの処方は実際にはどうするのか?

 まず痛みの原因をしっかり診断をしないと単純に痛み止めを出せば良いというものではありません。整形外科的な痛みは、局所に炎症が起こっている場合(侵害受容性疼痛)と神経が過剰に反応している場合(神経障害性疼痛)があります。これらがどの程度、関与しているのか判断は難しいのですが、少なくとも急性期は、侵害受容性疼痛が中心と考えてよいでしょう。そして慢性期の痛みは神経障害性疼痛が主であるというのもコンセンサスが得られていると思います。

 では、急性期から慢性期までの間は、両方が併存する訳で、割合もさまざまでしょうし、治療もそれを考慮する必要があります。また慢性期がいつからなのかも問題になります。慢性腰痛の場合、発症して3ヶ月以降と定義されていますが、そうでないものや、定義されていないものもあります。急性の外傷の場合、急性期は24時間~72時間となっています。それ以降は徐々に慢性期になるのですが、いつが慢性期なのかはっきりとした定義はありません。

 このような経緯から、急性期、すなわち侵害受容性疼痛が中心な時期は、アセトアミノフェン、NSAIDs、オピオイドを程度に応じて使い分け分けることになりますし、慢性期に移行してくれば、神経障害性疼痛となってきて、これらの薬のレスポンスは落ちてくるので

神経障害性疼痛に使う薬(プレガバリン、SNRI,、ノイロトロピン、オピオイド等)に切り替えていく必要があります。

 ノイロトロピンは、効果判定に1ヶ月ほどかかります。プレガバリン、SNRIは1~2週間程度みておく必要があります。

 これら以外に、整形分野の神経障害による痛みに対し、ビタミンB12や牛車腎気丸が使われます。ビタミンB12は神経賦活作用がありますので、神経が元気になる薬としてお出ししてます。牛車腎気丸もビタミンB12と似た作用を有しています。漢方薬は効果判定に1ヶ月ほどかかりますので途中で諦めないようにしてください。

22日

(水) 本日のコラム94 変形性関節症の痛みは侵害受容性疼痛なのか?

 変形性関節症はあらゆる関節で起こります。加齢による変化であることが多いのでが、外傷後に関節軟骨の損傷、骨折後の変形などでも発症します。これらの痛みは、当初は、痛みのセンサーである侵害受容器の反応によって神経を経て痛みを感じます。したがって、受傷直後や発症直後は、侵害受容性疼痛であると考えて良いでしょう。

 ところが、このような神経を刺激する状態が続くと、末梢神経や中枢神経が感作されて、信号が無いもしくは少ない状況でも強く反応してしまい痛みを感じるようになります。この痛みは、侵害受容性疼痛に加えて神経障害性疼痛が中心となってきます。

 こうなると消炎鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)が効きにくくなり、神経障害性疼痛に使う薬(プレガバリン、SNRI,、ノイロトロピン、オピオイド等)を使用することになります。

 これの治療に加えて膝の可動域改善のためにストレッチを、安定のために筋力強化を並行して行います。

23日

(木)
 
本日のコラム95 ヒアルロン酸はどういった効果があるのか?

 ヒアルロン酸の適応は、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛*1

*1関節リウマチにおける膝関節痛の適応は以下の基準をすべて満たす場合に限る

a)抗リウマチ薬等による治療で全身の病勢がコントロールできていても膝関節痛がある

b)全身の炎症症状がCRP値として10mg/dL以下

c)膝関節の症状が軽症から中等症

d)膝関節のLarsen X線分類がGradeⅠ~GradeⅢ

 よく使われるのは変形性膝関節症です。もともと二足歩行の人間にとって膝関節は体重を支える役目を果たしています。したがって関節荷重面が強く擦れます。ヒアルロン酸はこの滑りをよくする作用があります。また軟骨面を覆って保護する作用があります。ただしすり減った軟骨を修復する作用は弱く、変形性膝関節症が進行するまでに、軟骨保護を目的として使用するのがよいと考えます。

 

   米国のヒアルロン酸の適応は変形がかなり進んだケースが対象となっており、この場合、注射の効果はみられないしています。従って変形が進行する前の早期~中期の段階で早めの投与が進行を遅らせる意味で重要です。

24日

(金) 本日のコラム96 神経障害性疼痛とは?

 神経障害性疼痛の特徴

 1.持続性および発作性の自発痛(刺激が無くとも発作が起こる)

 2.アロディニア(非侵襲刺激で痛みが誘発される。痛覚過敏)

   *アロディニア(wikipedia):
アロディニア
(英: allodynia)とは、通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、すべて疼痛 としてとても痛く認識される感覚異常のこと。異痛症とも呼ばれる。

 3.痛覚過敏(侵害刺激に対する疼痛閾値の低下)

 4.しびれ(感覚低下を伴う)

 診断の要

 1.傷害神経の解剖学的神経支配に一致した領域に観察される感覚障害の他覚的所見

 2.神経障害性疼痛を説明する神経障害、あるいは神経弛緩を診断する検査所見

 痛みが解剖学的に妥当かつ体性感覚伝導系の損傷や疾患を示唆し、診断のための評価・検査を行う。

 確定:両項目とも当てはまる

 一部:1項目のみ

 ほとんどない:1項目も当てはまらない

 発症メカニズム

 末梢から中枢神経系に及ぶ痛覚伝導路の機能的・可塑的変化によって引き起こされる病的疼痛で、この変化は末梢神経、脊髄、脳の各レベルで起こります。

 変化として

 1.感覚系ニューロンの感作

 2.神経線維の発芽を含む神経再構築

 3.脱抑制や疼痛抑制系の変化

 4.情動的・精神的変調

 各部位で起こること

 1.末梢神経(損傷部位)

 一次ニューロンレベルでの神経損傷部位における脱髄や神経腫形成による異所性発火現象

 後根神経節ニューロン感作

 交感神経の感覚神経への発芽現象

 →マクロファージなどの免疫細胞が関与

 2.脊髄神経

 脊髄後角ニューロンの感作、神経再構築、下行性疼痛抑制系の減弱、下行性疼痛促進系の亢進、介在抑制ニューロンの脱抑制

 3.脳レベル

 痛みの認知は、ペインマトリックスのなかで行われます。

*ペインマトリックス:視床、1次性感覚野、2次性感覚野、島葉、前帯状回、前頭前野など 

 更に痛みの認知は、脳の神経再構築、意識のあり方(注意)、予期・期待、気分(不安、恐怖、うつなど)に大きく影響されます。

参考:神経障害性疼痛 真下 節 編集

25日

 

25日(土)  本日のコラム98 snake eye sign (蛇の目徴候)



 なんともおどろおどろしい名称ですが、頚椎症性脊髄症のMRIでみられる所見です。脊髄が圧迫されて腫れると蛇の目のように見えることをいいます。





白く光る目玉みたいです。

26日

(日)

27日

(月) 
 本日のコラム99 間違いシリーズ17 膝の水は抜くと癖になる?

 もはや都市伝説となってしまった感があります。巷では、「膝の水を抜いたら癖になるし、絶対抜かない方がいいよ。」と何ら根拠の無い話を耳打ちする人がいます。そう信じて言うだけにたちが悪く、拡散してしまってます。

 では、本当に膝の水は抜くと癖になるのでしょうか?

 まず答えを先にいうと、絶対に癖になることはありません。癖になるというのは迷信です。それは、水が溜まるメカニズムを理解すれば、一目瞭然です。水が溜まる原因は、関節内に何らかの炎症が生じて関節液が大量に作られるためです。水が溜まる疾患として変形性膝関節症が有名ですが、この場合、すり減った軟骨のかけらが遊離して関節液を産生する滑膜が炎症を起こし関節液を沢山分泌するようになります。この結果、生産と吸収のバランスが崩れて溜まるようになります。

 更に問題なのが、炎症性に溜まった関節液には炎症を引き起こす物質が多く含まれています。これらにより更に滑膜が刺激されて関節液が分泌されることになります。このような悪循環を繰り返すことによって関節液はたまり続けることになります。

 それでは、溜まった関節液が溜まらなくするには、どうすれば良いでしょう?まず炎症を抑える必要があります。これは消炎鎮痛剤が有効です。これだけですと、膝の軟骨がすり減る要因を改善できませんのであくまでも対症療法となります。膝の中に炎症物質を取り除くには穿刺して吸い出してやるのが効果的です。そのとき、同時に軟骨を覆って保護する作用のあるヒアルロン酸を注入します。加えて、膝が安定するように筋肉トレーニングや膝のストレッチを行うようにします。

 これらにより膝が安定して軟骨のすり減り抑えることにより、膝の炎症が引いてくれば水は自然と溜まらなくなります。ただ単純に水を抜くだけだとまた溜まって来る可能性がありますが、これらの治療を組み合わせることにより、膝を安定させて、水が溜まりにくい膝に改善させることが可能と言えます。

 逆に、水を抜くのを恐れて、溜まったままにすると炎症が継続して、変形が進行していくことになります。

 *炎症が軽度で水の溜まりもそれほどではない場合は、必ずしも抜く必要がある訳ではありません。ケースバイケースです。

 膝の水が溜まるのはある程度、変形性膝関節症が進行した中期以降に起こってくるとされています。このまま放置するのは、極めてよろしくないといえます。

28日

(火)  本日のコラム100   100本達成記念コラム

 良質の医学情報をあなたにお届けしたいと始めた本コラム、気がつけば、あっという間に100本を迎えることになりました。このコラムでは、最新医学情報を元に書くように心がけています。今の医学は超速で進歩し、変化し続けています。医学書も5年経つと役に立たない感があります。もちろん、いつまでも愛される名著というものもありますが、こと医学情報に関してはやはり最新のものをキャッチアップする必要があると感じています。

 あなただけでなく私自身にも役に立ちますし、医療関係者の方々にも役立ち、ひいては皆様のもとに良質の医療が提供されることを願っています。

 独りよがりな内容にならないように最新の医学論文、専門書、専門雑誌を熟読した上で書いています。多くの方のお役に立てる内容だと自負しております。