表紙に戻る
池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

過去ログ
2015.4
2015.5 2015.6 2015.7 2015.8 2015.9 2015.10 2015.11 2015.12
2016.1 2016.2 2016.3 2016.4 2016.5 2016.6 2016.7 2016.8 2016.9 2016.10 2016.11 2016.12
2017.1 2017.2 2017.3 2017.4 2017.5
2017年6月
 
1日(木) 本日のコラム174 運動器エコーのキーポイント2

・A1プーリーは屈筋腱の表面に薄い膜として描出される。(解像度の低いエコーだと見えにくい。)
・手の伸筋腱はMPまでは容易に描出されるが、それより遠位は薄いため困難とされる。(当院のエコーではDIPまで腱が見えます)
・手の腱鞘構造は掌側でも基節骨遠位は確認が難しい。
 
 
2日(金) 本日のコラム175 骨粗しょう症と予防1 修正版VER1.03

 現在、骨粗しょう症の冊子を作成するべく奮闘中です。以下は、初稿です。これに絵や図を入れて冊子化する予定です。

<骨粗しょう症と予防>

はじめに

 これまで数多くの患者さんを診て参りました。日々、様々な方が来院されます。頸部痛、肩こり、腰痛、膝痛、手足のしびれに加えて、家庭でのケガ、転倒による外傷、スポーツによる障害など多彩な症状を訴えて来られます。

 いずれも『痛み』や『しびれ』を訴えてられることが多いです。診療していて感じるのは、しなくてもよいケガや病気は無い方が良いということです。こうしたケガや病気が予防できれば、ベストだと考えます。

 最近のトピックスとして『予防』が、以前より重要とみなされるようになっています。。例えば、骨折してから治すのでは無く、出来るだけ骨折を防ぐことが大切という考え方です。

 今回、この冊子は『骨粗しょう症』という病気についてまとめてみました。知って貰いたい大切な部分を書いています。骨粗しょう症は、少しずつ骨がもろくなって、骨折をきたす病気です。これまで、骨粗しょう症から大腿骨や背骨を骨折した方を多くみてきました。

 特に骨粗しょう症の合併症の中でも、脊椎圧迫骨折と大腿骨頚部骨折は、日常生活動作が低下し寝たきりに繋がりやすい点で重要な疾患といえます。

 脊椎の圧迫骨折は年間およそ100万人、大腿骨の頚部骨折は年間およそ15万人と言われています。また後者の多くは手術になっているという現状があります。


 骨粗しょう症という病気を知っていただき、早期発見・治療に努めれば、このような骨折を大幅に減らすことが出来ます。いまや『予防』できる病気なのです。

 当院ではこういった『予防』のための医学にも力を注いでいます。それにより地域の健康に少しでも貢献していきたいと考えています。本冊子を手にとられた方々の1人でも多くが、健康に過ごせることを心から願っています。

院長

 
3日(土)本日のコラム176 骨粗しょう症と予防2


(骨粗しょう症とは)

 骨粗しょう症とは@骨密度とA骨質の低下により、骨が脆く弱くなる病気です。これにより骨折を来たしやすくなってしまいます。

(どの位の患者さんがいるの?)

 全国では約1280万人の患者さんがいると推計されています(骨粗しょう症予防と治療ガイドライン2015年より)。女性のほうが多く、年々患者数は増加しています。

(原因)

 骨粗しょう症の原因は様々です。加齢、ホルモンの減少、大量飲酒・喫煙やビタミン不足、お薬の内服(ステロイドなど)が挙げられますので、一概にはいえません。きっちりと診断して治療することが重要です。

(毎年、何人くらいが骨折している?)

 国内の骨粗しょう症で生じた大腿骨の骨折発生数(近位部)は年間148,100人(男31,300人,女116,800人)と推計されています。大腿骨骨折はこんなにも多く発生しています。

 一方、背骨の骨折(椎体骨折)は、発生率が60歳代男性で5.1%、女性で14%、70歳代男性で10.8%、女性で22.2%と報告されています。70代の女性なら、およそ5人に1人に骨折が生じているという事になります。骨粗しょう症による骨折は、身近に起こりうる事を示しています。また骨折患者の多くが、薬を投与されていないというデータもあります。

 4日(日)
 
5日(月) 本日のコラム177 骨粗しょう症と予防3


(骨粗しょう症と骨折によるリスク)

 骨粗しょう症が骨折の最大の危険因子であることは広く知られていますが、この病気は加齢により進行しますので、治療せずに治るということは少ないと考えます。骨粗しょう症によって引き起こされる骨折,なかでも大腿骨の骨折や背骨の骨折は、移動能力や生活機能を低下させるだけではなく,死亡率も上昇させます。それ故に、予防がとても重要だと考えます。

(診断方法)

 以下の手順で診断を進めていきます。@診察A画像診断B血液検査(骨代謝マーカーの測定など)C骨密度測定を行います。基本的には、骨折の有無と骨密度の検査が診断の中心になります。当院では、非常に正確な骨密度の測定装置を導入しております。1度の受診で検査を終えることが出来ます。

(骨密度検査はいつしたら良いですか?)

 骨密度測定を行った方が良い方は、65歳以上の女性、70歳以上の男性、既に骨折を有する方や大腿骨近位部骨折の家族歴のある方になります。またこれだけで検査の必要性は決定できませんので、総合的に判断を行います。希望の場合は、いつでもお声かけ下さい。

 
6日(火)
 本日のコラム178 骨粗しょう症と予防4

(骨粗しょう症の治療)

 骨粗しょう症の原因は、先ほど述べましたとおりに様々ですので、まずはその原因を探し、治療することが一番です。単純に骨量が減少してしまっている場合は、お薬の治療を開始することになります。お薬の目的は骨折を予防し,日常生活の維持向上を目指すことです。100%骨折を防げるわけではありませんが、骨折のリスクを3〜5割程度は低下させることが可能です。

(骨粗しょう症治療薬の種類)

 大きく分けて内服製剤と注射製剤があります。また作用の仕方も10種類以上の異なるお薬がありますので、当院では患者さま一人ひとりにあったものを提案しています。勿論、骨粗しょう症の重症度や骨折の有無でも使う薬は変わりますので、病気に応じて長続きの出来る治療を行っていきましょう。

(食生活は重要でしょうか?)

 食生活ももちろん大切です。カルシウムは骨のミネラル成分の重要な栄養素であり、骨粗鬆症の予防、治療に不可欠な栄養素です。小魚、牛乳、乳製品に多く含まれます。その他、ビタミンDおよびKも摂取が好ましいです。こちらはそれぞれ、魚・納豆・緑黄野菜に含まれます。ただし摂取しすぎても取りすぎになりますので、何事も適度が大事ですね。

(運動はしたほうがいい?)

 骨やバランスの維持には、運動や筋力訓練が大切です。適切な運動は、大腿骨および腰の骨の強化に有用であることが示されています。ウォーキングはもちろんスイミング、ストレッチなどが非常に良いと考えます。当院では筋力トレーニング、リハビリテーション内容も指導致しますので、いつでも御相談ください。

 
7日(水) 本日のコラム178 骨粗しょう症と予防5

(さいごに)

 少し駆け足でしたが、骨粗しょう症の勉強はいかがでしたでしょうか。ざっくりと要点をまとめていますので分からない部分や、もっと知りたい部分も有ったかも知れませんね。

 何かあればいつでも御質問ください。骨粗しょう症は非常に多く身近な病気ですが、治療が可能な病気です。しかしながら、それが余り知られておらず予防が浸透していないのが現状だと思っています。

 まずはしっかりと病気を理解していただき、早めに発見してもらう事が大切です。今後も当院からこういった情報を発信していきたいと考えております。

 
8日(木) 本日のコラム179 運動器エコーのキーポイント3


・中手基節関節(MP関節)、手指関節(DIP、PIP関節)の掌側には、過伸展を制限する掌側軟骨板が付着しています。突き指等で過伸展が生じると損傷したり、付着している遠位側の骨が裂離骨折することがあります。屈筋腱が良好な滑走を得ているか経過を診ることも重要です。

・掌側板が関節裂隙に嵌頓することがあります。(掌側板周囲に局所麻酔の上、軸圧方向に圧力をかけ屈曲すると整復される。解除後、エコーにて介在物が解除されたか再確認します。)ロッキングが解除されたら他の損傷に問題なければスポーツ復帰は可能です。
・手背部伸筋腱脱臼→手術でsaggital bandを修復し、3週間固定し、エコーで再脱臼が無いかを経過観察し、深屈曲→full gripへと活動性をあげていきます。
 
 
9日(金) 
本日のコラム180  運動器エコーのキーポイント4

・三角線維軟骨複合体(TFCC)はMRIでの診断が優れています。エコーでは外側から半月板状になったTFCCをみることができます。
血流の増加も参考になります。
・遠位橈尺関節を手背から観察することができます。
・ド・ケルバン腱鞘炎:伸筋腱の第1区画に短母指伸筋腱(EPB)と長母指外転筋(APB)が通過します。これらのオーバーユース。肥厚した腱鞘が見えます。

 
 
10日(土)
 本日のコラム181 運動器エコーのキーポイント5

・腱症(腱炎)の特徴として、厚みが健側より増して、fibrillar patternが不明瞭になります。
・関節液:無エコーはゼリー状もしくは水に近い成分、無エコーでない場合は感染、血液、痛風などを考慮。
・滑液包炎は、オーバーユース、感染、外傷、関節リウマチ、痛風、偽痛風で起こります。正常の滑液包は通常、液体の貯留は認めない。無エコーでない場合は、炎症性を考えます。
 
 11日(日)
 
12日(月) 本日のコラム182 石灰沈着性頚長筋腱炎

 頸部椎体C3-C4レベルにある頚長筋腱が石灰沈着性の炎症を起こして、咽頭痛、頸項部痛を訴えて受診することが多い。石灰はハイドロキシアパタイトが蓄積されています。この被膜が破れて周辺組織にハイドロアパタイトの粒子が広がると、炎症を起こし徐々に吸収されます。このとき、疼痛や腫脹をきたすとされています。
 
 通常1-2週間で自然寛解し、NSAIDsの内服や頸部の安静で症状は軽減されます。嚥下障害や呼吸困難を伴う場合はステロイドを短期投与します。
 
 
13日(火)本日のコラム183 ハムストリングス損傷

 ハムストリングスは、膝窩部に停止する5つの筋を意味します。

 内側ハムストリングス:薄筋、縫工筋、半腱様筋、半膜様筋
 外側ハムストリングス:大腿二頭筋

 大腿二頭筋:起始は長頭が坐骨結節、短頭は大腿骨粗線外側唇、停止は腓骨頭
 半腱様筋:起始は坐骨結節、停止は脛骨鵞足
 半膜様筋:起始は坐骨結節、停止は脛骨内側顆

 損傷には二種類。
  1.sprinting type:高速ランニング、過度の求心性収縮:大腿二頭筋損傷

  2.slow stretch type:キック、スライディング、ハードルなど 過度の遠心性収縮:半腱様筋の近位部損傷

 その他の要因:左右のアンバランス、大腿四頭筋とのバランスの崩れ(四頭筋6、ハムストリングス4が正常)

 重症度判定:streight leg raising test (SLT)で重症ほど、挙上角度が小さい。
  *スポーツ復帰に関して、急性損傷での初期の血腫の大きさ(MRI、エコ−)は関係が無いとされる。
  *血腫が坐骨結節に近いほどスポーツ復帰は遅らせるべき。
  
 スポーツ復帰の目安:SLTで左右差なし。エコーで血腫が十分吸収している。通常1-6ヶ月。
 
 
14日(水) 本日のコラム184 重心とバランス

 人もまた物理の法則から逃れることはできません。立位で背骨が前に曲がると重心が前方に移動します。すると前方向に倒れそうになるので防ぐには重心を体幹に戻す、すなわち背筋を伸ばすか、もしくは杖などで前方から支えるしかありません。

 手で10キロのものを持って胸元で持つのと手を伸ばして持つのとでは、力の要り具合がまったく異なります。前になるほど大きな力が必要で支えるために背中の筋肉も強く収縮する必要があります。また腰部の椎間板への負荷も「てこの原理」で前におもりを出すほどに強い力がかかります。

 従って腰の悪い人は、荷物を前に持つと痛みを誘発し易くなります。孫を抱っこして腰が痛くなるのはこういった理由からです。
 
 
15日(木) 本日のコラム185 修正版 医学も日進月歩です


 膝内側側副靭帯損傷、外側側副靱帯損傷 medial collateral ligament injury,latelal collateral ligament injury


 膝を捻ることで発症します。スポーツ、特にサッカー、柔道、アメフト、ラグビー等で膝を強制的に内反、外反すると起こりやすいです。

 外側側副靱帯は単独損傷は少なく複合靱帯損傷として起こります。内側側副靭帯は単独損傷も多く、激しく内反すると靱帯付着部での裂離骨折や前十字靭帯、半月板の損傷を伴うことがあります。

 内側側副靭帯は損傷程度によりグレードI,II、IIIに分かれています。 

 GradeI:靱帯が少し伸ばされただけで関節の安定性には問題ないもの。
 GradeII:伸展位では問題ないが関節を30度に屈曲して内反ストレスを与えると不安定なもの。
 GradeIII:伸展位でも30度屈曲位でも不安定なもの。

 このような用手的な検査に加えて超音波断層検査を行います。靭帯損傷の程度や靭帯周辺の腫れ、裂離骨折などが分かります。またストレスを加えて動的に見ることもできます。

 治療はグレードI,IIは保存的に行います。受傷当初はRICEを行い、外反しないように包帯やテープで固定します。靱帯の損傷は軽度でも顕微鏡レベルでは修復に4週間かかるとされています。

 受傷数日の急性期が過ぎれば、アイソメトリックな膝周辺の運動を行います。歩行時痛が無くなって圧痛もかなり改善して痛みが取れてきたら軽めのジョギング等を開始します。

 スポーツ復帰を急がれる場合は、内側側副靭帯損傷用の装具を作成します。

 グレードIIIの場合、切れた靱帯を縫う手術を選択することもあります。またシリンダーギブスで固定する方法もあります。

 スポーツ復帰は損傷部の疼痛消失、可動域の改善、外反不安定性の消失、ストレステストの陰性化を確認します。コンタクトスポーツは復帰初期は膝装具装着が推奨されています。

 注:Grade1 膝30度屈曲位で装具固定、Grade2 4-6週の外反制限装具固定もしくはギプス固定、Grade3は手術考慮。シリンダーギプス固定は廃れつつあります。

 注2:2017年6月現在、GradeIは関節固定や装具は必要ないとされています。GradeIIは外反制限する装具を装着。いずれも早期から加重を開始し、長期固定より早期運動療法を行う。上記、一部修正しました。
 
 
16日(金) 本日のコラム186 第29回日本整形外科超音波学会 1

 抄録集が送られてきたので、興味深いものを紹介します。

 「筋膜リリースを行わない超音波ガイド下トリガーポイント」 竹川克一 竹川整形外科クリニック

 局所麻酔薬で筋膜リリースした群と局所の周辺に打った群との比較では、注射5分後の痛みの改善度に差は無く、すべてのケースで著しく症状の改善もしくは消失した。

 →池田コメント 今はやりの筋膜リリースでもその周辺への注射でも効果に差が無いことを示唆しています。5分後のデータなのでその後どうなったかは分かりませんが、今後、そういったデータも出てくれば、面白いと思います。局所注射で麻酔薬w入れると浸潤麻酔といって、周辺に広がって効果が出ますので、筋膜をリリースしなくても少なくとも一時的に痛みが取れるのは当然です。これがどの程度、持続するのか、また生理食塩水単独でも同様の効果があるのか、今後に期待します。
 
 
17日(土)
 本日のコラム187 第29回日本整形外科超音波学会 2
 

  「超音波で診断し得た肋骨bowing fracture7例」 中村真二

 レントゲンでは明らかでは無く、エコーで骨皮質の連続性は保たれているが不整像または血腫を認めたものをbowing fractureと診断した。

 →池田コメント Bowing Fractureとは急性塑型性変形のことで、小児の尺骨でよく起こります。骨折の範疇に入るのですが、レントゲン上は、曲がって見えます。肋骨でも同様に外傷でエコー検査をすると連続性は保たれているが、表面が変形していることがあります。これも塑型性変形として骨折と診断します。
 
 18日(日)
 
19日(月) 本日のコラム188 第29回日本整形外科超音波学会 3

 「診療所で行える頸椎症性神経根症の超音波診断−MRIは不要の時− 竹内幹伸ら

 神経根症の存在する患側は健側と比べて浮腫で腫大している。およそ面積で1.8−2倍になっている。


 →池田コメント  今回の報告では患側と健側の比較だけで、根症を起こしている各レベルでの比較は抄録からは不明です。一般に神経根が圧迫されると浮腫が起こり、およそ2倍に腫脹することが知られています。このことは根部で圧迫されていることの傍証にはなりますが、何が圧迫しているかはエコーでは内部の状況が分かりませんのでMRIにて探る必要性があると考えます。
 
 
20日(火)本日のコラム189 足関節捻挫 現場での判断と治療

 足関節捻挫はスポーツ外傷としてよく起こります。現場での重症度判断の目安として、捻挫直後に加重して歩行できるのであれば、Grade1としてよい。不安定性のあるGrade2(靱帯部分断裂)、Grade3(靱帯完全断裂)は捻挫直後に加重できない程度の疼痛が起こります。

 Grade1の治療は、安静、アイシング、包帯固定(またはテーピング)、患肢挙上します。Grade2以上では、ギプスをせずに機能訓練をすべきとする報告とギブス固定の後に機能訓練を行うとする報告があり意見が分かれています。更には、10日間のギプス固定をした群が装具、サポーター、弾力包帯をした群より成績がよかったとする報告もあり、10日から2週間程度のギプス固定を行うのがよいとしています。手術適応もまた意見が分かれており、Grade3の重症例を対象としてメタ解析ではどちらも優位ではなかった。長期の成績は手術群が優るいう報告もあり、ハイアスリートは復帰を希望する場合は観血的手術の適応としているとあります。(橋本健史ら)

 当院では、Grade1に対してはテーピング固定、Grade2以上にはギプス固定で対応しています。固定期間は2週間を目安として症状を勘案しながら調整しています。

 *注 前脛腓靱帯損傷は荷重をかけると離開するのでギプス固定中は免荷するようにします。
 
 
21日(水) 本日のコラム190 足関節捻挫 陳旧性足関節外側靱帯損傷

 急性足関節捻挫Grade2,3のうち、約20−40%が慢性化して陳旧性足関節外側靱帯損傷となるとされています。この理由はさまざまな意見がありますが、橋本健史によると発症した群はギプス固定期間が短かかった(平均2.6日)。一方、発症しなかった群は平均8.5日と優位に差があったとし、慢性化を防ぐためには10日−2週間のギプス固定を行った後に機能訓練を行うことが重要としています。
 
 
22日(木)本日のコラム191 肩腱板断裂

 手術を行っても、特にプロスポーツ選手の場合は競技復帰が困難であると言われており、どのような症例が手術適応となるのか、意見が分かれています。

 いずれにせよ、断裂の微細な所見はエコーにより明らかになります。また経時的に腱板の厚さや繊維状構造を健側と比較しながら復帰の時期を探るのがこれから主流になっていくものと思われます。
 
 
23日(金) 本日のコラム192 足底腱膜炎

 足底腱膜は足の裏全体を覆っている腱膜です。経年変化や足をよく使ったり、靴が合ってないと腱膜炎を起こします。実際には炎症では無く、腱の変性により痛みが生じているとされています。

 これまで、局所安静、ストレッチ、消炎鎮痛剤、理学療法などを組み合わせて治療してきました。慢性化するとなかなか痛みが改善せずに辛い思いをされている方も多いと思います。

 慢性の痛みが強い例に、エコーガイド下に生理食塩水と局所麻酔薬を使ったfascia releaseを行うとかなり症状が改善します。先日も10年来、痛みが続いている方に行いましたところ,痛みスコアが10/10から1-2/10まで改善し、随分と喜んでもらえました。
 
 
24日(土) 本日のコラム193 FAI (大腿骨寛骨臼インピンジメント)もまた知らないと診断できません

 医師であっても知らない病気は診断できません。目の前を通り過ぎていくだけです。FAIという新しい概念がこの10年来普及してきました。新しい病気は、知らないと診断することは困難です。

 FAIには二種類あって、臼蓋の縁がとんがっているPincer typeは比較的診断が容易です。一方、cam typeは大腿骨も骨頭から頸部にかけてのなだらかな骨性隆起ですので、なかなか分かりづらく慣れが必要です。
 
 25日(日)
 
26日(月) 本日のコラム194 石灰沈着性頸長筋腱炎 acute calcific retropharyngeal tendonitis



 頚椎C2,C3レベルの前方にハイドロアパタイトが集積して炎症を起こします。レントゲンやCT、MRIで石灰像を認めます。今回、MIRにて診断し得た症例を提示します。


C,2、3,4椎体前方にT2強調像で高信号域を認めます。
 
 
27日(火) 本日のコラム195  石灰性腱炎(石灰沈着性腱板炎)

 腱板に石灰(リン酸カルシウム)が沈着することにより急性の炎症を起こす病気です。腱板の変性や線維軟骨化生が生じて石灰が沈着すると炎症を起こします。レントゲンやエコーで石灰化像を認めます。

 発症は突然で、激痛で肩関節を動かせないことが多く、痛みで寝られないと訴えます。

 治療はNSAIDsや局所安静を行います。希望によりコーガイド下に石灰化の吸引、肩峰下滑液包内へ局所麻酔薬やステロイドを注入します。石灰が液状の時は吸引のよい適応となります。

 
 
28日(水) 本日のコラム196 頚が悪くて腰の症状が出ることがあります

 頚椎の変形や椎間板ヘルニアで脊髄を圧迫すると手や足に症状が出ることがあります。度々問題となるのは、頚椎が悪いのに腰や足の症状が出る場合です。こういった場合、腰部に狭窄などの病変が無いか調べることが多いのですが、腰にはあまり大した所見が無いのに、頚椎で著しい狭窄を起こしている場合があります。

 このような場合、頚椎から手術を行って経過をみて、腰部の症状である間欠性跛行が強く出るときは、腰の手術を追加します。

 頚髄症で起こる腰部以下の症状としては、S1領域の坐骨神経痛を起こすケースが多いようです。また歩行障害は痙性麻痺によるもので、これに腰部から来る間欠性跛行が混ざるようにして症状を発しますので、臨床所見をしっかりと把握することが大切です。

 脊椎は頚椎、胸椎、腰椎からなり、1箇所の病変だけではなく数カ所の障害により症状を起こすこともよくありますので,注意が必要です。
 
 
29日(木)   本日のコラム197 腰椎の仙骨化(腰仙部移行椎)

 腰痛でレントゲン撮影を行うと、一番下の腰椎が仙骨と融合していることがよくあります。ただこれだけで症状を呈することはまれです。逆に第1仙椎が腰椎化していることもあります。腰仙部移行椎で文献報告されているケースとして、巨大横突起が腸骨に接触して腰痛を起こしていたもの、また椎間孔外で神経根を圧迫して根症状を引き起こしていたものがあります。

 治療は巨大横突起の(部分)切除術を行います。
 
 
30日(金)  本日のコラム198 ホワイトボード導入

 マジックで書き込めるホワイトボードを購入しました。患者さんへの説明に使う目的です。今日使ってみたら、思いの外、好評でした。大きな絵と文字で書き込めますから、見やすく分かりやすいです。説明に対する質問もよく出ますので、コミュニケ-ションツールとしてもってこいです。

 デジタル機器がどんどん導入されて,無機質な診療になりがちですが、暖かい医療、心が通う医療でありたいものです。