(金) 本日のコラム450 整形外科分野の漢方治療2
*神経障害性疼痛:附子
附子はグリア細胞のアストロサイト活性化を抑制して鎮痛効果を表すことがが分かってきました。慢性期の疼痛に効果的。
*五苓散
アポクリン阻害効果で浮腫を抑制する
*足腰の衰えによるふらつき 7:八味地黄丸7.5g 合わない人 87:六味丸7.5g
*急性の筋肉痛(急性期のみ効果、寒冷により痛みがひどくなる症例に良い適応) 78:麻杏ヨク甘湯
*肩こり 1:葛根湯(含エフェドリン)もしくは桂枝加葛根湯(エフェドリンなし、東洋薬行)
頑固な肩こり:桂枝加葛根湯(東洋)+78:麻杏ヨク甘湯 併用
高血圧による肩こり:47:釣藤散7.5g
*医療機関でよく分からないめまい:17:五苓散
*飛行機が降下するときの耳の痛み:17:五苓散 着陸の30分前に2包服用
*高血圧
高齢・軽度の高血圧:7:八味地黄丸
筋肉質でストレス大、便秘、肩こり:8:大柴胡湯
動悸、イライラ、悶々:12:柴胡加竜骨牡蛎湯
*体調不調 どことなくしんどい
41:補中益気湯:仕事が忙しくバテ気味
32:人参湯:胃腸の調子が悪い
六君子湯:疲れやすく、胃腸の調子も悪い
加味帰脾湯:からだだけで無く、精神的にも参っている
*漢方の服用方法
理想的なのは8時間毎で空腹時がよい。→「起床直後、午後3時頃、就寝前」を推奨する先生もある。
食後は8割程度の効き目(飲み忘れて服用しないよりは食後でも服用した方が良い)
本日のコラム451 整形外科分野の漢方治療3 腰痛
慢性腰痛を3つに分ける
1.寒さ(防寒湿)と関連:38当帰四逆加呉茱萸生姜湯、118苓姜朮甘湯、63五積散、52ヨク苡仁湯
2.年配の腰痛:7八味地黄丸、107牛車腎気丸、87六味丸
3.血の異常:53疎経活血湯、25桂枝茯苓丸、61桃核承気湯
随伴症状として
不定愁訴の多いもの:24加味逍遥散、54抑肝散、12柴胡加竜骨牡蛎湯
筋痙攣を伴うもの:68芍薬甘草湯
1-2剤を2-4週間投与し憎悪することが無ければ、1-2ヶ月服用してみる。
本日のコラム452 非腰椎性腰殿部疾患 1
上殿皮神経痛、中殿皮神経痛、中殿筋障害、梨状筋症候群、仙腸関節障害:圧痛部位が異なる。
いずれも腰痛を伴ったり、坐骨神経痛と似た症状を起こすことがある。
殿皮神経障害:上殿皮神経痛と中殿皮神経痛の総称・・・間欠性跛行の原因となることあり
鑑別にはブロックを行うとよい。痛みが軽減する。
治療:内服、外用、理学療法
内服は消炎鎮痛剤、ノイロトロピン、リリカ、トラムセットなど
薬物療法で改善しない場合はブロックを試してみる→一時的な効果しか得られないときは手術を考慮。
これらの疾患は、単独または多数、重複する場合がある。
本日のコラム453 非腰椎性腰殿部疾患 2
各論
<梨状筋症候群>
梨状筋症候群は、殿部にある梨状筋によって坐骨神経が絞扼されて起こる坐骨神経痛のことです。坐骨神経痛の多くは腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど腰部の疾患で神経根を圧迫して起こります。腰から出た神経はやがて集まって殿部では坐骨神経を形成します。梨状筋症候群はこの部で筋による絞扼を起こして発症します。
原因としては、誘因不明なもの、軽微な外傷によるもの、スポーツによる酷使などがあります。梨状筋症候群はその定義から、腰部の疾患は無いはずですが、高齢化とともに腰椎の変形・変性が生じていることがあり、現状の症状が神経学的に誘因として一致するかが重要となります。
診断は、自覚症状、他覚所見、理学所見、画像検査により判断されます。梨状筋症候群の4割は腰痛があったという報告もあります。
誘発テストは、股関節後方のやや内側の圧痛(9割以上)、腹臥位で膝90度屈曲し股関節を内旋し痛みを誘発させるテスト(6-7割陽性)。その他、アキレス腱反射の低下もしくは消失が5割、SLR陽性率64%という報告があります。
他の坐骨神経痛を起こす疾患との鑑別は、かなり難しく、画像診断で梨状筋症候群の所見は何も無い訳で、腰部のMRI等で腰に画像所見が無いことがひとつの傍証になり得ます。
腰の画像所見に異常が無く、なおかつ坐骨神経痛を起こすケースは分かりやすいが、中高年になって腰の変形や椎間板の変性がある場合は、鑑別が困難となります。極論を言えば、腰に所見があって神経学的に一致しても必ずしも症状が出ているとは限らない。場合によっては両者の症状と言うこともあり得ます。
成書には、診断として坐骨神経ブロックを行って症状が改善するかどうかが重要とありますが、他の坐骨神経痛を起こす疾患でも痛みは止まる訳で、鑑別できるとは思えません。
したがって、腰部に画像上何も無い上で、坐骨神経痛がある場合のみ梨状筋症候群の可能性が高くなると言えます。
本日のコラム454 非腰椎性腰殿部疾患 3 各論
<仙腸関節障害>
仙腸関節疾患は1.関節腔内の病変:化膿性関節炎など、2.関節の機能障害:仙腸関節障害に分けられます。
頻度と年齢:9-90歳以上まで老若男女で発症。
画像診断:仙腸関節を含んだ関節の機能障害は画像に変化が現れません。
誘発テスト:SIJ shear test 腹臥位で直接仙腸関節に圧迫を加えるのが感度が高い。
疼痛:椅子に座ると痛く、正座は楽。仰向け、側臥位、寝返り、立ち上がり、朝方の動作開始時の痛み
One finger test:最も痛い部位を指一本で示させると上後腸骨棘付近を指す
疼痛部位:仙腸関節外縁部の殿部痛と鼡径部痛、デルマトームに一致しない下肢症状
治療:安静や消炎鎮痛剤、骨盤ゴムベルト、、AKA-博多法、ブロック治療(仙腸関節や後方の靱帯部へ局所ブロック注射)、仙腸関節固定術など。
*腰椎後方固定後の仙腸関節障害の合併が注目されている。難治例が少なくない。内固定器を抜去して始めて治療に反応する例も少なくないという報告があります。
本日のコラム545 非腰椎性殿部疾患4 各論
<上殿皮神経痛>
殿皮神経は、上殿皮神経、中殿皮神経、下殿皮神経から構成される。上殿皮神経と中殿皮神経は絞扼性神経障害を起こしやすい。下殿皮神経は繰り返す尻餅などの外傷で起こるがまれである。
上殿皮神経:正中より6-7cm外側で腸骨稜を下方に乗り越えるところで絞扼される。内側枝、中間枝、外側枝があるが、それぞれ分岐吻合するために、どの枝が内側枝であるかどうかは分かりにくいとしている。
臨床症状は、腰痛の部位が絞扼局所の腸骨稜上に一致すれば本症を疑う。腰部の筋膜を緊張させる動作姿勢で症状が増強する。上殿皮神経絞扼で起こる下肢の痛みは、偽坐骨神経痛と言われるもので、支配領域を超えて痛むため関連痛と考えられている。内側枝は、L3~5から発生するので、関連痛として下肢痛が出るのでは無いかとされる。重症化すると下肢の痛みやしびれが出てくる。つっぱり感やしびれ感はあっても、知覚低下は出現しない。支配領域の知覚低下明らかで無いことが多い。(複数の枝による重複支配)
治療:消炎鎮痛剤、神経ブロック、手術 (絞扼部の解放、除圧)
本日のコラム546 非腰椎性殿部疾患5 各論
<中殿皮神経障害>
中殿皮神経はS1-4の感覚枝の分枝で、上後腸骨棘と下腸骨棘との間で後仙腸靱帯を貫通し腰殿部後内側に走行する。仙腸関節中間あたりの外側に圧痛点がある。症状は、座位(長時間)、起立、歩行、前屈で悪化する。9割で腰殿部痛に加えて下肢症状を認める。発症のメカニズムは上殿皮神経痛同様に不明。単に絞扼では説明できないとし、運動や体位で症状が異なることから、神経が圧迫や牽引されて症状が出ている可能性もあるとしている。
診断は、局所麻酔薬で中殿皮神経ブロックをし、施行後2時間以内に症状が50%以上改善することで判定する。治療は消炎鎮痛剤や理学療法で改善しない場合に中殿皮神経ブロックを行う。短時間で再発する場合は、手術を考慮する。手術は局所麻酔下に大殿筋を分けて中殿皮神経に沿って後仙腸靱帯を切開し神経をリリースする。
本日のコラム547 非腰椎性殿部疾患6 各論
<中殿筋障害> gluteus medius pain
慢性腰痛に伴って起こる中殿筋障害は中殿筋力が弱い。一方、中殿筋のみの障害では筋力低下を伴わない。半数以上で下肢症状を伴い、胎動、長時間の座位、歩行などで痛みが増強する。間欠性跛行を呈することもある。下肢症状は大腿側面や後側面位に放散することが多く、L5神経根症状と似ている。大殿筋と中殿筋の境界部で強い圧痛がみられるのが特徴で、大腿後面に沿って痛みが放散する。腰痛を起こす他の疾患と鑑別、併発に注意する。
治療は、消炎鎮痛剤、ストレッチ、中殿筋ブロックなどの保存療法を行う。改善しない場合は、中殿筋膜切除による中殿筋除圧術を行う。
本日のコラム548 非腰椎性殿部疾患6 各論
<非特異性腰痛>
2001年にDeyoらの論文で、レントゲンに所見の無い腰痛を非特異性腰痛として約8割に及ぶと発表したのですが、この数字のみが一人歩きして、腰痛の85%は原因不明で非特異性腰痛であると十把一絡げのようにくくられしまいました。
この経緯に関しては当院HP
非特異的腰痛症 nonspecific low back pain
に詳しく解説しています。そもそのこの論文はMRIが普及する前のものであり、レントゲンのみを症状と比較しているのは現在の医学の進歩を鑑みると大いに問題があります。実際、腰痛があってもレントゲンに異常は無く、MRIで疾患が見つかることはよくあります。むしろそういったケースの方が多いかと思います。逆に経年変化による変形があっても痛みが無いことも普通にあります。
今回、山口県で実施された腰痛studyによれば、秘匿性腰痛は22%で原因が明らかになった特異性腰痛が78%であったと報告されています。この割合は、実際、臨床を行っていて許容できる数字だと考えます。当院での印象は、腰痛の原因を特定できることがほとんどで、全く原因が不明というケースはむしろまれです。複数の原因があって絞りきれないことはありますが。
印象としては当院での非特異性腰痛症はおよそ数%程度と思われます。いずれにせよ85%が原因の特定できない腰痛というのはあり得ない数字です。
本日のコラム549 丹毒、蜂巣炎(蜂窩織炎、Cellulitis)
いずれも皮膚軟部組織の細菌感染症で、病変が皮膚表層、特に真皮に限局されたものが丹毒(erysipelas)で、真皮から皮下組織に至るものを蜂巣炎(蜂窩織炎、cellulitis)と呼びます。
<丹毒>
ほとんどがA群レンサ球菌による。まれに他のレンサ球菌や黄色ブドウ球菌。
乳幼児、高齢者に多い。限局した発赤と腫脹で始まり、境界を保ちながら急速に拡大する。病変部は鮮紅色で、境界が鮮明なのが特徴。下肢に70-80%、顔面に5-20%発症する。悪寒、発熱、全身倦怠感が伴う。水疱や膿疱を伴うことあり。
原因菌を確定するために2セットの血液培養が重要。約5%の患者の血液培養でA群、C群、G群レンサ球菌が検出される。20%が咽頭からβ溶血性連鎖球菌が分離される。
入院加療が望ましいが、全身状態、炎症反応の程度をみて決める。習慣性丹毒は入院のうえ抗生剤の点滴静注。
溶連菌の場合は、腎炎、再発防止のために10-14日間の投与を行う。
治療法 ペニシリン薬を第一選択とする。
1.軽症例
処方例 下記のいずれかを用いる。
1)ユナシン ⇒ 錠(375mg) 3錠 分3
2)ビクシリン ⇒ カプセル(250mg) 4カプセル 分4
3)オーグメンチン ⇒ 配合錠250RS(250mg) 3錠 分3
4)セフゾン ⇒ カプセル(100mg) 3カプセル 分3
2.中等症・重症例
処方例 下記のいずれかを用いる。
1)ユナシンS ⇒ 注 1回1~2g 1日2回 点滴静注
2)ビクシリン ⇒ 注 1回1g 1日2回 点滴静注
3)セファメジンα ⇒ 注 1回1g 1日2回 点滴静注
4)メロペン ⇒ 注 1回0.5g 1日2回 点滴静注
投薬例は今日の診療プレミアム Vol.28より引用
<蜂巣炎(蜂窩織炎)>
A群レンサ球菌と黄色ブドウ球菌が主な原因菌。まれにC群、G群レンサ球菌。最近、高齢者でG群増加。咬傷では、Pasteurella multocida や
Capnocytophaga canimorsusを疑う。局所の圧痛、発赤、紅斑、腫脹。境界不鮮明。
治療法
1.軽症例
処方例 下記のいずれかを用いる。
1)セフゾン ⇒ カプセル(100mg) 3カプセル 分3
2)ファロム ⇒ 錠(200mg) 3錠 分3
3)フロモックス ⇒ 錠(100mg) 3錠 分3
2.中等症・重症例
処方例 下記のいずれかを用いる。
1)クラビット ⇒ 錠(500mg) 1錠 分1
2)スルペラゾン ⇒ 注 1回1g 1日2回 点滴静注
3)メロペン ⇒ 注 1回0.5g 1日2回 点滴静注
3.MRSAの場合
処方例 下記を併用する。
1)ホスミシンS ⇒ 注 1回2g 1日2回 点滴静注
2)セファメジンα ⇒ 注 1回2g 1日2回 点滴静注
投薬例は今日の診療プレミアム Vol.28より引用
筆者注:実際の治療はもっと複雑なプロセスが必要なので、必ず成書にて確認の上、行うこと
本日のコラム550 腰痛のエビデンス
「一問一答! 腰痛のエビデンス 菊池臣一」
尊敬する菊池先生の著書。腰痛にご興味がある先生ドクターはご一読をお勧めします。
腰痛治療にはエビデンスだけではなく、経験知(ART)を加えて治療するのが良いとしています。
腰痛のエビデンスとしては以下の通り
<腰痛のエビデンス>
腰痛の自然経過
・非特異性腰痛:大多数で1-2週間で改善。数ヶ月にわたることもある。ほとんどの症例で再発を認める。4人に1人は1年後も腰痛が腰痛が持続。
・椎間板ヘルニア:10年間の追跡調査で、手術拒否例や麻痺例でも予後は良好であった。
・脊柱管狭窄症:保存治療の馬尾型は生涯を終えるまで不変であった。神経根障害は自然寛解傾向がみられた。
・不安定性腰椎:10年以上の追跡調査。20%はX線学的不安定性は消失。後方開大のみの機能的予後は良好。前屈時に後方開大・前方辷りの場合は、X線的不安定性や症状が持続する傾向がある。機能的予後は不安定性より脊柱管の狭窄の存在が関与。
・変性すべり症:10年以上経過した時点での調査では、腰痛のみの場合は50%で消失。下肢症状を有するものは症状が持続する傾向あり。経過中の神経症状発現は脊柱管狭窄の存在が関与。
・分離辷症:分離のみで推移する場合は機能的予後は良好。分離辷症の機能的予後は必ずしも良くない。辷り増強例は50%で日常生活に支障。
腰痛と年齢の関係
20歳未満は分離症があってもすべり症の合併は低い。症状は腰痛が主体。20-40歳代加齢によるすべり症の頻度上昇。50-60歳代ですべり症の頻度とすべりが大きくなる。70歳代以降はすべりの進行は停止。腰痛は持続するが、開始症状の合併する頻度も下がる。
腰痛と肥満
太っているから腰痛が悪化する十分なエビデンスは無い
膝痛と腰由来
膝内側の痛みが膝OAからではなく、L4神経根症の部分症状のことがある。簡便な方法として腰を進展させてみて痛みが発現するかどうかをみる。
神経性間欠跛行
腰部脊柱管狭窄症でも神経性は稿を起こすものと起こさないものとがあるが、その理由は分かっていない。
腰痛の予防
硬いベッドと中程度の硬いベッドと比較した場合、硬いベッドは予防には逆効果。無理をして硬いベッドに寝る必要は無い。
運動は予防効果がある。運動療法単独では予防効果は大きくない。
肥満、喫煙、持ち上げ動作、姿勢、心理的要素などの因子の改善が腰痛の予防となる証拠は無い。
腰痛の治療
アイシングと温熱治療:外傷の急性期を除いてアイシングの効果ははっきりした利点はない。温熱治療は中程度のエビデンスあり。
如何でしょう、菊池先生の御書、これ以外にも大変役立つことがいっぱい書いてありますよ。