池田医院
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして
整形外科 外科 リハビリテーション

診療日記 2026年10月神無月

1日(木)肥満と整形外科|第1回/全4回

体重が関節にかける負担

食欲の秋、味覚の秋という言葉のとおり、これからの季節はどうしても食が進みます。今回は、体重と整形外科の関係を少し掘り下げてみます。

歩行時には体重のおよそ2〜3倍、階段の昇り降りでは3〜4倍程度の負荷が膝にかかるとされています。体重が1〜2kg増えるだけでも、膝にとっての負担はその何倍にもなって返ってくる計算になります。

体重の増減は、ご本人が思っている以上に膝への影響が大きいものです。急激な変化でなくても、日々の積み重ねとして意識しておいていただければと思います。

2日(金)肥満と整形外科|第2回/全4回

減量のための運動が招く、新たな痛み

食欲の秋を意識して、急に運動量を増やされる方も多い時期です。ダイエット目的でウォーキングやジョギングを始めた方が、逆に膝や足首を痛めて来院されることがあります。

体重が重いほど、着地の衝撃も大きくなります。準備不足のまま長い距離を歩いたり走ったりすると、膝のお皿の周りや、足の裏、アキレス腱まわりに炎症が起こりやすくなります。それでも「早く結果を出したい」という気持ちが先に立つと、多少の痛みは我慢してそのまま続けてしまいがちです。

まずは平地での短いウォーキングから始め、痛みが出れば無理をしないことが、結局は近道になります。

体重を落とすための運動でかえって膝を痛めてしまっては本末転倒です。水中歩行や自転車など、膝への負担が少ない運動から始めるのも一つの方法です。

3日(土)
4日(日)
5日(月)肥満と整形外科|第3回/全4回

「痩せすぎ」も禁物 適正体重というバランス

ここまで体重が重いことによる負担についてお話ししてきましたが、逆に痩せすぎることにも注意が必要です。

低栄養や低体重は、骨がもろくなる骨粗しょう症のリスクを高めることが知られています。骨だけでなく筋肉量が落ちることで転倒しやすくなり、それがさらに骨折のリスクにつながるという悪循環もあります。

大切なのは、極端に太る、あるいは痩せるということではなく、年齢や体格に見合った体重を保つことです。食欲の秋だからといって食べすぎるのも、逆に無理な減量をするのも、どちらも体には負担になります。

6日(火)肥満と整形外科|第4回/全4回

体重があるから骨は大丈夫、とは限らない

「体重があるから骨は丈夫なはず」というイメージをお持ちの方は少なくありません。

確かに、体重による負荷は骨に一定の刺激を与え、骨密度を保つ方向に働きます。しかし、それだけで骨折を防げるわけではありません。脂肪組織は単なるエネルギーの蓄えではなく、様々な物質を分泌する臓器としての一面を持っており、その分泌物質は骨の代謝にも関わっているとされています。体重があっても、骨が十分に丈夫とは限らないのです。

つまり、体重の重さと骨の丈夫さは、必ずしも比例しないということです。第1回でお話しした関節への負担とあわせて考えると、体重は多くても少なくても、それぞれ違った形で整形外科的なリスクにつながることがおわかりいただけると思います。

全4回にわたりお付き合いいただき、ありがとうございました。食欲の秋、旬のものを楽しみながらも、体重と上手につきあっていただければと思います。

7日(水)巻き肩・そり腰・ストレートネック|第1回/全4回

巻き肩・そり腰・ストレートネックの正体

「巻き肩」「そり腰」「ストレートネック」という言葉を、鏡に映った自分の姿を見て、あるいは誰かに指摘されて意識したことがある方は少なくないと思います。

巻き肩は肩が体の前方に入り込むように丸まった状態、そり腰は骨盤が前に傾き腰の反りが強くなった状態、ストレートネックは本来ゆるやかに前方へ弯曲している首の骨のカーブが失われた状態を指します。いずれも痛みそのものではなく、姿勢の特徴を表す言葉です。

共通しているのは、一部の筋肉が硬く縮み、反対側の筋肉が弱くなるという、筋肉のバランスの崩れが背景にあることです。長年の姿勢の癖の積み重ねで、少しずつこの崩れが進んでいきます。

では何が効くのか。次回以降、研究で効果が確認されている運動を具体的にご紹介します。

8日(木)巻き肩・そり腰・ストレートネック|第2回/全4回

巻き肩に効く運動

巻き肩は、胸の筋肉(大胸筋)が硬く縮み、肩甲骨まわりの筋肉が弱くなることで、肩が前方に引っ張られた状態です。

有効とされているのは、胸を開くストレッチと、肩甲骨を寄せる運動を組み合わせることです。胸のストレッチは、壁に手をついて体をゆっくりひねり、胸の筋肉を伸ばします。肩甲骨を寄せる運動は、椅子に座ったまま両肘を軽く曲げ、左右の肩甲骨を背骨に近づけるように肩を後ろに引き、5秒ほど保ってから力を抜く、というものです。これを10回程度、1日数セット行います。数週間続けることで、肩の位置を示す角度に統計的に有意な改善が見られたとする研究があります。一回で終わらせず、毎日少しずつ続けることが大切です。

9日(金)巻き肩・そり腰・ストレートネック|第3回/全4回

そり腰に効く運動

そり腰は、骨盤が前に傾き、腰の反りが強くなった状態です。お腹の筋肉(腹筋群)が弱く、股関節の前面や腰の筋肉が硬くなっていることが背景にあります。

有効とされているのは、体幹を安定させる運動(コアスタビリティエクササイズ)です。仰向けでお腹をへこませながら骨盤を後ろに傾ける運動や、股関節前面のストレッチが代表的です。これも数週間の継続によって腰の反り具合が改善したとする研究がありますが、即効性のあるものではありません。

巻き肩もそり腰も、日々の積み重ねとして少しずつ取り組んでいただくのがよいと思います。次回は、ストレートネックに効く運動をご紹介します。

10日(土)巻き肩・そり腰・ストレートネック|第4回/全4回

ストレートネックに効く運動

ストレートネックは、うつむき姿勢が長時間続くことで、首の骨のカーブが失われていくものです。首の後ろの筋肉が伸ばされたまま弱くなり、逆に胸の筋肉や首の前の筋肉が縮こまっていきます。

有効とされているのは、あごを引いて頭の位置を後ろに戻す運動です。椅子に座り、目線はまっすぐ前に向けたまま、あごを軽く引いて頭全体を後ろにスライドさせるように動かします。二重あごを作るような感覚に近く、首を曲げる動きではありません。この状態で5秒ほど保ち、力を抜く、というのを10回程度繰り返します。8日にご紹介した肩甲骨を寄せる運動とあわせて行うと、首から肩にかけての筋肉バランスが整いやすくなります。

まず見直していただきたいのは、そもそもうつむく姿勢を減らす工夫です。モニターの位置が低いと、画面を見るたびに自然と首が前に倒れます。目線がやや下向きになる程度まで、モニターの高さを上げるだけでも、うつむき姿勢そのものを減らすことができます。スマートフォンも同様で、手元まで下げて見るほど首の角度は深くなります。画面を目の高さに近づけて持つよう意識するだけでも、負担は変わってきます。

そのうえで、作業の合間に立ち上がって体を動かすことも大切です。座ったまま一息つくのではなく、定期的に立ち上がって歩いたり伸びをしたりした人は、6か月間で新たに首の痛みが出た割合が17%だったのに対し、特に対策をしなかった人は44%だったとする研究があります。数週間の継続で、頭の位置を示す角度に改善が見られたという報告も複数あります。

全4回にわたりお付き合いいただき、ありがとうございました。巻き肩・そり腰・ストレートネックのいずれも、焦らず日々続けていただければと思います。

11日(日)
12日(月)スポーツの日
13日(火)

ストレートネックと頸椎後弯、その関係

先日、ストレートネックについて取り上げました。ここで気になるのが、「首の骨が逆向きに反ってしまう頸椎後弯」との関係です。

一つの見方は、姿勢によるストレートネックが長期間続いた末に、骨や椎間板そのものに変化が及び、頸椎後弯というより進んだ状態に至る、というものです。筋肉の崩れから始まったものが、骨の変形にまで及ぶという考え方です。

一方で、別の見方もあります。近年の大規模な調査では、20代女性の約3割が、もともと頸椎が後弯していることが分かっています。これは背骨全体のバランス、特に腰椎の前弯とつり合いをとるための、生まれつきの体の特徴だとする説です。姿勢の悪さの結果というより、個人差として説明されるケースがあるということです。

つまり頸椎後弯には、「姿勢の悪化が進んだ結果」というケースと、「もともとの骨格の特徴」というケースが混在している可能性があります。レントゲンで頸椎の後弯を指摘されたからといって、それがすぐに「姿勢が悪いせい」とは限りません。

ご自身の頸椎のカーブがどちらのタイプに近いかは、実際の画像を拝見しないと判断できません。

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